初めての町
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作為的なアンデットの襲撃を退けたあたし達は小屋に戻って仮眠を取り、空が白み始めた頃に携行食の朝食を摂った後に小屋を出てリッサの町へと出発した。
出発して暫くすると五月雨式に草子鬼や飢狼犬の襲撃が始まったけど蓮華達やリーゼさんとミリナさんは難なくそれを退け、あたし達はモンスターの襲撃の時以外は順調に歩みを進めた。
お昼頃に街道脇の小高い丘で携行食の昼食を摂ってから再び進み始めると午前中に比べて目に見えてモンスターの襲撃が少なくなり、あたしがリーゼさんにその事を質問してみるとリーゼさんは穏やかに微笑みながら答えてくれた。
「だいぶリッサの町が近くなったからだな、リッサの町の周辺はハンターや自警団で定期的な哨戒任務を行ってモンスターを駆逐しているんだ」
「マリーカ様の第三騎士団が編成されてからは第三騎士団も定期的に哨戒任務を実施してくれてるんだよ」
リーゼさんが説明しているとミリナさんも追加の説明をしてくれ、あたしがそれに頷いていると信姫が鞘に収めたへし切りで自分の肩を軽く叩きながら口を開いた。
「……マリーカ様は追放同然の目にあったってのに腐らずにやってんだな」
「……マリーカ様は領地の発展と維持の為に代々ハンターや隊商を保護してきたオストブルク家の方針に誇りを持っていたからね、正直言うと私やリーゼもあんな目にあったんだから消沈して何も手につかなくなちゃってても仕方無いかなって思ってたんだけど、マリーカ様はここに到着すると騎士団が編成される前から哨戒任務を始めちゃったんだよ」
信姫の言葉を聞いたミリナさんは誇らしげな表情で答え、2人の会話を聞いていた一美は嘆息しながら口を開いた。
「……聞けば聞くほどマリーカ様は素晴らしい御方の様ですわね、元婚約者やその他の方々の眼力を少々疑ってしまいますわね」
「……私やミリナは少々疑うどころかこう思っているぞ、無能な節穴どもとな」
一美の言葉を受けたリーゼさんは平然とした面持ちであっさりと言い放ち、それを聞いた蓮華は苦笑を浮かべながらあたしに声をかけてきた。
「随分嫌われてますね、まあ、私も、その方々に好感を抱いてはいませんが」
「うん、あたしもそう思うよ」
蓮華の言葉を受けたあたしは頷きながら相槌を打ち、あたし達は逆ハーメンバーへの評価を駄々下がりに低下させながら街道を進んだ。
街道を進んで行くとちらほらと他のハンターや商人らしい人達の姿が散見され始め、そんな人達と行き交いながら更に進んで行くと前方に石造りの城壁に囲まれた町が姿を現した。
「……あれが、リッサの町ですか?」
「ああ、あれがリッサの町、私達が拠点としている町だ」
あたしの問いかけを受けたリーゼさんは頷きながら答えてくれ、あたし達は初めて目にしたリッサの町並みを興味深げに見詰めながらだいぶ傾いてきた陽射しの下歩き続けた。
歩き続けて城門に到着すると、その前には町に入る人達が衛兵さん達の質問を受ける為に列を作っていて、それを確認したあたし達は列の最後尾に移動して順番を待つ事にした。
「……今、衛兵に掲げて見せたのがハンターカードだよ、本人以外は使用出来ない様になっているから身分証としても使われてるんだよ」
「あれがハンターカードなんですね、ああ言う物が無い人は入城料みたいなのを払わないといけないんですか?」
ハンターの人がハンターカードを衛兵さんに示しているのを目にしたミリナさんがそう説明してくれて、それを聞いたあたしが気になっていた事を質問してみるとあたしとミリナさんの会話を聞いていたリーゼさんが微笑いながら口を開いた。
「安心しろ、商人や隊商は積荷に応じた租税を徴収されるがリリカ達の様な個人的な旅行者は簡単な質疑だけで入城出来る、尤も」
「……リリカちゃん達はちょっと時間かかっちゃうかもね」
「……ですよね」
リーゼさんが苦笑を浮かべながら言葉を区切るとミリナさんが同じ様な笑みと共に言葉を重ね、2人の言葉を受けたあたしは同じ様に苦笑して応じながら自分の周囲を見渡した。
