この世は天国、あの世は地獄
気が付いたら幽体離脱してた
どこかの病院に一つのベットしかない部屋で点滴と心電図に繋がれてる女性
肩にかかるぐらいの黒髪が枕に広がっている どうして病院にいるのかと思うぐらいに健康そうな肌でただ眠ってるように見える
それが私だった
眠ってる私を横に立つように眺めてるのがここに来て最初の記憶だった
どうしてここにいるのか記憶になく 思い出せそうで思い出せないモヤモヤとスッキリしないまま ぼーと眺める日々は飽き飽きして部屋を出る事にした
体から薄い青色の紐が魂と繋がっていた
幽霊を書く時足を書かず犬の尻尾のようにくるんと丸く曲がり先を尖って書くがまさに今がその状態だった
尖った先から心臓に繋がってるようにみえる
どれぐらい離れる事が出来るかなーと試したら五十メートルぐらいだった…短い
病院内をブラブラするぐらいしか距離がなかった為に最近のブームは屋上からの人間観察
「今日も一日が始まるなー…」
病院前を忙しなく歩く人や学生が友達と話しながらと様ざな人が通り過ぎて行く
「ん?あれは…」
長身の黒髮男性だった
ピッタリと体のラインがわかる黒のテイシャツで細身だがシャツを押し上げる筋肉があり細マッチョな感じだ
目に止めた違和感は男の肩だ
白いモヤが左に黒いモヤが右肩にあって今まで見た事がない事だった
よく見ようと前屈みになった時突然声をかけられる
「あっやっぱりー僕達の事見えてるよねー?」
「きゃっ!」
「あははっ驚いたー?」
瞬きの瞬間にきたみたいだ
笑って私の前に浮いてるのが全てが白い装いの青年だった
同じく幽霊かと思ったら背中に白い大きなコウモリの羽みたいなのがあった
「いいでしょー僕は人間で言うと天使だよー」
「てんし…」
「おい!お前何してやがる!」
「ひっ⁈」
次に現れたのが全てが黒い男性だった
短髪の自称天使と比べ腰まである長髪で鳥のような翼があった
「はっ?見えてるのか俺たちの事?」
男性が確認しようと近づく所に待ったと天使が言う
「大吾が呼んでるークロ行くよー」
「てめぇが離れたからだろうが!」
一瞬できた二人はまた一瞬で消えた
急いでモヤが肩にあった男を捜すが見当たらなかった
「インパクト凄かったな心臓がバクバクしてる…また会えるといいな」
それから毎日捜すが見当たらない日々に勝手に文句言いながら今日も特等席で人間観察する
天使君に会ってから変わった事があった
幽霊になっても見えなかったのが見えるようになり
今まで道路に花束があって人身事故あったんだと思ってた所に女性が立っていた
ずっとそこに立っていて何するわけでも道路を眺めている女性に もしそこに行けたら飛んで行って話し相手になって欲しいともどかしい気持ちになる
「んっ?引っ張られてる?わわっこわ!」
ぐんぐんと体と繋がってる紐が引っ張られていて戻って行く
「やっと戻ってきたか…」
ジェットコースターが苦手な私は目を瞑ってやり過ごしていたので声をかけられて目を開く
「久しぶりー元気ー?」
自称天使と全身黒い男性に細マッチョな男性が立っていた
目が合うと眉間に皺を寄せて睨まれた
顔も赤くなってるような?
