第十七話『敵の名は』
御堂庄助と御堂優乃……二人の関係は親子だった。
血の繋がりがあるかもとは頭を過ぎったが、まさか親子だったとは……。
二人の顔を見比べてみるが、全然似てない気がする。
俺は優乃が作った唐揚げを口の中に放り込んだ。
どうやら、優乃の料理の腕はかなりのものらしい。
とても美味い。
俺は、庄助さんと優乃、そして時任と食卓を囲んでいた。
このまま家に帰っても、奴等に捕まる可能性があると、俺も庄助さんに保護された。
ちなみに、御堂親子は紛らわしいので、俺と時任は名前で呼ぶ事にした。
二人も俺の事は名前で呼ぶ事になった。
「で、これからどうするんだ?」
ご飯をかき込み、味噌汁を口に運んだ俺は、マヨネーズのかかったキャベツを箸で掴んだ庄助さんに話を振る。
「康助、醤油取ってちょうだい」
「はいはい」
その間も食事は進んでいく。
時……亜沙美が俺の前にある醤油を求めてきたので、庄助さんの出方を見ながら渡した。
俺達三人が下の名前で呼んでいるのを見て「私の事も名前で呼びなさい」と上から目線で命令してきたので、俺は仕方なく従う事にしたのだ。
補足だが、何度か時任と呼び掛けて、亜沙美から凄い形相で睨まれてしまった。
「まずは、悠子君を助けなけりゃいけないな」
庄助さんは、真面目な表情を見せながら、エビフライを食べ終えた。
そして、「悠子君の力は、私達には必要だ」と続ける。
確かに、この事件を解決するのに、悠子姉が必要なのは間違いないだろう。
しかし、俺としては、そんな事よりも純粋に悠子姉を助けたかった。
「とはいえ、手懸かりが無いじゃ、お手上げよね」
そこら辺の情報は入ってきているの?と続けて、庄助さんへ問い掛けた。
確かに、何も手懸かりがない状態じゃ探しようがない。
庄助さんは少し表情を歪めて、首をゆっくりと横に振った。
情報は入ってきてないようだった。
さて、どうしたものか……。
「お茶をどうぞ」
「ありがとう」
皆が、全ての食事を終えると、気が利く優乃がお茶を用意してくれた。
それを啜りながら、俺達は悠子姉の居場所を見つける方法を考えていた。
しかし、誰も有効な方法を口にする事が出来なかった。
「取りあえず、知り合いの情報屋に当たってみよう」
もしかしたら、この県で使っているアジトがわかるかもしれない、と庄助さんが説明する。
しかし、その表情は明るくない。
その様子から、アジトの発見が難しいのが窺えた。
「奴等って、何者なんだ?」
俺は、ずっと引っ掛かっていた疑問を口にした。
奴等が何者で、何の目的で、こんな事をしているのか……俺は知りたかった。
庄助さんは躊躇う様子を見せていた。
このまま巻き込んでいいものか、迷っていたのかもしれない。
長い沈黙が流れた。
庄助さんの口がゆっくりと開く。
「奴等とは……スアレス教団と名乗るカルト集団だ」
少しだが、ニュースか何かで、聞いた事があった。
危険な思想を持っているとかで、本部がある場所では揉め事が絶えないという話だったはずだ。
「それは、まだ表の顔さ」
俺がニュースの話をすると、庄助さんは肘を付いて手を組み合わせると、眉をしかめて呟いた。
そして、スアレス教団が起こそうとしている目的を語り始めた。
「奴等の目的は、自分達が祀る為の神の構築だよ」
「……ッ!」
庄助さんが何を言っているのか、俺には理解出来なかった。
いや、頭では理解出来るが、魂が理解する事を拒否していた。
神の構築……?
そんな事、人間に出来る訳ない。
「人道に反してるどころの話じゃないっ!」
「ああ……違いないな」
そんな事を考えている奴等がいるなんて……想像しただけで怖気が走る。
そんな奴等に悠子姉は捕まっているのか……。
ゾッとした。
絶対に、奴等の手から悠子姉を奪還せねばならない。
そう誓うのだった。




