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恋物語  作者: ゆうこ
冬の頃
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メイドさん

学園祭当日。

日頃は立ち入りが禁止されている一般客も混ざり、学園内はにぎやかだ。

よろしくない者が紛れてくる事も多いので、生徒会はセキュリティチェックに忙しい。

そんな中、開いたばかりの我がクラスの喫茶に晴可先輩はやって来た。


「雅ちゃーん。久しぶり~。」


私が顔を出すなり、晴可先輩は情けない顔をして抱きついてきた。

ひ~、やめて~。人が見てるでしょ~。

声も出せず、ムガムガともがくが晴可先輩は全く気にしない。


「あ~、もう。全然雅ちゃんが足りやん~。」


周囲の視線を完全に無視して、晴可先輩は私の頭に頬ずりした。

たすけて~~~~。

心の叫びが聞こえたのか。


「もうっ。なにやってんの!?晴可!!2班の連中が隊長がいないって騒いでたよ!?他校の生徒も一杯入ってるんだから、ちゃんと持ち場にいてよ!!!!」


幸田くんの声だ。


「あ~。もうばれたか。全然足りやんわ~。睦月~。見逃して~。」


晴可先輩の手にもっと力がこもる。

くるしい。

見逃さないで、幸田くん。

回収をお願いします。


「今日一日の辛抱だよ?何事もなく終われば、朝霧ちゃんだって何かご褒美くれるんじゃないかなあ。」

「えっ!?ご褒美!?」

「晴可は何がいいかな~。一日デートでもいいし、なんでも聞いてくれるっていうのもアリかな~。」


ちょっと!?幸田くん!?

私が声を出せないのをいいことに何を言ってるんですか!?


「え~~~。そんなんどうしよう。困るやん~~~。」


そう言いつつ、晴可先輩の腕が緩んだ。

幸田くんはそれを見逃さない。


「朝霧ちゃんは約束を破るような子じゃないよ。晴可。」

「一体何の約束でしょう!?」

「じゃあ、俺行ってくるわ。雅ちゃん、変な奴についてったらあかんで。」


先輩はぱっと体を離して極上の微笑みを私に向けた。


「ほらほら、行くよ~。」

「真田、分かってるな。」


幸田くんに引きずられながら、晴可先輩が真田くんに声をかけた。

さっきとはちがう、声の色。

真田くんが強張った顔で、はいと頭を下げた。


雅ちゃーん、待っててな~と言う声が遠のいていく。

何の辱めなんだろうか・・・。

はぁぁっと肩を落とす私の前に星宮さんが立った。


「じゃ、よろしく。」


その手に紺地に白いエプロンがまぶしいメイド服を持って。


この学園は美男美女が多いというのは有名な話である。

全寮制の学園生と基本的に接点のない他校の生徒はこの日を心待ちにしているらしい。

普段、なかなか目にすることのできないアイドル並みのルックスを直接見るもよし。

運がよければ、言葉を交わす事も出来るだろう。

もっと多くを望む者たちは、自分こそが彼らの運命の人になるのだと意気込んでいた。

なのでイケメン執事と美少女メイドの喫茶室は思った以上の大繁盛だった。


なぜかメイド服に着替えた私たち裏方もスカートのすそを気にしながら注文をこなしていた。

喫茶で出すのはコーヒー、紅茶、カップケーキにシュークリームだ。

開店時間は10時から3時まで。

一般客の出入りも3時までで、その後は一時間の休憩をはさんで三年生の劇を観賞する。

鑑賞後は校庭に出て、後夜祭だ。

後夜祭では校庭にぐるりとテントが立ち並び、有名シェフが監修したご馳走が提供される。

それを楽しみにひたすら働いた。


ふと時計を見ると午後2時。

注文のあったコーヒー2つを所定の位置に置いたが、なぜかホールスタッフが取りに来ない。

客足も少なくなり交代で休憩をとっているからだろうか。

それでも放っておいたらコーヒーは冷めてしまう。


私は自分のスカートを見下ろした。

ひざより遥かに短いそれで人前に出ていくのはためらわれる。

でもそんな事を言うのは甘えのような気もして、私はコーヒーのトレイを手にした。

この格好でホールに立ってくれている子もいるんだし。


「ちょっとこれ、運んでくるね。」


裏方の女の子に声をかけ、私はキッチンスペースを出た。

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