にしてもキリッとした眉に切れ長の目 スッと真っ直ぐな鼻 薄い唇で野性味あるワイルドなとても格好良い男性だ
「あの?どうしてここに?」
「……」
「あれー?大吾まさかーほっ」
何か天使君が言う前に全身黒い男性に叩かれていた
「痛いなーもう」
「あー俺はクロと呼ばれてる貴様は?」
「僕はシロね!」
「私はえーと 風間 彩音です」
チラリとベットにかかってた名札を見た
「ほら大吾!」
「あー黒乃間 大吾」
「はぁよろしくです?」
来た目的が分からないため首を傾げながら言うと黒乃間さんは片手で口を覆うと明後日の方を向いた
「大吾褒めてよねー僕が見つけたからね」
「あぁ…よくやった」
「えへへー」
笑うシロ君に真顔で頷く黒乃間さんを見て溜息するクロさん
「あー俺らの事を見えるのが珍しいからな確認しに来たんだ」
「私は驚きました だって幽霊見れたの初めてだったので」
「はっ幽霊だって⁈俺様が!」
心外だとばかりにクロさんが言った
「死神だ俺とシロは」
「えっ?天使だってシロ君が」
ジロリと睨むクロさんにシロ君はテヘペロと言ってめんごと言った
「てめぇ…」
「しっ死神も驚きました!それに違わないんです幽霊さん見れるようになりましたし」
「見れるようになった?」
困惑顔で黒乃間さんが言うので頷く
「シロ君に会ってから見えるようになりました」
「えっまじでー」
シロ君がヤバーと言いながらフヨフヨと浮かぶのを他の二人は睨む
「風間答えろ 見えるのは俺みたいに肩に憑いてる幽霊か? それ以外か?」
「肩に憑いてるのを見えたのは黒乃間さんだけです」
「あちゃーじゃ見えた幽霊は地縛霊じゃん」
「肩に憑いてるのは守護霊だ普通はな」
「えっ地縛霊?守護霊?」
混乱する私に丁寧に黒乃間さんは例えも入れて教えてくれた
守護霊は憑かれてる人間を護る霊の事で大抵は先祖だそうだ
例えはあと少しで事故だったと話は守護霊のお陰で回避してるそうです
地縛霊は死んだ事に気付かずずっといて心残りがありそこから離れられない霊の事だそうです
供養などで気持ちを消化してくれたらいいが成仏しないと自由に動ける生きてる人間を羨み引きずり込む事があるそうです
「風間も生霊で生きてるからな もう見ないようにしろ」
「はい…気をつけます」
でも最近見るの日課になってるからなーと思う
「にしても彩音ちゃんいつから入院してるの?」
「それが何も覚えてなくて…」
「やっぱり?さっき名札見てたもんね?」
「何もねぇしなここ」
「うっはい…」
クロさんの一言が言葉に詰まる
他の病室ではお見舞い品や生活品で溢れているのに何もない部屋
違和感があってあまりいたくない部屋だから屋上に逃げてるのかもしれない
「クロって空気読めてそうで読めてないよねー」
「すまん…」
「風間 彩音…か 何処かで聞いたような?」
名札を見ながら思案する黒乃間さんに問いただそうと詰め寄ろうとしたら看護士さんが入って来た
「君!ここは面会拒否の部屋よ 早く立ち去りなさい!」
「また必ず来る」
そう言って黒乃間さんは立ち去っていった
久しぶりに会話して嬉しかったなーとフヨフヨと浮かぶ
その日から黒乃間さんが来ないかなぁと
屋上と病室を行き来するようになるが来ない
「忙しい人なのよきっと…」
寂しいなーと呟きながら見ないようにしてた女性の幽霊さんを見ると蹲ってた
「どうしたんだろー?体調不良なんて体ないからあり得ないし…」
黒乃間さんの注意など忘れ去って見続けるとだんだん女性の体が大きくなってるような?
「んー?」
前のめりで他に違いがないかキョロキョロしてるといつも横顔しか見えてなかった女性が振り向いた
「目が…合ってる?…まさかね…」
私と女性の距離はギリギリ顔が見えるぐらい離れてる
「私の周りに何かあるのかな?」
私も振り向いて変化がないか探すがいつもと変わらない屋上だったし病院周りも問題ないようだ
「ねぇ?あなただぁれ?」
「っ!」
「聞こえてるんでしょう?」
体がないのに金縛りにあったように動かない
バクバクと心臓が喉から飛び出そうな気分だ
「ねぇ?って言ってるでしょう⁈」
どんどん声が近づくとヒヤリと冷たい手が肩に触れた感じがした
幽霊同士なら触れるんだと場違いな事を考えて現実逃避するがどうしようとも考える
「あなたも無視するのね!ユルサナイ!ゆるさない!
