ハンター
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二人目の武具乙女、一美との邂逅を果たしたあたしは蓮華と一美を連れてレパント村へと戻り、黄昏時を越えて宵に移ろいつつある村の道を通って宿屋へと向かった。
「戻って来たね、おや、その人もお連れさんかい?」
宿屋に入ったあたし達を迎えてくれた女将さんは一美の方に視線を向けながら声をあげ、それを受けた一美は頷きながら口を離れた。
「一美と申します、所用が有りまして御舘様と別行動を取っておりまして、本日漸く追い付けたのです」
「……へえ、お付きの方が2人もついてるのかい、着ている鎧も何だか上品だし、やっぱりお嬢ちゃんはやんごとない身分の御方なのかねえ」
一美の話を聞いた女将さんは頷きながらそう呟く(呟きにしてはだいぶ大きくてあたしにもよく聞こえたけど)とあたしに視線を向け、あたしは曖昧な微笑を浮かべながら口を開いた。
「今日も泊まりたいのですが、大丈夫ですか?」
「勿論だよ、また1部屋かい?」
あたしの言葉を受けた女将さんは笑顔で返答し、あたしが頷く事で応じていると宿屋のドアが開く音が響き、それを聞いたあたし達は一斉にドアの方に向けた。
開かれたドアの所には滑らかな金糸のロングヘアと蒼水晶の瞳の美貌と金髪の間から覗くエルフ耳が特徴的な翠のライトアーマー姿のエルフさんと艶やかな光沢を放つセミロングの蒼髪とエメラルドグリーンの瞳の凛々しさの漂う美貌と引き締まった魅力的な肢体を大胆に晒す黒のビキニアーマーと臀部から伸びる長い尻尾が印象的なリザードマンの美女が並んで立っていて、その姿を目にした女将さんは笑顔になりながら2人に向けて口を開いた。
「帰ったかい、お疲れ様、野宿は大変だったろう?」
「そうでも無いわ、ミアも野宿には馴れてるしね、所で旅人さん?珍しいわね」
女将さんの言葉を受けたリザードマンの美女はあたし達を見ながら応じ、女将さんは頷きつつ更に言葉を続けた。
「マリーさんの隊商に便乗してここに来て昨日からここに泊まっているのさ、昨日は2人だったけど今日は3人になってるのさ」
「はじめまして、リリカと言います、宜しくお願いします」
女将さんに紹介されたあたしはそう言いながら挨拶し、それに続いて蓮華と一美も挨拶を始めた。
「……蓮華と申します、リリカ様を御守りしています、宜しくお願いします」
「……一美と申しますわ蓮華さんと共に御舘様にお仕えさせて頂いております」
「こりゃどうも、アタシはアリーナ、見ての通りのリザードマンでハンターをしてる、今は隣にいるルーキーハンターのミアの昇格資格獲得の為にここでミアと一緒に長期警戒任務をしているのさ」
「……ミアと言います、エルフでルーキークラスですがハンターをしています、さっきアリーナさんが説明してくれた通りアリーナさんと一緒にここレパント村で活動しています」
蓮華と一美の挨拶を受けたリザードマンの美女、アリーナさんとエルフの美女、ミアさんも挨拶を返してくれ、それを聞いていた女将さんは笑顔で言葉を続けてきた。
「ミアって娘はハンターランクをルーキーから★(シングル)に昇格させる為の昇格資格を獲得する為に★★(ダブル)のアリーナと一緒に3ヶ月の長期警戒任務をしている途中なのさ」
「そうなんですか、大変ですね」
女将さんのしてくれた説明を受けたあたしがそう言いながらミアさんを見詰めるとミアさんは少し恥ずかしそうにはにかみながら頷いた。
先程からアリーナさんやミアさん、女将さんの言葉の中にあったルーキー、★、★★と言うのはハンターのランクの事でヒエラルキーは後者になる程高くなっていて、他に★★★(トリプル)、★★★★(クワドラプル)が存在(もっとも★★★★はほんの数人しかいないらしい)しているとマリーさんが教えてくれた。
「何時もはこの宿を拠点に活動してるんだけど昨日は野外での活動で野宿をしていて、あんた達とは会えなかったんだね、それにしても旅人なんて珍しいねえ、こんな時分になってもいるって事は今日も泊まるのかい?」
挨拶が終了した所でアリーナさんはそう問い掛け、あたしが頷くとさっぱりとした笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「だったら、夕食がてらにチョイと一杯といかないかい?この任務が始まってそろそろ2ヶ月になるけどあんた達が初めて訪れた旅人だから珍しいんだよ」
「はい、ぜひお願いしますアリーナさん」
アリーナさんのお誘いの言葉を受けたあたしは笑顔で快諾し、それを受けたアリーナさんは笑顔で頷いた後にミアさんと一緒に2階へと上がっていった。
「……良い方々の様ですわね」
2階へと上がって行ったアリーナさんとミアさんを見ていた一美は穏やかな表情で呟き、それを耳にした女将さんは頷きながら口を開いた。
「アリーナは今は★★だけもう★★★にも手が届く程の手練れであの通りのさっぱりとした性格だしミアも素直で良い娘だよ」
女将さんは笑顔でそう言い、その後に小さく溜め息をつきながら言葉を続けた。
「全く、任務をしてくれるハンターがあの娘達だけなら良かったのにねえ」
「……と、言うと?」
(……あれ、何か、変なフラグ立ってない?)
