銀の魔銃使い
戦闘描写がありますので閲覧については自己責任でお願い致します。
朝を迎えたあたし達は身支度を整えた後に1階に降り、女将さんから注文していたお弁当を受け取った後に宿屋を後にした。
宿屋を出たあたし達は村に1軒だけある雑貨屋さんを訪問し、ダンジョン捜索に備えて夜目薬(闇祓い草と言う草を利用した暗視薬)を幾つか購入して村の外(アリーナさん達に教えて貰ったオラデノ達の拠点がある場所とは反対の位置)へと向かった。
「リリカ様、あれはアリーナ殿とミア殿です」
村の外れに近くなった所で蓮華がアリーナさんとミアさんを見つけて声をあげ、ほぼ同時にあたし達の事に気付いたらしいアリーナさんが片手を挙げながら笑顔であたし達に声をかけてきた。
「おはよう、その様子だと踏破済みのダンジョンに行ってみる様だね」
「はい、取りあえず行ってみます」
アリーナさんの問い掛けを受けたあたしは笑いながらそれに答え、アリーナさんは頷きながら傍らのミアさんを一瞥してから言葉を重ねた。
「アタシ達は闇祓い草の採取と緑魔イノシシの狩猟をする予定だよ、あのダンジョンはもう踏破済みだからあんまり危険は無いだろうけど注意しとくんだよ、それじゃあね」
アリーナさんの言葉を受けたあたし達は頷く事でそれに応じ、それを確認したアリーナさんとミアさんはゆっくりと頷いた後にしっかりと手を握り合って森の方に向けて歩き始めた。
「……よし、それじゃあ、あたし達も行くよ」
あたしがアリーナさんとミアさんの背中を見送った後に蓮華と一美に声をかけると2人はゆっくりと頷き、それを確認したあたしは2人を促して歩き始めた。
村を出たあたし達は踏破済みのダンジョンに向けて歩き始め、あたしは爽やかに晴れ渡った快晴の空を見上げながら口を開いた。
「それにしても良い天気だねえ」
「そうですわね、野点に絶好の日和ですわね」
あたしの呟きを耳にした一美は笑顔で相槌を打ち、それから笑顔で言葉を続けた。
「その内に御舘様や蓮華さんに私の御手前を披露させて頂きますわね」
「ありがと、楽しみにしてるね」
「私も楽しみにさせて貰いますよ、一美殿」
一美の言葉を受けたあたしが笑顔で応じていると、蓮華も穏やかな表情で口を開き、あたしと蓮華の返答を聞いた一美は嬉しそうに微笑みながら頷いた。
一美の笑顔と頷きを受けたあたしは更に歩き続けようとしたけど、突然、蓮華と一美の足が止まり、あたしは2人の後方に下がりながら口を開いた。
「……モンスターなの?」
「……はい、前方に、まだ、此方には気付いていない様ですが」
あたしの問い掛けを受けた蓮華は腰の妙法蓮華経に手を添えながら答えると前方を見据え、あたしがその視線の先を見据えると4匹の草子鬼が歩いていた。
「……御舘様、蓮華さん、あのモンスターは私に御相手させて頂きたいのですが宜しいでしょうか」
草子鬼の姿を確認した一美は肩に吊るしていた銃剣付マジックマスケットを肩から外しながら口を開き、それを受けたあたしが蓮華に視線を向けると蓮華はゆっくりと頷いた。
「……分かった、お願いね、一美」
「畏まりました、御舘様、蓮華さん、御舘様を頼みますね」
「承知した、一美殿、存分に暴れてくれ」
一美の言葉を受けたあたしと蓮華はそう答えながら少し後退し、一美はあたし達に向けて典雅な仕草で一礼してから前方の草子鬼に視線を向けた。
「それでは、行きますわね」
一美はそう呟くとその場に腰を降ろして左足を少し前に出して左膝を立て、その上に乗せた左肘を支えにしてマジックマスケットを構えた。
構えられたマジックマスケットが淡い輝きを放ち始め、一美は淡く輝くマジックマスケットの銃先を草子鬼へと向けてトリガーを操作した。
