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僕っ娘
「ねぇ、君はなんでいつも、僕のところに来てくれるんだい?」
雨が降らなさそうな曇り空を背景に、緑色の錆びた柵のフェンスに寄りかかりながら、先輩は僕に聞いた。雨ざらしの床は当然のように、綺麗ではない。
「それは、先輩に会いたいからですよ」
少しして、僕は答えた。
先輩は本に目を向けたままだ。
「僕じゃなくてもいいんじゃないかい――? この場所には、たくさんの人が来る」
そう言った先輩の周りに、人は一人も居なかった。だけど僕は、その意味がはっきりと分かっている。
「先輩がいいんですよ……わかってもらえませんかね……」
そう言うと、先輩はくつくつと笑った。
「嬉しいことを言ってくれるじゃないか……でもね、君は、僕よりも向き合うべきものがあるんじゃないかな……? 後ろに引くといい――」
そう先輩が言った。僕は引きたくなかった。先輩は僕をじっと見ていた。いつまでも、いつまでも、まばたき一つせずに。
不承不承、僕は引くことになった。一面の曇り空と、錆びたフェンスは吸い込まれるように小さくなって、黒い箱と、暗い部屋が僕を包んだ――
「僕とばっかり向き合っていないで、現実を見るんだ――」
先輩は瞬き一つせず、液晶の中から僕を見ていた。いつまでも、いつまでも。