」
触れた方から顔が覗き込んできたのは女性だと思ってた顔は違う顔だった
「ひぅ⁈」
「やっぱりぃいい見えてるのねぇえ!」
咄嗟に離れて距離を取ると全貌を見ようと振り向いた
「なにあれ…妖怪?」
半分は見慣れた女性でもう半分は人間の形をしていなかった
「どっどうする私 どうする」
笑いながらまた近付こうとするのでそのぶん退がる
「ねぇ?仲良くしましょう?ふふふっ」
「ぅうー無理ですー!」
「ふふふっ」
「風間!」
屋上に続くドアが開く音とともに黒乃間さんが入ってきた
「黒乃間さん!たっ助けて!」
「まかせろ!行けシロ!」
「犬みたいに言わないでよープンプンだよー」
シロ君はそう文句言いながら自分の体以上に大きい鎌を出現させると女性だった幽霊に振り上げる
「きゃああぁああ!」
断末魔が響き消えた
「助かった…」
まだドキドキが収まらずフヨフヨと浮かぶ
「風間 間に合ってよかった クロから危ないと聞いて急いできたんだ」
「クロさんが…?」
「聞いてよー彩音ちゃんが心配だからってクロを時々警備させてたんだからー今も他に問題ないか行ってるよー」
「それは…ありがとうございます」
秘密にしたかったのか黒乃間さんが照れ臭そうに鼻をさする
「パトロールのついでだから気にするな」
「パトロールとは?黒乃間さんだけですか?今のは何だったのです?」
「余り人に言う事ではないが巻き込んだもんだからな話しておこう」
そう言ってシロ君に視線を向ける黒乃間さんにシロ君はクロ捜してくるーと言っていなくなった
「地縛霊だった霊は成仏せず止まると妖怪になり悪戯するようになる よくあるのは空耳や視線が感じる事がなにも無いのにあるのはそのせいだ
後は蹟かさせたり…まぁ色々ある
いずれ悪戯に物足りなくなり引きずり込もうと事故させるようになる
妖怪は地縛霊と違い動けるようになり霊を捜し取り込もうとするんだ 妖怪が集まったり大きくなると鬼になり殺そうとする
妖怪や鬼を狩るのが死神の仕事だ」
「妖怪に鬼なんて…」
「まぁそれだけじゃない成仏できそうな魂を導くのも仕事らしい」
「私も成仏出来るようにと導かれるのでしょうか?」
「君は死んでない 成仏とは地獄行きだから違う」
「天国はないんでんすか?」
「あいつらが言うにはこの世が天国 あの世が地獄らしい やっと何層もの地獄を体験して禊いだのに自殺なんて勿体無いと言ってからな
人間になるのはすごい事だとさ 生まれても虫かもしれないし動物に転生するのが多いんだと」
「……この世が天国」
「人間が言う天国と言われる所は転生、魂のリサイクルの渦に行くんだと言っていた 地獄を終えて行く所だが何度も生まれ変わってやっと人間になるんだと
選ばれた魂…それが人間」
「選ばれて…私も?」
「そうだ…生まれる事に意味があるんだ」
「理解できないです…」
「まぁ俺も聞いただけだ深く考えるな」
「黒乃間さんは選ばれて死神に憑かれてるんですか?
」
そう言ったら黒乃間さんが呻き声をだした
聞いたら駄目だったのだろうか?
「魂が綺麗らしい…」
「えっ?」
「だから魂が綺麗だから居心地が良いらしい」
「凄いですね…死神さんにそう言ってもらえて…」
「君もそうだと言っていた 死神が見えるのならば」
「それは嬉しいですね」
黒乃間さんが意外そうな顔をする
「嬉しいだと?思いもしなかった
俺は厄介ごとだとしか思わない」
「だって素敵です!知らなかったあの世の話をもっと聞きたいです」
私が詰め寄って聞こうとすると黒乃間さんは笑って頷いてくれた
笑うと幼く見えるなー格好良いなぁ
「それより君が体にちゃんと戻る事が先だ」
「私はもう戻りたいなんて思わないです」
きっと私は独りぼっち帰る家なんてあるんだろうか?
「これから君は霊が見える事になって面倒な事になるかもしれない放っておけないからな だから助手にならないか?」
「助手ですか…なりたいです!ぜひ!」
嬉しくて黒乃間さんの回りをフヨフヨする
「とりあえず病室に戻って体に戻れるか試してみよう」
「はい!」
いつもはすり抜けて降りる所を黒乃間さんに着いて行く それだけで嬉しい気持ちになった
「あーあ、助手だってー大吾ヘタレなのー?」
「仕方ないモテはしたが自分からは初めての体験で戸惑ってるんだろう」
笑い合いながら室内に入って行くのを見届けた死神二人も笑ってこっそり着いて行く
一方で連日ニュースで風間彩音が行方不明だと家族と友人が捜してる事と選挙を控えた大物政治家が人身事故していたとニュースになるのはまだ先の事
読んで頂きありがとうございました!
お寺でお説教聞いてる時にふと昔に死ぬのは簡単で生きるのは難しい世界と言っていた芸能人がいたのを思い出して当時は胸に響き
そうだなって思ったのですが今の私はどうなのだろうと思ったのがきっかけです
夢も簡単に諦め我武者羅に生きてるわけでもない私は情けない人間なのだろうかとお説教ちゃんと聞けよと分かっていながら気分が落ちてしまいました
仏さんになるにはと聞いてる一方で天国と地獄はあると思いますかと口を挟みたくなりながらツラツラと考えて生きる理由なんて見つかるはずないかーと落ち着きました
あとがき長くなり焦りました 失礼しました れんは