春もゆううつ
「ごめんね、ちゃんとした尾値踏み師として産んであげられなくて」
まるで哀れむような、悲しそうな、そんな目で母は俺にそう告げた
「はあ〜・・・」
桜が路上で踊る4月。俺、小野 瞬は晴れて高校生となった。しかし今の気持ちは晴れというより曇りだ。今までとは違う通学路を歩きながら俺は不安事項に頭を悩ませていた。
「仕事なんて気にしなくていいのよ!二年生に凛だっているんだから、普通に青春エンジョイしちゃいなさいな!」
高校に合格したその日、幸子おばさんにそう言われた。俺の家系は代々尾値踏み師という役職を担っている。尾値踏み師とは人間に生えている尾を管理、売買する役職だ。尾は丁度尾てい骨のあたりに様々な形のものが生えており、尾値踏み師以外は見えない。きちんと成人し仕事をするまでの間、尾値踏み師の子供は自分のいる学校や塾で違い尾と呼ばれる周りに色々な意味で害を及ぼす尾を探したり管理したりするのだ。
しかし、俺にはそれが出来ない。なぜなら尾無しといって半世紀に1人生まれる尾が見えない体質なのだ。当然、学校で仕事も出来ないし成人したって俺は普通の一般人みたいな訳で尾値踏み師には当然なれない。しかしそもそも見えないのが普通な為そんなに尾値踏み師も気にしないのだ。
でも・・・それがなんだか喉になにか苦いものが詰まったように居心地が悪いんだ。自分だけ、代々の使命を果たせないことに。
「少年!そんなにとろとろ歩くとは何事か!猫背になるでない、しゃんとせよ!」
中途半端な江戸口調で女の人の声が聞こえる。それは、幸子おばさんの娘、高校二年生の青葉 凛さんだ。
「凛さん、なんでそんな変な口調で喋ってるんですか。」
「なんとなくだよ~。ところでどうしてそんな浮かない顔をしてるの?今日はこんなに晴れて気分は上がるはずなのに」
ぽわっと空気が晴れるような笑顔でそう微笑む凛さん。そんな凛さんとは対象に俺は恐らく半死している表情でこう返す。
「値踏み師の仕事が出来ないことが引っかかってるんです・・・。まあ、小さい頃から分かってましたけどいざきちんと言われるとどうも・・・」
ああ・・・こうして喋ってる間も実感が湧いてより落ち込む。
「ああ、その事ね。まあお母さんも言ってたじゃん。私に任せなさいって。でもそんなにやっぱり気がかり?」
「ええ・・・」
「そうだなあ・・・」
こめかみに人差し指をとんとんとし始める凛さん。凛さんはこうして考えるのが癖だ。この癖、漫画とかアニメに出てきそうで以外と俺は好きなんだ。
唐突に顔をあげ凛さんは言った。
「尾有りの子、探すか」
初投稿です
至らないところもあるかも知れませんがよろしくお願いします