不在
いつも読んでいただいてありがとうございます。
今回からしばらく展開がシリアスになります。
甘い展開を期待されていた方はごめんなさい。
しばらくお付き合いいただけると嬉しいです。
学園祭が終わり、しばらくしてから星宮さんは静かに学園を去った。
久しぶりの一人部屋は静寂に包まれている。
淋しくないと言えば嘘になるだろう。
でも、彼女との繋がりを、私は確かに感じている。
もしも、このまま永久に会えなくなったとしても、星宮さんは私の中にずっと存在するだろう。
意外なのが真田くんだった。
どちらかというと星宮さんの牽制役だった真田くんは、肩の荷が下りたはずなのに、なんだか元気がなかった。
「おはよ。朝霧さん。」
星宮さんがいなくなってから、真田くんはよく私に声をかけてくれる。
気を使ってくれているんだろう。
今朝もどこかぼんやりした様子の真田くんが、ふと気がついたように目を見張った。
「あれ?今日は晴可先輩来てないの?」
「うん。そうだね。今朝は食堂にも来なかったし、教室にも現れないね。」
「ふーん。珍しい。何か用事かな。」
真田くんがぼんやりとつぶやいた。
確かに、あの学園祭の忙しさの中でも、朝食の席だけは外さなかった晴可先輩だ。
何かあったのかも知れない。
休み時間に幸田くんに聞いてみよう。
「朝霧さん。面会よ。」
のんびり考えていたら、一志さんに呼ばれた。
入口を見ると、幸田くんが手招きしていた。
「授業、始まっちゃうんだけど。」
つぶやきは笑顔で黙殺された。
連れていかれた生徒会室には会長、副会長が揃っていた。
けど晴可先輩の姿はない。
その事実が私の心に不安の影を落とす。
「呼びだして悪いな。」
会長は私にソファーを勧めてくれた。
「来てもらったのは晴可の事でだ。」
膝の上で軽く組んだ指先からすぅっと血の気が引いていく。
晴可先輩に、なにかあった?
「細かい事は言えないんだが、晴可が厄介事に巻き込まれた。それであいつは実家に戻っている。」
「厄介事?」
「そうだ。だが安心しろ。すぐに解決する。俺も、宗春も、そういう事にはよく巻き込まれるんだ。」
「・・・はい。」
「ただ、晴可にはお前がいる。」
「・・・。」
「自覚してるか怪しいが、お前は晴可のウィークポイントだ。」
「・・・。」
「だから、絶対動くな。何があっても、平常通りの行動をしろ。」
「はい。」
会長はじっと私の目を見た。
その色に、晴可先輩に振りかかった事態が深刻なものなのだと確信する。
ざわつく心を必死で押さえつけ、私は了承を伝えた。
私に出来る事はないのだろう。
私に出来るのは、晴可先輩の邪魔にならない事だけ。
ギュッと握った両手が膝の上で震える。
不意に会長の目が優しく細められた。
「心配だろうが、晴可を信じて待っていてやってくれ。あいつなら大丈夫だから。」
「はい。」
「いろんな噂が飛び交うだろうが、惑わされるなよ?」
「はい。」
ポンポンと、会長に頭を叩かれ、不覚にも私は泣きそうになった。
ぐっと奥歯を噛みしめ、それをこらえる。
早く、晴可先輩に会いたい。
こみ上げる想いに押しつぶされそうだった。




