君とともに
ふと、目が覚める。
いつの間に眠っていたのか、ここはどこなのか、ぼんやりと辺りを見回す。
「目、覚めた?」
すぐ近くから静かな声が聞こえて、私は晴可先輩の腕の中にいる事に気がついた。
「はるかせんぱい?」
なんだか舌が回らない。
ふわふわした頭の中、何がどうなっているのか考える。
お布団の中、あったかくて気持ちいい。
「俺もちょっとだけ寝てた。久しぶりに熟睡したわ。」
部屋の中は夕暮れの色に染まっている。
ここは、晴可先輩の部屋?
私は、どうなったんだっけ。
「大丈夫?」
ぼんやりする私の顔を晴可先輩が心配そうに覗きこむ。
その顔を見た途端、私の心臓がうるさく騒ぎだす。
あれ?これってどういう事?
先輩のベッドでくっついて寝てるって、なんで!?
慌てて晴可先輩の腕から抜け出そうとするが、逆にもっと深く抱きこまれてしまった。
「ふぐっ!へんふぁい・・・。」
口も鼻も先輩の胸に強く押しつけられて、苦しいんですけど。
「雅ちゃん。ごめんな。俺、馬鹿やから。」
ぎゅうぎゅう私を抱きしめながら、晴可先輩はつぶやいた。
「大事やのに、傷つけるような真似して、ほんとにごめん。嫌われても仕方ないと思う。」
いや、だから、ちょっと腕を緩めてもらわないと、話もできないから。
私が本当に晴可先輩の事を嫌いになんて、なれるわけないのに。
そりゃあ、今回は拗ねましたよ?
でも、こうやって抱き寄せられてしまったら、抵抗できないくらい、大好きなんだから。
「雅ちゃん。」
晴可先輩の腕が緩んで、やっと顔を上げる事ができた。
途端に視界を埋め尽くす晴可先輩の顔に思考が停止する。
その顔には愛おしいという気持ちが溢れていて。
やだやだ、その半端ない色気はなに!?
むりむりむりむり、ぜったいむりです!!!!!!!
「俺の事、嫌いになってもいいから、もう一回俺の事、好きになって。」
「!!」
「逃がしてやろうと思ったけど、やっぱり無理みたいやから。・・観念して?」
「!!!!!」
絶句する私のくちびるを晴可先輩は思う存分堪能したのだった。
窓の外はいつの間にか暗くなっている。
私は晴可先輩の腕の中で幸せをかみしめていた。
「雅ちゃん、これからも俺とおることで、怖い目に合わしてしまうかも知れやんけど、俺、精一杯守るから。命に代えても雅ちゃんの事守るから。必ず幸せにするから。ずっと一緒にいてほしい。」
晴可先輩の低い穏やかな声が、私の体を震わせる。
私も一緒にいたい。
それがどんな運命だったとしても。
「ひとつ、お願いがあります。」
私は晴可先輩の胸から顔を上げて、その瞳をしっかりと見つめた。
「私のために自分を犠牲にしないでほしいんです。」
「雅ちゃん?」
晴可先輩が不思議そうな目で私を見る。
「晴可先輩には私を守るためだけに生きてほしくない。晴可先輩は晴可先輩のために生きてほしい。ただ私は何があっても先輩と一緒にいたい。それが私の幸せです。」
「雅ちゃん・・。」
「幸せは、誰かに与えてもらうものじゃないと思うんです。幸せは、自分の中に自然に生まれるもの。私は晴可先輩と一緒にいられれば、それだけで幸せだと感じるんです。だから、晴可先輩も私と一緒に幸せになってほしい。」
「うん・・・。」
晴可先輩のキスが顔じゅうに降ってきて、目を閉じる。
途端に押し寄せる睡魔。
今日は色々あったからな。
ちょっと疲れたかも。
こらえきれないあくびが出た。
「ほんま、雅ちゃんには敵わんわ。もう少し寝な?」
私は頷いて晴可先輩の胸に顔をすり寄せる。
こうしていると晴可先輩の匂いに包まれて気持ちいい。
このまま時が止まればいいのに。
晴可先輩が私の背中をあやすように、優しく叩いてくれる。
眠りたくない。
いつまでもこの穏やかな温もりを感じていたい。
私の足掻きも虚しく、心地よい睡魔が私を浚っていった。




