剛刃の乙女
3人目の武具乙女が登場します。
探索に訪れた踏破済みのダンジョンの奥で思いがけず見付ける事の出来たギフトシンボル、それを見付けたあたしは急いでギフトシンボルが生じている石柱の所に駆け寄り、その様子を目にした蓮華と一美が戸惑いの表情と共に声をかけてきた。
「……リリカ様、如何なさいました?」
「……御舘様、どうなさったのですか?」
(もしかして、これが見えてるのって、あたしだけなの!?)
蓮華と一美の戸惑いの言葉を受けたあたしはそう胸中で呟きながら石柱に浮かぶギフトシンボルを見詰め、その後に視線を蓮華と一美に向けながら口を開いた。
「2人とも驚かせてごめんね、それと、もっと驚かせちゃうかもしれないけどあたしは大丈夫だから心配しないでね」
あたしがそう言う蓮華と一美は顔に浮かぶ戸惑いの色合いを更に濃くさせ、あたしは2人を安心させる為に笑顔で頷きかけてからギフトシンボルが浮かぶ石柱に向き直ってそれに向けて手を伸ばした。
「……お、御舘様の手が!?」
「……り、リリカ様!?」
「……2人とも心配しないで、大丈夫だよ」
あたしの手がギフトシンボルの浮かぶ石柱に入り込んだ瞬間、2人から驚きの声があがり、あたしが2人に声をかけながら手探りでギフトシンボルの中を探っているとその手が刀の鞘の様な物に触れたので、あたしはそれをしっかりと掴んで手をギフトシンボルから引き抜いた。
ギフトシンボルから引き抜かれたあたしの手には鞘に収まった刀が存在していて、あたしがその刀を見詰めると脳裏に刀の情報が流れ込んできた。
★★★へし切り・信姫 剣タイプ
覇王と呼ばれた英雄が愛用していた刀、棚に隠れた賊を棚ごと圧し切った事からこう呼ばれる。
豪放磊落な性格で砕けた口調で主に接し、戦闘の際は主に近付く敵をその剛刃で薙ぎ払う。
アビリティ
・攻撃時、確率でクリティカルが発生し、更に確率で火属性ダメージを追加 LV-1
・攻撃時、確率でダメージ+40% LV-1
スペシャルスキル
剛刃の加護
味方全体の攻撃力を40%上昇させ、更にクリティカル発生率も上昇させる。
あたしの脳裏に手にした刀、へし切りの情報が流れ込み、あたしはそれを確認した後に手の中にあるへし切りに視線を向けた。
へし切りは★★★キャラの中でも上位の攻撃力を持ち更に所持するアビリティやスペシャルスキルも攻撃面に特化しているキャラクターで攻撃力重視の部隊編成をするユーザーが好んで部隊に組み込んでいた。
基となった刀は織田信長の愛刀、へし切り長谷部でうつけ時代の信長をイメージしたラフな服装に身を包み、はだけた上着からサラシを巻いた美巨乳を大胆に覗かせた野性味溢れるお姉さんで服や柄には織田家の家紋である織田木瓜の紋が印されている。
「……リリカ様、その刀は?」
あたしがへし切りを見詰めていると一美と一緒に近付いて蓮華が戸惑いが混じった口調で声をかけてきて、それを受けたあたしは視線を2人に向けながら口を開いた。
「2人とも脅かしちゃってごめんぬ、この刀には蓮華や一美と同じ存在が宿っていて、どうもそれがある場所にはあたしにしか見えない印があるみたいなの」
あたしは2人にへし切りを示しながら説明し、それを受けた2人は安堵の表情を浮かべながら口を開いた。
「そうだったのですか、少し驚いてしまいましたが、新たな仲間が加わるのは心強いですね」
「これでより一層御舘様をお護りする事が出来ますわね」
蓮華と一美は興味深げな表情でへし切りを見詰めながらそう言い、あたしは頷いた後に2人を促してダンジョンの出入口へと戻り始めた。
「御舘様、私達の様な存在が宿った物の在処を御舘様のみが分かるのであれば、この様な踏破済みのダンジョンにも足繁く通ってみても良いかもしれませんわね」
「確かにそうだね、あたし達の戦闘をあまり見られない為にも、新たな武具乙女発見の為にも良い方法だね」
出入口に戻る途中で一美に声をかけられたあたしは大きく頷きながらその意見に賛同した。
蓮華や一美が倒したモンスターは光の粒子になってあたしの中に吸い込まれてヴェールになっているけど、この状況だとハンターになっても討伐したモンスターの部位を示さなければならない討伐系の依頼を受ける事が不可能で更に迂闊にそんな光景を他のハンターに見せてしまえば不審がられてしまう可能性がある。
一美の提案は踏破済みのダンジョンなら他のハンターに出会う可能性も低く、更にあたしにしか見えないギフトシンボルがあれば新たな武具乙女とも出逢えると言う一石二鳥の提案で、あたしは即座にその提案に賛同しながら2人と共にダンジョンを進んだ。
新たな武具乙女を宿した刀、へし切りを発見したあたし達は踏破済みのダンジョンから出ると近くの平原まで移動し、あたしは蓮華と一美が見守る中手にしたへし切りを掲げた。
「……それじゃあ、呼び出すよ」
あたしの言葉を受けた蓮華と一美は真剣な眼差しでへし切りを見詰めながら頷き、あたしは周囲を見渡してモンスター等がいない事を確認した後にへし切りを見詰めながら言の葉を紡いだ。
「秘められし魂よここに……サモン!」
あたしの紡いだ言の葉が周囲に舞うと同時に手のにあったへし切りが消失してあたし達の前に1人の美女が佇んでいた。
「……我の名は信姫、宜しく頼むぜ、お嬢」
ざっくりとしたポニーテールに纏められた燃える様な紅のロングヘアと鋭い光を宿した琥珀色の瞳の野性味溢れる美貌と適度に着崩したアイボリーホワイトの小袖と紺色の袴に包まれた長身の肢体、そして少しはだけられた小袖の襟元から覗くサラシに巻かれた美巨乳が印象的な美女、信姫は鞘に収められたへし切りを手にそう言うとワイルドな笑みを浮かべ、それを目にしたあたしは信姫を見詰めながら口を開いた。
「あたしはリリカだよ、こちらこそ宜しくね、信姫」
あたしの言葉を受けた信姫はゆっくりと頷く事でそれに応じ、それを確認した蓮華と一美も口を開いた。
「私は蓮華と申します、共にリリカ様を御護りして行きましょう、信姫殿」
「私は一美と申しますわ、宜しくお願い致しますわ、信姫さん」
「おう、宜しく頼むぜ、蓮華、一美」
蓮華と一美に声をかけられた信姫は涼しげに微笑みながら応じ、あたしは3人の傍らでその様子を見詰めていた。
踏破済みのダンジョンで入手した刀に宿っていた3人目の武具乙女、彼女は野性的な魅力に溢れた剛刃の乙女……




