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恋物語  作者: ゆうこ
春の頃
9/77

ペナルティ

妙な空気を気にすることなく晴可先輩は私の前に立った。

にこにこにこ。

なんだ?この機嫌の良さは。

嫌な予感が胸を満たす。


「約束、覚えとる?」


晴可先輩はゆっくりと胸ポケットの花を抜いて、私の目の前に差しだした。

なんだ、これは。

悪い夢か?

まばたきを繰り返しても目の前の状況は変わらなかった。


「えーと。先輩?悪い冗談はよしてください。」


一歩退いて、あくまでも受け取る気がないのを伝える。

しかし晴可先輩は自分の花を私の胸ポケットに差すと、そのまま私の耳元に顔を寄せた。


「ペナルティ発動。雅ちゃんの花、俺にちょうだい。」


さーっと全身から血の気が引く音が聞こえた。

ペナルティ。

ここで使うのか・・・。


「はい?」


と目の前に手を差し出して催促する先輩。

この人は悪魔だ。


「あれ~?雅ちゃんは約束も守れやん人やったかな~。」


う~~っと唸る私に晴可先輩はしれっと言う。

ペナルティ。

これはペナルティだ。

好意は存在しない。

私は自分に言い聞かせて、胸ポケットから自分の赤い花を抜き出した。

悪魔と契約するとこんな目にあうんだろうか。

あれ?私、契約、したんだっけ???

首をひねる私の手からするりと赤い花を抜き取り、晴可先輩は上機嫌でそれに口づけた。


「それでな。」


茫然と見守る私に晴可先輩が言いかけた時、中央で派手な音が鳴り響いた。


「あ、行かな。雅ちゃん、ちょっと待っててな。」


軽やかに身をひるがえし、晴可先輩が去っていく。

あとに残された微妙な空気をどうしてくれる。


「だ、大丈夫?」


真田くんの心配そうな声で我に返った。

居並ぶ実行委員の微妙な顔にいたたまれない気分になる。


「う~。あんまり大丈夫じゃないかも。・・・先に帰らせてもらおうかな。」


待ってて、と言われたような気がするが空耳という事にしよう。


「うん。その方がいいよ。送って行こうか?」


真田くんの気持ちだけありがたく受け取っておこう。

とにかく今は一人になりたかった。


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