新たな乙女
3000PVアクセス及び1000ユニークアクセス突破出来ました。これからも宜しくお願い致します。
マリーさんのテントで見付けた新たな武具乙女の魂を宿した茶入、小茄子、あたしと蓮華は彼女を購入する為の資金を稼ぐ為にレパント村付近でモンスターとの戦闘(と言っても戦っているのは蓮華だけだけど)を行っていた。
時折の小休止と昼食のお弁当を食べた一時間程を除いた一日の大部分は飢狼犬や草子鬼に草鬼それに牙を持ったデッカイ飛蝗(「武具乙女」では見た事が無いヤツだったので取りあえず牙飛蝗と呼ぶ事にした)なんかとの戦いで費やされ、蓮華は出てくるモンスターを流麗な太刀捌きで斬り捨て続けた。
蓮華の強さは凄まじくてモンスターを圧倒していたけど、長時間に及ぶ戦闘の途中であたしも攻撃(草鬼の棍棒でぶん殴られた)を受けてしまい(めちゃくちゃ痛かったけど怪我はせず代わりにステータスの体力の数値が減少していた)蓮華はそれからはあたしの事をより一層気にかけながら戦闘を続けてくれた。
戦闘は日差しが茜色になりかける頃まで続き、小茄子の購入資金プラス当面の生活資金と言う目標を達成したあたしと蓮華は疲れを感じながらレパント村へと帰り、マリーさんのテントへと向かっていた。
「……リリカ様、申し訳ありません、私の不注意により貴女様を危険に晒してしまい」
「……ううん、あたしの方こそ不注意で攻撃を受けてゴメンね」
あたしの傍らを進む蓮華は沈痛な面持ちになりながらあたしに謝罪し、あたしは蓮華に負担をかけている事を申し訳無く思いながら言葉を返した。
それからあたしと蓮華はマリーさんのテントの前へと移動し、あたしは小茄子の購入資金を具現化させてから蓮華と共にテントの中へと歩を進めた。
「……いらっしゃい、その様子だと用意出来たみたいだね」
テントに入ったあたしと蓮華の姿を目にしたマリーさんは微笑みながらそう言うと小茄子をテーブルの上に乗せ、あたしは頷きながら小茄子の購入資金をテーブルの上へと置いた。
「ちょっと確認させて貰うよ……うん、大丈夫だね、それじゃあ毎度あり、ちょいと値引きさせて貰うから受け取りなよ」
「……ありがとうございます」
マリーさんはきっぷの良い笑顔で言いながらあたしの出したヴェールの一部と一緒に小茄子を差し出し、あたしは暫く思案した後に遠慮なくマリーさんの好意を受け取った。
「……そう言えばあんた達はまだ身分証を持ってないんだったよね」
あたしが小茄子とヴェールを受け取るとマリーさんはあたし達を見ながら声をかけ、それを受けたあたしが頷くと暫く無言でいた後に口を開いた。
「昨日も言った様に手っ取り早く身分証を手に入れるならハンターギルドに所属するのが一番なんだよね、だけど、あれに入る審査ってのは割に厳しいんだよね、だがら、良かったらあたしがハンターギルドに紹介状を書いても良いんだけど、どうするね?」
「えっ本当ですかっ!?」
マリーさんの提案を受けたあたしは思わず驚きの声をあげた。昨日マリーさんに教わった話によるとこの世界の国家間の移動はほぼかなり自由に行う事が出来て身分証の保持は必ずしも必須と言う訳では無い、ただし、身分証が無い場合は街や村等に入る事が出来ても図書館等一部施設を利用する事が出来なくなるのでやはり身分証が有るにこした事は無い状態になっている。
現状のあたしの状況を考えたら身分証の発効等望むべき状況だけど、そんな状況のあたしでも手っ取り早く身分証を得る手段がありそれがハンターギルドへの所属だ。
ハンターギルドにハンターとして所属すればハンターカードが支給され、それが身分証の代わり(ただしハンターレベルが低い内は利用条件が限られている)に使用出来る。
今の状況のあたしにとっては渡りに舟とも言える話だけど話はそんなに上手く行かない物でハンターギルドに登録するには割と厳しい審査があるとの事だった。
