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妖刃艶武

戦闘描写及び残酷描写がありますので閲覧は自己責任でお願い致します。

バトルシーンの作者脳内BGMはシェリル・ノームのノーザン・クロスです。


この世界に来て初めてあたしの下へと参じてくれた武具乙女、蓮華、今、あたしは彼女と共に草原の中を伸びる街道を歩いていた。

「日がある内に村なり町なりにたどり着けたら良いわね」

「そうですね、リリカ様」

あたしが傍らを進む蓮華に声をかけると蓮華は穏やかな表情と共に応じてくれて、それを受けたあたしは頷いた後に問い掛けの言葉を続けた。

「そう言えば、蓮華には妙法蓮華経だった頃の記憶ってあるの?」

「……はい、記憶と言いましても朧気な物でどの様な者に使われていたのかは等は分かりませんが」

あたしの問い掛けを受けた蓮華は数拍の間を置いてから答えてくれて、それを受けたあたしは傍らを進む蓮華の姿を見ながら更に言葉を重ねた。

「……蓮華は今の状態に違和感とかは感じていないの?」

「……自分でも些か不思議なのですが特に感じていません、この様な事になったのは今回が初めてなのですが」

あたしの更なる問い掛けを受けた蓮華は少し首を傾げながら答え、その後に穏やかな表情を浮かべた。

「……リリカ様の様な素敵な御方にお仕え出来たからかも知れませんね」

「……れ、蓮華」

蓮華の口から自然な形で溢れた言葉を受けたあたしは頬が熱を帯びるのを感じながら蓮華に呼び掛け、あたしの呼び掛けを受けた蓮華は顔を真っ赤にさせてしまった。

「……も、申し訳ありません、り、リリカ様!?……い、今の言葉は……その……は、弾みで出てしまったと言うか……その……」

真っ赤になってしまった蓮華はごにょごにょとしどろもどろに言葉を発し、普段の凛々しさとは異なる姿を目にしたあたしは自分の心臓が喧しく鳴り始めたのを感じながら蓮華の傍らに近付いて彼女の左手に自分の右手を重ねた。

「……り、リリカ……様?」

「……ありがとね、蓮華」

突然のあたしの行動に蓮華は真っ赤な顔を更に赤くさせながら驚きの声をあげ、それを聞いたあたしは頬に籠る熱から自分も同じ様な顔になっているであろう事を自覚しながら口を開いた。

「……貴女があたしに仕えてくれて、本当に嬉しいよ、本当にありがとね、蓮華」

「……御礼を言うのは此方の方ですリリカ様、貴女様に御仕えできて、本当に良かった」

あたしが告げた言葉を受けた蓮華は嬉しそうに微笑んで答えてくれて、あたしと蓮華は微笑みながら頷き合った後に手を繋いだまま街道を歩き続けた。

あたしが繋がった手から蓮華の温もりと存在を感じながら歩いていると前方の道脇に小さな藪が存在しているのが確認され、それを確認した蓮華は脚を止めて繋がっていた左手を離しながら口を開いた。

「……リリカ様、御下がり下さい」

蓮華は薄桃の瞳をスウッと細くさせながらあたしに告げると腰を沈めつつ妙法蓮華経の鞘に添えた左手の親指で鯉口を切り、その小さな澄んだ音を耳にしたあたしは頷きながら蓮華の後方に後退した。

(……大丈夫かな、蓮華、まだレベル2なんだよね、ゲームだとレベル2でも雑魚モンスターを余裕で蹴散らせてたけど)

あたしがそう思いながら蓮華と藪を見詰めていると藪が突然大きく揺れ始め、揺れる藪の合間から次々にモンスターが姿を現した。

低い唸り声をあげる見るからに獰猛な印象の狼みたいな四足獣、飢狼犬(狼なのか犬なのかハッキリしない名前だけど、現物を見る限り狼っぽい)が8匹姿を現した。

(8匹って、初戦にしてはハードじゃない?)

