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恋物語  作者: ゆうこ
冬の頃
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学園祭

「はいっ。これ、雅ちゃんの分ね。」


学園祭を明日に控えた忙しい空気の中。

上機嫌の星宮さんが紙袋を掲げた。


「私の・・・?」


不審に思いながら、中を覗いた私は絶句した。


「ちょっ・・・!?」

「可愛いでしょ?」


にこにこにこ。

星宮さんは満面の笑みだ。


「でも話し合いで私は裏方ってことに。」

「なんだけど、やっぱり女子みんなでお揃いがいいなって事になって。加納さんたちも気に入ったみたいで、ぜひって言うし。」


本当だろうか・・・。

私は袋の中身を取り出した。


「スカートみじかっ!!」


これは無理でしょう!?


「あのね、星宮さんだってこれがマズイって分かってるでしょ?」


にこにこにこ。


「星宮さんだって無事では済まないかも知れないよ?」

「私は大丈夫。」


やけに自信たっぷりの星宮さん。

怒った晴可先輩を知らない訳ではないだろうに。


「それに真田くんだって、絶対責任問われるよ?」


クラス委員である真田くんは今回、私の扱いには非常に心を砕いていた。

それは絶対、晴可先輩の意向があるに違いない。


「あ~。うん。まあそれは、彼の宿命という事で。」

「はあ!?」


時々、星宮さんは超絶美少女の顔をしたまま、すごい事をさらりと言う。


「とにかく着てみて。お直しがいるかも知れないし。」


*************************


「わー、可愛い~。」


星宮さんの一言を合図に、女子がわらわらと集まってくる。


「いい!!朝霧さんが一番似合ってるかも!?」

「ぴったりだね~。お直しいらないね。」


騒ぎに男子が数人、開けっぱなしの入口から覗きに来るが、みんなギョッとした顔でそそくさと逃げていく。

確かに直視に耐えられない格好かも知れないけど、地味に傷つくな~。


明日は学園最大の行事、学園祭だ。

この一カ月、各クラス総力を挙げて準備にまい進してきた。

クラスの出し物は学年で決められており、一年生はゲームか物品販売、二年生が飲食物、三年生は演劇となっている。

私たちのクラスは話し合いの結果、喫茶をすることになったのだが。


「普通の喫茶じゃつまらないから、男子は執事で女子はメイドになろうよ。」


と言う星宮さんの意見に、クラスは妙な方向へ盛り上がりを見せていった。

正直、私は興味ない。

割り振られた役割をこなすだけと思っていたが、さすがにメイドさんはまずいだろう。

真田くんも全員が扮装をする事に難色を示し、裏方は制服のままでいいと確約をもぎとっていたのだが。

実力行使。

メイド服に身を包んだ私を見る星宮さんの顔には、そう書いてあった。


「朝霧さん、明日の事なんだけど。」


制服に着替え、机を集めてテーブルクロスを広げていると、沈痛な顔をした真田くんが話しかけてきた。


「星宮さんがあんな手を使ってくるなんて、僕が甘かったよ。」

「・・・。」

「こうなったら何としてでも逃げ切るしかない。全力で頑張るから、朝霧さんも協力してね。」

「逃げ切るって・・・。」


着ない、という選択はないのだろうか。


「星宮さん、見ただろ?着ないって突っぱねても無駄だと思うよ。女子全員、味方につけてるし。」

「・・・。」

「大丈夫。まずは何をおいても、晴可先輩は朝霧さんに会いに来る。それまでは制服でいられるように星宮さんに交渉するよ。それからは僕の情報網を駆使して、先輩の動向を把握する。大丈夫。当日生徒会は忙しいし、こっちにはなかなか来れないはずだ。来た時には裏に隠れてもらって、朝霧さんは会場を見に行ったと言えば、探しに行ってくれるだろう。」

「・・・。」


そんな簡単にいかないと思うんだけど。

真田くんの悲壮な顔を見ると、何も言う事が出来なかった。






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