あたしの周囲ではあたしを護る為に蓮華達が佇んでいて、そんな光景は列の人達や衛兵さん達から注目の的になってしまっていた。
(……まあ、しょうがないよね、見た目どう見ても訳ありな御一行様だもんね)
あたしが内心で嘆息している間にも列は粛々と進んで行き、やがてあたし達の前にいたリーゼさんとミリナさんがハンターカードを衛兵さん達に示してチェックを終えた。
「……次の者達は、此方に」
上役っぽい年配の衛兵さんに呼ばれたあたし達がそれに従って衛兵さん達の詰所の脇に移動すると、衛兵さんがもう一人そこに加わり年配の衛兵さんは穏やかな表情で口を開いた。
「……申し訳無いが君達への質疑は少し時間を取らせて貰うよ」
「はい、分かりました」
年配の衛兵さんが告げた言葉はあたしが予想していた通りの言葉でそれを受けたあたしが頷きながら応じると年配の衛兵さんは穏やかな口調で質問を始めた。
「見た所大陸から来た旅人の様だが、どこから来たのかね?」
「……ベルト国です、七王大陸の東端の国になります」
衛兵さんの質問を受けたあたしはこの国から最も遠く「武具乙女」の舞台でもある国の名を告げ、それを聞いた衛兵さんは少し驚いた様な表情を浮かべながら言葉を続けた。
「……それは随分と遠い事だな、マダやエリュート辺りかと思っていたのだが、それよりも遠いとはな……遥かな異国で難儀しておるのでは無いか?」
「それについては些か……ですが、あたしには彼女達がついてくれているので大丈夫です」
衛兵さんの言葉を受けたあたしは蓮華達を示しながら笑顔で応じ、それを聞いた蓮華達は嬉しそうに微笑んでくれた。
「……先程のハンター達もそなた達の武勇と人柄を褒めておったぞ、それとそのハンター達から隊商を率いるマリー殿がハンターギルドの支所に宛てた紹介状を持参しているとも聞いたのだが、拝見させて貰えるか?」
「はい、勿論です、此方になります」
あたしの言葉を受けた衛兵さんはそれに応じた後に更なる問いかけを行い、あたしは返事をしながらマリーさんのくれた紹介状を衛兵さんに手渡した。
紹介状を受け取った衛兵さんは封筒を見詰め、そこに施された蝋封を確認すると頷きながら言葉を続けた。
「うむ、間違いなくマリー殿の蝋封だな、これをハンターギルドに持っていけば滞りなくハンターとして登録されるであろう」
衛兵さんはそう言いながらあたしに紹介状を返してくれ、それから更に質問を続けて来た。
リーゼさん達の口利きとマリーさんの紹介状のおかげかそれからの衛兵さん達の質問は当たり障りの無い物で、あたしが出来るだけ丁寧にそれに応じていると衛兵さん達はあたし達を訳あって旅をしている貴族の箱入り娘と御付きの者達だと結論づけたみたいでもともと穏やかだった質問は最後の方にはかなり丁寧な物へと変化していた。
「……以上で質問を終わらせて頂きます、市内の治安は我々の巡検によって保たれておりますが、深夜に出歩くのはお控え下さった方が宜しいかと存じます」
「はい、ありがとうございます」
質問を終えた衛兵さんが丁寧な口調で告げた言葉を受けたあたしは笑顔で応じ、衛兵さんは穏やかな表情で頷いてくれた後に表情を引き締めながら口を開いた。
「……それと、先程のハンター達からも報告がありました昨夜お嬢様が遭遇されたアンデッドの襲撃についてですが、後日詳しい御話をして頂く事になると思われますので暫くはこの町に滞在して頂きたいのです」
「……はい、ハンターに登録して暫くはこの町を拠点に活動するつもりですので問題ありません、この事についてはギルドに報告して滞在先もギルドに伝えておくつもりです」
衛兵さんの真剣な口調の言葉を受けたあたしは頷きながら応じ、あたしの返答を受けた衛兵さんは満足した様に頷きながらあたし達の入城を許可してくれた。
「……それじゃあ行くよ、皆」
衛兵さんの許可を確認したあたしが蓮華達に声をかけると彼女達は頷く事で応じ、あたしは頷き返した後に彼女達と共に城門へと向かった。
レパント村を出立して2日、あたし達は作為的なアンデッドの襲撃を退けた翌日に目的地であるリッサの町に到着した。
リッサの町、この町は異世界に来たあたしが訪れた初めての町……