8匹の飢狼犬を目にしたあたしは胸中で思わずそう呟いていた、「武具乙女」では敵味方ともフロント3名、バック3名の計6名が最大参加人数だった。現実はそう甘くは無いと言う事なのだろうが、全くレベル上げ出来てない蓮華の現状を鑑みれば自分と蓮華の身への不安が頭をもたげてきた。

「……御安心下さい、リリカ様」

飢狼犬と対峙した蓮華はあたしの不安を感じ取ったみたいで、穏やかな口調であたしに向けて呼び掛けながら妙法蓮華経の柄を右手で握り、それを合図とした様に飢狼犬が動き始めた。

8匹いた飢狼犬の中から1匹が蓮華に向けて威嚇の彷徨を放ちながら駆け出し、それを目にした蓮華は右足を半歩前に出して地面をしっかりと踏みつけながら更に腰を沈めた。

駆け出した飢狼犬は低く構えた蓮華に近付くと一気に跳躍し鋭い牙と爪を蓮華に向けて繰り出し、それを目にしたあたしが思わず声をあげかけた刹那に蓮華が妙法蓮華経を一閃させた。

鞘から走り出た妙法蓮華経は飛び掛かかってきた飢狼犬の体躯を斬り裂き2つに別れた飢狼犬の骸が蓮華の両脇に落下した。

凄まじい居合いで飢狼犬を斬り裂いた蓮華はその勢いを利用して前方に向けて駆け出し、風の様な速さで飢狼犬の集団の中に突入した。

突入した蓮華は妙法蓮華経を上段から振り降ろして飢狼犬に斬りかかり、妖しく輝く妙法蓮華経の斬撃は一太刀で飢狼犬を骸へと変えた。

蓮華が2匹目の飢狼犬を斬り捨てると手近な所にいた飢狼犬が怒りの咆哮と共に飛び掛かり、前方に踏み込んでいた蓮華は戻る力を利用して後方に向けて跳び下がりながら妙法蓮華経の刃を返して飛び掛かる飢狼犬目掛けて斬り上げた。

斬り上げられた妙法蓮華経の刃は飛び掛かかってきた飢狼の前肢を斬り、前肢を斬られた斬狼犬は蓮華のアビリティの影響で麻痺が生じたらしく地面に着地すると悲鳴の様な咆哮をあげながらもがき始めた。

後方に跳び下がった蓮華に向けて左右から飢狼犬が跳びかかり、蓮華は左手に妙法蓮華経の鞘を取るとそれを地面に立てるとそれを左足を踏んで踏み台にして空中高く跳躍した。

蓮華の跳躍によって左右から飛び掛かってきた2匹の飢狼犬は正面から衝突してしまい、着地した蓮華は悲鳴の様な咆哮を上げて地面に落下した2匹の所に駆け寄ると立ち上がる前に2匹の飢狼犬を斬り捨ててしまった。

「……す、凄い」

1対8と言う数の差をものともせずに飢狼犬の集団を圧倒する蓮華、妙法蓮華経を凄絶に閃かせながら舞うその姿は凛々しくあると同時にどこか艶やかで、あたしは感嘆の声をもらしながら妙法蓮華経を振るう蓮華を見詰めた。

その間にも蓮華は次々に飢狼犬を斬り捨てて行き、やがて最後の飢狼犬が閃く刃によって斬り裂かれた。

最後の飢狼犬を斬り捨てた蓮華は小さく息をつきながら妙法蓮華経を鞘に戻し、それを確認したあたしは蓮華の傍らに歩み寄りながら口を開いた。

「……お疲れ様、蓮華、大丈夫だった?」

「……はい、大事ありません、リリカ様こそ、大丈夫でしたか?」

あたしの問い掛けを受けた蓮華は穏やかな笑みと共に答えてくれて、あたしは頷きながら言葉を重ねた。

「……ありがとう蓮華、無理させちゃったね」

「……この程度、無理とは思っていませんよ、リリカ様」

あたしの言葉を受けた蓮華は数拍の間を置いた後に穏やかな眼差しであたしを見詰めながら言葉を重ねた。

「……我が身、我が心の全てをかけて貴女様に忠節を尽くす、この言葉を、違えるつもりはありません」

「……蓮華、うん、ありがとう」

真っ直ぐにあたしをあたしを見詰めながら静かで迷い無い口調で告げてくれた蓮華の表情はとても穏やかで、あたしは頬が再び熱を帯び始めるのを感じつつ言葉を返すと嬉しそうに微笑みながら頷いてくれた。



初めて対峙した異界の異形に白刃を振るう蓮華、凄絶に妖刃を振るうその姿は凛々しく、そして艶やかな物だった。


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