紙花の君
「ここにいたんですか、雅先輩。」
ふと人の気配を感じて顔を上げる。
「笹原くん。」
なんでそんなにニコニコしているんだろう。
「美味しそうに食べるんですね。」
「あ~、がっついてた?貧乏特待生だから仕方ないんだよね。」
「そんな意味じゃないですよ。えーと、無心に食べてるのが可愛いと言うか・・・。」
無心に食べてるのが可哀そう?
そんなに飢えてるように見えた?
笹原くんを見るとなぜか顔を赤らめモジモジしている。
そんなに貧乏人が珍しいのだろうか。
「あの・・雅先輩。」
モジモジしていた笹原くんが急に真面目な顔をしたと思ったら、私の目の前に白い花を差し出した。
「えーと・・?」
これはどういう謎かけだろう。
まさか私から星宮さんに渡してほしいとか・・。
「あの、僕、返してもらおうなんて思ってるわけではなく、僕の気持ちを知ってもらいたいだけで。」
「・・・返してもらえなくていいの?」
その任務ならなんとかこなせるかも知れない。
「!!そ、それは返してもらえるということですか!?」
「うーん、どうかなあ。私も聞いてみないとわからないけど。」
「聞く!?」
くすくす笑う声に目を向けると楽しそうな真田くんが立っていた。
「ちょっといいかな。
不毛な会話の途中悪いんだけど、他の連中も朝霧さんに用事があるみたいだから。」
見ると私たちの周りには苦楽を共にした実行委員たちが花を片手に立っていた。
「えっ!?みんなもなの!?」
私の叫びに真田くんが爆笑した。
よくよく聞けばそれは本当に私に向けられた花だったらしい。
思わぬ好意と笹原くんへの勘違い発言に顔が熱くなる。
「あ~、えーと皆さんありがとうございます。」
花を返すわけにはいかない。
きっとみんなもそういうつもりで差し出したのではないだろうし。
申し訳ない思いで頭を下げるとみんなわかっていると温かい笑みを返してくれた。
その時、聞き覚えのある声がした。
「あ~!みーつけた。探したで~。雅ちゃん。」
「晴可先輩・・・。」
誰かが小さくつぶやいた。