女将さんの溜め息まじりの呟きを耳にした蓮華は眉を潜めながら女将さんに問い掛け、あたしが御約束の展開になりつつある状況に内心冷や汗が出始めるのを感じながらその様子を見ていると女将さんは肩を竦めながら言葉を続けた。
「あの娘達の他にもう一組昇格資格獲得の為の長期警戒任務を行ってる連中がいるのさ、★★★のオラデノって奴のパーティーでね、今は村外れの空き家を拠点にして活動してるんだよ、腕はあるんだけど粗野な奴でね村の若い連中とつるんで色々やらかしてるんだよ」
「……よく、★★★になれましたね、それで」
女将さんの言葉を聞いたあたしは呆れながら感想をもらし、それを聞いた女将さんは嘆息しながら頷いて更に言葉を続けた。
「腕はあるからモンスター討伐はしっかりしてるからねえ、村としても困ってるのさ」
「……だから、マリーさんが村長さんの屋敷に泊まったんですか?」
女将さんの言葉を聞いていたあたしはその最中に浮かび上がった臆測を呟き、それを受けた女将さんは一瞬怪訝そうな表情になったけど直ぐに得心した様に頷いた。
「元ハンターでハンターギルドにも顔の利くマリーさんにオラデノの事を報せる為って訳かい、なるほどねえ、もともとマリーさんの隊商は何時も村長さんの御屋敷に泊まってるけど、そう言う話し合いをし易い様に泊まっているのかもしれないねえ」
女将さんは何度も頷きを繰返しながら呟き、その様子を目にしたあたしは肩を竦めながら口を開いた。
「……まあ、ここで考えて答えのでる話じゃ無いですね、これ、代金です」
「うん?おっと色々長話に付き合わせてしまってすまないねえ、部屋の鍵だよ」
あたしはそう言いながら宿泊料と2食分の料金(2900ヴェール)を女将さんに渡し、女将さんは相槌を打ちながら料金を受け取るとあたしに部屋の鍵を渡してくれた。
部屋に戻ったあたし達はラフな服装になって暫く寛いだ後に1階へと向かい、既に食事を始めていたアリーナさんとミアさんの所に合流して食事会兼飲み会を開始した。
「……オラデノ、か、腕はあるけど粗野なハンターだね、ハンターギルドからも何度か注意を受けてるんだけどそんなんで行動を改めたりする様な人間じゃ無いね」
あたしが食事をしながらアリーナさんにオラデノの事について聞いてみるとアリーナさんは顔をしかめてそう言うとグラスに入った葡萄酒を飲み、それに続いて食事をしていたミアさんが表情を曇らせながら口を開いた。
「長期警戒任務の際は2〜3組のパーティーで小さな村に寝泊まりして指定された期間周囲のモンスターを狩ったり採取を手伝ったりしているんですけど、オラデノさんのパーティーはモンスターの討伐を主に行っていて採取等はあまり行っていません、そして狩猟が終われば拠点にしている空き家で村の若い人達と騒いでいます」
「……先程から聞いていればその行動些か短慮が過ぎませんか、その様な行動をしてそのパーティーにいるルーキーハンターは昇格資格を獲得出来るのですか?」
ミアさんの説明を聞いていた蓮華は眉を潜めながら疑問の声をあげ、あたしと一美が同意する様に頷いているとアリーナさんがグラスに葡萄酒を注ぎながら口を開いた。
「この任務は昇格資格獲得の任務とされてはいるけど実際にはほぼ昇格試験に近くてね、指定された地を大過無く守れればほぼ昇格出来るのさ、もっともその期間中の行動によって★から★★への昇格条件が厳しくなってしまうから、あんまり好き勝手は出来ないんだけどね、まあ、★★★になってるオラデノにとってはどうでも良い事だから割と好き勝手してるけどね」
アリーナさんはそう言いながら葡萄酒の瓶を置くと大皿に盛られた緑魔イノシシ(デッカい猪で突進が強力)の香辛料焼き串を1つ手にしてそれにかぶりついた。
アリーナさんは瞬く間に串を平らげると葡萄酒で喉を潤し、あたしがその健啖ぶりに感嘆しているとミアさんが表情を輝かせながら話しかけてきた。
