発覚
ホールには客が数組いた。
目的のテーブルにコーヒーを運ぶ。
キッチンに戻ろうと回れ右をした時、窓際のテーブルに座るガラの悪そうな4人連れに、男子スタッフが何か話しているのが目に入った。
なんだか嫌な予感がして大きく迂回しようとした時。
「俺、この子でいいや~。」
「!!!?」
いきなり4人組の1人が私の腰をさらった。
「なっなにするんですか!?」
不意打ちを食らって、私はそいつの膝の上に座らされていた。
なんなの!?これ!!
完全になにかまちがえてる!!
「いや~。可愛いな~。俺、どストライク!一緒に遊びに行こうよ~。」
振りほどいて立ちあがろうとするが、腰にガッチリと回された手が外れない。
男子2人が慌てて引きはがそうとしてくれるが、一緒にいた連れがそれを邪魔する。
「そのつんとした顔もいいな~。俺の前だけでちがう表情、させてみたいな~~~。」
なんだ、そのエロい顔は。
思いっきり引いている私に、そいつはにやけた顔を近づける。
「俺と付き合ってよ。楽しい思いさせてやるぜ。」
やめてください。
マジ嫌です。
思いっきり眉をしかめて顔を反らす。
そこの男子、早くなんとかしてよ。
「ねえねえ。黙ってないでなんとか言ってよ。」
早く離せと言おうとした時、私の体がふわりと浮いた。
続いて聞こえるドカンバコンという音。
目の前に見慣れた金ボタン。
あ~・・・。
「なにしてんの。お前ら。」
それは男子たちに言ったのか、4人組に言ったのか。
心臓が凍るような冷たい声。
「よその学祭に来て、好き勝手したらどうなるか、お前らちゃんと教えたれよ?」
男子たちですか。
4人組は応援に来た男子たちによって連れ出されていく。
「それで?なんで雅ちゃん、そんな格好しとんの?」
あ~。今度は私か。なんででしょうねえ・・・。
晴可先輩のまとう重い空気に私は目を泳がせる。
「真田?説明してもらおか?」
「・・申し訳ありません。」
真田くん、いつの間にかいたんだ。
見ると蒼白な顔の真田くんが頭を下げていた。
晴可先輩は黙って制服の上着を脱ぐと、私の肩にかけた。
ずっしり重いそれは私の膝上までをすっぽり隠してくれた。
「姫ちゃん?雅ちゃんの着替え、どこ?」
いつの間にか、星宮さんも来ていた。
「はい。どうぞ。」
星宮さんが紙袋を差し出す。
用意がいいですね。
「姫ちゃんも思いあがってたら痛い目に合うで。」
「だって、騎士を信じてたもの。」
寒い空気の中、星宮さんはにっこり微笑んだ。
しばらく二人の間に見えない火花が散っていたのは、私の気のせいだろうか。
「・・・雅ちゃん、行くで。」
晴可先輩に肩を押されて、私は教室を出た。
ひらひらと手を振る星宮さんに悪魔の尻尾が見えた気がした。