例外として際立った功績をあげた場合や有力者の紹介状(コネかよと思う人がいるかもしれないが推薦された人が不祥事を起こした場合は推薦人も連帯責任を取らされる為なかなか紹介状を書いてくれる人はいない)があれば審査がかなり簡略化されるけどそんな功績や伝手が無いあたしにとってはハンターギルドへの所属も結構難しかったりする。
だから今マリーさんの言ってくれた事はあたしに取っては凄くありがたい話だけど、あたしの中には初対面であるにも関わらずにそうまでしてくれる事に対する戸惑いがあり、それを察したらしいマリーさんは鷹揚な笑みと共に言葉を続けた。
「あたしはこの隊商の責任者になる前はハンターをやってたんだよ、護衛任務でこの隊商と付き合ってる内に商売に興味が出てこの隊商の責任者をしてるけどね、あんた達は面白そうだから紹介状を書いてみたくなったのさ、勿論、商人としてあんた達の可能性を感じたから先行投資してみたくなったってのもあるけど、それで恩にきせたりするつもりは無いから安心しとくれ」
「……分かりました、宜しくお願いします、マリーさん」
マリーさんの説明を受けたあたしはその厚意に甘える事にして御礼を言いながら頭を下げ、その後に鷹揚に笑うマリーさんに見送られてテントを後にした。
「……良かったですね、リリカ様」
「……うん、本当に良かったよ」
テントを出ると蓮華が穏やかな口調で声をかけてくれ、あたしは笑顔で相槌を打ちながら市を後にした。
市を出たあたし達はその足で再びレパント村の郊外へと移動し、付いて来てくれた蓮華は怪訝そうな面持ちになりながら口を開いた。
「……リリカ様、また村を出ましたが如何なされました?」
「……蓮華、今から人が出てくるけど、驚かなくていいからね」
蓮華の問いかけを受けたあたしは小茄子を見せながら返答し、蓮華は表情を輝かせながら言葉を続けた。
「もしや、その器に私と同じ様な存在が!?」
蓮華の言葉を受けたあたしは頷く事で応じつつ手にした小茄子に視線を向け、茜色の陽射しに染まる小茄子を見詰めながら言の葉を紡いだ。
「秘められし魂をここに……サモンッ!!」
あたしの紡いだ言の葉が夕暮れ時の周囲を舞うと同時に手にあった小茄子の感覚が消失し、その代わりに一人の美しい美少女があたしと蓮華の前に佇んでいた。
「御呼び頂きましてありがとうございます。御舘様この一美不束者ではありますが、全身全霊を持って御舘様に忠節を尽くさせて頂きます」
緩やかなウェーブを描く亜麻色の肩までのセミロングヘアとブラウンの瞳の穏やかな雰囲気の美貌と衿元に丸に堅木瓜の紋が刺繍された淡い紫の膝上丈のミニ浴衣風の衣装と黒のニーハイソックスの上から脛当と甲掛を装着したスラリとした美脚、そして肩に吊るした燻し銀の輝きを放つ銃剣付きの銀製のマジックマスケットが印象的な美少女、一美は穏やかな笑みと共にそう言うと深々と一礼し、あたしは新たな武具乙女との邂逅に笑みを浮かべながら口を開いた。
「ありがとうこれから宜しくね、一美、あたしはリリカ、そして彼女は蓮華、貴女と同じ存在だよ」
「蓮華と申します、共にリリカ様に忠節を尽くし、御守りしましょう一美殿」
あたしに紹介された蓮華は穏やかな表情で一礼しながらそう言い、一美は蓮華に視線を向けると大きく頷きながら口を開いた。
「宜しくお願い致します、蓮華さん、私は得物の特性上御舘様から余り離れず戦う事になります、ですので蓮華さんは後顧を憂う事無く戦い下さい」
「助かる、本日の戦いで一人でリリカ様を御守りする事の難しさを思い知らされた所だ、その言葉頼りにしている」
一美の言葉を受けた蓮華は安堵の表情と共に言葉を返し、それを受けた一美は穏やかな笑みと共に大きく頷いた。
異世界に到着して2日目の夕刻、宵闇せまる茜色の陽射しの中、あたしは新たな武具乙女、一美と出逢う事が出来た。