「それにしても、マリーさんに紹介状を書いて貰えるなんて凄いですね、マリーさんは隊商の責任者になる前は★★★のハンターだったんですよ」
「アタシも驚いたけど考えてみりゃ当然かもね、あんたのお付きの2人、並の使い手じゃ無さそうだからね」
ミアさんに続いてアリーナさんもそう言いながら新たな串に手を伸ばし、アリーナさん達の言葉を受けたあたしは笑顔で言葉を返した。
「ありがとうございます、蓮華も一美もあたしには勿体無いくらい強くて素敵な女達なんですよ」
「……り、リリカ様」
「……御舘様、御戯れが過ぎます」
あたしの言葉を聞いた蓮華と一美は少し恥ずかしそうに反応し、アリーナさんとミアさんは笑顔でその様子を見詰めていた。
それからあたし達はアリーナさん達と歓談しながら酒肴を楽しみ、その際にアリーナさんから聞かされたレパント村の近くにある踏破済みのダンジョンを翌日の目的地とする事にした。
アリーナさん達との賑やかな宴を終えたあたし達は部屋へと戻り、翌日の踏破済みダンジョン捜索に備えて寝る事にしたのだけれど……
「……確かに私達は今の姿と元の姿に戻る事は出来ます、ですが、それではいざというにリリカ様を御守りする事が出来ません、百歩譲るとしてもどちらか一人は今の姿でいるべきだと思います」
「……蓮華さんの仰有る通りですわ、御舘様、アリーナさん達や女将さんは確かに良い御方達です、ですが、備えあれば憂い無しとも申します、妙な輩がいない訳ではありませんのでどちらかはこの姿で御舘様のお側に控えさせて頂きます」
部屋に戻ったあたしが部屋が手狭になった為に元の姿に戻れるかどうか聞いてみた所、2人は元の姿には戻れるとは言ったもののあたしを護衛する為にどちらかは今の姿のままでいるべきだと言い、そのままどちらが残るべきかについて会談を始めた。
「……蓮華さん、貴女は本日リリカ様を御守りして戦い続けたと聞きますわ、疲労も蓄積されているでしょうから今宵御舘様の御側には私が控えて御守り致しますわ」
「……一美殿、そちらの配慮については忝なく思います、ですが心配は御無用です、あの程度の戦闘で参る様な身体ではありません、それに明日は貴女もリリカ様と共にダンジョンに向かうのですよ、ですから貴女はしっかりと明日に備えて下さい」
「……蓮華さん、疲労の蓄積と言うものは得てして本人に自覚し難い物ですのよ、ですからしっかりとお休みして疲労を回復させた方が得策ですわよ、それに、蓮華さんは昨夜も御舘様の御側にいらしたのでしょう?でしたら、今宵は私が御側を御守りするべきだと思うのですが?」
「……重々の配慮痛み入るわ一美殿、ですが心配は無用よ、あの程度の戦闘で疲れていてはリリカ様を御守りする為等出来る筈が無いもの、それと、1つ間違った認識をしている様だから言っておくわね……交代制では無いわ」
(……ねえ、どうしろって言うのよこのキューバ危機状態)
言葉を交わしている蓮華の淡い桃色の瞳と一美のブラウンの瞳がスウッと細くなり、あたしが一触即発の状況に内心途方にくれていると二人はあたしの方に視線を向きながら口を開いた。
「……ここはリリカ様に選んで頂くとしましょう、それなら異論は無いでしょう」
「……そうですわね、御舘様の御英断ならば何の異論もございませんわ」
蓮華と一美はそう言いながらあたしを見詰め、あたしはひきつり気味の笑顔を浮かべた。
結局あたしは2人と一緒に寝る事を選択(ヘタレと言いたければ言うがいいわ、取りあえずあの状況でどちらかを選ぶ勇気はあたしには無い)し、あたしは両脇に蓮華と一美の温もりを感じながら眠りに就いた。
異世界に来たあたしの目指す道が決まった、それは自由と危険が隣併せで白と黒が入り雑じる異世界定番とも言える道、あたしが目指すその道は、世界を巡り行くハンター……




