鳴声
「みここここ」「こけけけけ」「けぺぺぺぺぺ」とコートを着ている少女らは奇妙な声を上げながら早朝の冬の街路を歩いて行く。
「…みこだけなんか変や」「は、はぁ?! うちなんかより けぺぺぺ っていってるゆずの方が変なんちゃうん?」「わ、うちは…その…」「みこーゆずいじめたらあかんで」「いじめ?! ゆず! これがいじめとかちゃうやんな? かなの言っとう事がいっちゃんおかしいよなあ?」「わ、分からへん…。だって、うち、聞いてなかったねん…」「どーいうこっちゃや!」「ほんまどーいうこっちゃやわ!」
少女はコートからイヤフォンのコードをチラリと見せる。そのコードを見た途端二人の少女の顔が豆鉄砲を食らったような顔をする。
「「ど、どーーーいうこっちゃやねん!!!」」
「わ、分からへんわ…」「いやいや。よーく考えてみ? なんであの時ゆずはあんなタイミングよく けぺぺぺぺぺ って言えたんや?」「確かにそーや。みこの言い分も少しあんなあ」「いやだからうちは音楽聞いててん…」「何の?」「ぽるのぐらふぃてぃやったはずなんやけど…」「あー! ハガレンな!」「いや…あっつに借りただけなんやけども…」「…あっつと言えば先輩と付き合ってるらしいな! 毎日ラブラブらしいでー」「ふーん」「そーなんや」「ええよなぁ…青春」「かなってそんなの望むんや」「そりゃー…生きてる間にチューとかしてみたいやん?」「…うちは今が楽しいからいいわ」「あ、う、うちも」「みこが??!! ほんまかいな…。まぁ確かに今は楽しいけどもチューとかしたいやん」「アンタは少女漫画の読みすぎやねん。ワンピース読みや」「何で海賊王目指さなあかんねん」「少年漫画こそ人生の全てが書かれてると思うねんな?!」「みこテンションあがってんなー。流石漫研副部長や」「んでかなは女バレか。なんや? アタックナンバァーワーンでもすんのか?」「せーへんわ!」「ゆずは…演劇部やったっけ?」「うん。次の文化祭農民役すんねん。やっと役貰えてんで」「へー…」「前まではその。木の役やってん」「何と粗末な」「でも、そのな! うん! 頑張ってんねん」「さすがゆずやなー」「うんうん」「せやな」
「……ん?」「なんやどうかしたん。みこ」
「さっきの声、誰なん?」