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恋物語  作者: ゆうこ
冬の頃
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お別れ

京香が渋々といった様子で帰っていき、あとには私と木田先輩が残された。

木田先輩と会うのは、球技大会以来だ。


「お久しぶりです。」


あの事件のあと、怒り狂った晴可先輩と木田先輩がどうなったのか、ずっと気にはなっていたのだが、校内で木田先輩を見かける事はなかった。

まさか闇に葬られたのではと、心配していたのだが無事だったようだ。


「おう。なんだ?その顔は。」

「いえ。どこかに埋められたのではないかと思っていたので。」


思わず本音を言うと、木田先輩が微妙な顔をした。


「お前、晴可の事、なんだと思ってるんだ?」

「・・・。」

「まあいい。お前に近づくと晴可がいい顔をしないのは事実だからな。心配するな。奴とはちゃんと話をしたから。」


良かった。

そういえば、呼び方が貴島から晴可に変わっている。


「それでだ、今日はお前に礼を言いに来た。」

「礼?」

「お前の言う通りに探してみた。そしたら見つけた。」

「見つかったんですか?」

「ああ。訳も聞いた。それでだ。そいつの事情も聞いて、しばらくそいつのそばにいることにした。」


そいつ。木田先輩の素っ気ない言葉の中に特別な響きが混じっていたのは気のせいではないんだろう。


「で、しばらく休学することになった。その前にお前に礼を言いたかったんだ。ありがとう。」

「いえ、そんな。」


急に真面目な顔をして頭を下げられると、戸惑ってしまう。


「危ない目に合わせてしまってすまなかった。でもお前に言われたおかげで、俺はあいつを永久に失わずに済んだ。」

「間に合ったんですね。」

「ああ、とりあえずはな。」


木田先輩は苦い笑みをこぼした。


「晴可は面倒な奴だが、お前を想う気持ちは本物だ。重いだろうが受け止めてやれ。」

「・・・はい。」


それから木田先輩と別れて、教室に戻り、粗方終わっていた片づけを手伝った。


「どうだった?晴可先輩。」


星宮さんが悪びれもせずに話しかけてきた。


「どうって・・・。」

「ほんっと、晴可先輩って裏切らない人ね~。まあ、これで私も安心して雅ちゃんを任せられるわ。」

「?」

「私ね、転校するの。」

「え?」

「仕事の都合で。これまでも転々としてきたんだけど、今回はちょっと短かったかな~。でも濃密だった。人生の中で大切な出会いが沢山あったから。」

「星宮さん。」

「雅ちゃんと晴可先輩を引き合わせたのは私みたいなものだったから、心配してたんだけど。晴可先輩も前回の暴走で懲りたみたいだから。もう安心ね。」

「まさか、わざとあの服。」

「晴可先輩、雅ちゃんには怒ってなかったでしょ?」


う~~。あんな格好をさせて、晴可先輩がどこまで暴走を我慢できるか計っていたのか。


「おめでとう。結婚式には呼んで?友達代表で挨拶するから。」


しれっと笑う星宮さんを見ていたら、なんだか気が抜けてきた。

なんだってこの友人はこんなにお節介なんだろう。

こんな無愛想な私なのに。

突き放しても突き放しても、つかず離れず、一緒にいてくれた人。

頑なだった私の殻を、一番最初に破ってくれた人。


「わかった。連絡先、教えてね。姫。」

「!!!!」


星宮さんの目がまん丸に見開かれたと思ったら、ぎゅうぎゅう抱きしめられた。

く、くるしい。

星宮さん、意外に力があるのね・・・。


「雅ちゃん、やっと名前呼んでくれた・・・。うれしい。」


分かったから。

離して・・・。



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