誘拐2
誘拐と言うから何かと思ったら、木田先輩と美月さんのお見舞いに行き、お昼を食べて寮に帰ってきた。
「じゃあ、これで。お昼ご馳走様でした。」
頭を下げて、やりかけの料理に戻ろうとすると、がしっと腕を掴まれた。
「木田先輩?」
「まあ、ちょっと待てよ。」
「美月さんに付いててあげなくていいんですか?」
「正月だから、今日は家族水入らずだそうだ。」
「だからって、私にかまわないで下さいよ。」
「まあまあ。俺、けっこうお前が気に入ってるんだから。」
「はあっ!?」
木田先輩はなぜか男子寮に私を引っぱりこんだ。
やめてほしい~。
こんな事ばれたら、私停学か退学になっちゃうんじゃない!?
「大丈夫大丈夫。だ~れもいないから。」
「そういう問題じゃ・・・。」
ばたん。
部屋のドアが閉まった。
「なんなんですか?いい加減に・・・。」
私の腕を掴んだままの木田先輩が、腕をぶんと振った。
「うぎゃっ!!」
そのまま私は木田先輩のものであろうベッドに吹っ飛ばされた。
「なにする・・・!!」
起き上がろうとする私の上に木田先輩が素早くまたがった。
これ以上体を起こすと木田先輩の顔に激突しそうになって、私は固まる。
「・・・。」
私の顔をじいっと見つめる木田先輩の顔には、何の感情も浮かんでいなかった。
怖い。
不意に恐怖が私の体を支配する。
「お前さ、ほんとに美味そうだな。」
「!!」
その抑揚のない声に私の肩が跳ね上がる。
「さすがに美月は食う訳にはいかねえだろ。だけどさ、久しぶりに血を舐めたら、無性に食欲刺激されちまってさ。お前は誰のものでもないんだし、もう晴可にボコられる心配もねえ。いいだろ?」
「・・よくないです。こんな事、美月さんが知ったら、悲しみますよ。」
木田先輩の顔から目を逸らさず必死で睨みつけるが、声が震えるのは止められない。
「そそるな~。そんな顔したら、男煽るだけだぜ。」
じりじりと後退する私とその距離を難なく詰める木田先輩。
こわいこわいこわい。
私の頭の中に警鐘が響き渡る。
背中が壁についた。
もう逃げられない!!
「や・・だっ。」
私は目をギュッと瞑って顔を背けた。