一美の操作を受けたマジックマスケットは銃声を周囲に響かせながら魔弾を射ち出し、発射された魔弾は狙い違う事無く標的となった草子鬼を射ち抜いた。
魔弾に射ち抜かれた草子鬼の骸が地面に崩れ落ち、一美は残る草子鬼が突然の攻撃に慌て始めるのを見据えながらマジックマスケットを握り締めて魔力を注入し始めた。
暫くすると銃口から紫煙を漂わせているマジックマスケットが再び淡い光を放ち始め、一美は輝き始めたマジックマスケットの銃先を再び草子鬼へと向けるとトリガーを操作した。
一美の操作を受けたマジックマスケットの銃口から橙のマズルフラッシュの炎を迸らせながら魔弾を発射し、発射された魔弾は標的となった草子鬼を一撃で骸へと変えた。
骸となった2匹目の草子鬼が地面に崩れ落ちる中、残る2匹の草子鬼が漸く一美の存在に気付き、2匹の草子鬼は怒りの唸り声をあげながら魔力の充填を始めた一美に向けて駆け出した。
「……蓮華!?」
「……御安心下さいリリカ様、一美殿ならあの程度のモンスター、造作もありません」
草子鬼の行動を目にしたあたしは慌てて蓮華に声をかけたけど蓮華は静かに前方を見据えながら答え、それを合図とした様に一美が立ち上がると銃剣付きのマジックマスケットを槍の様に構えて草子鬼目掛けて駆け出した。
駆け出した一美は瞬く間に突撃してくる草子鬼との距離を詰め、予想外の行動に慌てた先頭の草子鬼が振り降ろした剣を銃剣で弾き返した。
剣を弾き返した一美は更に一歩踏み込みながら草子鬼の顔面にマジックマスケットの銃床を叩き込み、がら空きの顔面にまともに銃床を叩き込まれてしまった草子鬼は悲鳴の様な声をあげながら吹き飛ばされてしまった。
一美が草子鬼を殴り飛ばすと同時に突撃して来たもう1匹の草子鬼が唸り声をあげながら剣を突き出し、一美は微かに身を動かして突き出された剣を回避すると突撃してくる草子鬼の鼻面に銃床を叩き込んだ。
突進中の鼻面に銃床をめり込まされてしまった草子鬼凄まじい悲鳴をあげながら殴り飛ばされ、一美は流れる様な動作でマジックマスケットを構え直すと倒れ込んだ草子鬼の所に駆け寄り銃剣を起き上がろうともがく草子鬼に突き入れてとどめを刺した。
草子鬼を銃剣で突き刺した一美は即座に銃剣を引き抜くとその勢いを利用して先程殴り飛ばした草子鬼の方へと向き直り、魔力の充填が完了して淡く輝いているマジックマスケットの銃先を起き上がった草子鬼に向けてトリガーを操作した。
一美の操作を受けたマジックマスケットは三度目の銃声を周囲に轟かせ、発射された魔弾の直撃を受けた草子鬼はアビリティの発動の証である爆発に包み込まれてしまった。
最後の草子鬼が爆砕されると同時に淡い光の粒子が発生してあたしの身体へと吸い込まれ、それを確認した一美はマジックマスケットを肩に吊るした後にあたしと蓮華の下へと歩み寄ってきた。
「お疲れ様、一美、ありがとね」
「……勿体無い御言葉ですわ、御舘様、この程度の事造作もありませんわ」
あたしが歩み寄って来た一美に労いの言葉をかけると一美は嬉しそうに微笑みながら答えてくれ、それを受けたあたしはゆっくりと頭を振りながら言葉を続けた。
「一美には造作も無い事かも知れないけど、まともに戦えないあたしにとってはとても頼もしいよ、負担ばかりかけちゃうと思うけど、宜しくね、一美」
「……御舘様は本当に優しい御方ですね、ありがとうございます」
あたしの言葉を受けた一美は少し頬を赤らさせつつ応じ、その初々しい反応を目にしたあたしは自分の頬にも仄かな熱が生じたのを感じながら頷いた。
2人目の武具乙女、一美、彼女は銃剣付マジックマスケットを巧みに操り敵を葬る、凛々しき銀の魔銃使い……




