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夢
これは夢だ。
そう思った。静かで止まったような世界。
音も、風も感じない。内側から湧き出る生ぬるい感覚だけは生まれていた。
彼は、市街地の道路のど真ん中で空を仰ぎ見る。空は青くはなかった。血が一面に張り付いたように紅い。
夕日のような情緒は感じられない。
(早く覚めないかな・・・)
いやに生々しいが、夢特有の意識のはっきりしない感じがそこにあった。
不思議と体の自由が利く。夢だと気づいているからか。
ふと、道路の脇にあった電光掲示板が目に付いた。それはモザイクがかかったように
読み取れない。ただ日付が表示されていることはわかった。数字の部分だけが、まるで決まっていないかのようにぼやける。
より近くで確認するため、歩みを進めるが、世界にゆがみが生じてきた。
(そろそろ起きそうだ・・・)
そう思ったのは、ノイズが聞こえてきたからだ。
聞きなれたその音は、現実の世界のものだ。
世界が霞んでいく。意識が引っ張られていくなか、
ふと気づいたことがあった。
この道はいつもの通学路だと。




