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恋物語  作者: ゆうこ
秋の頃
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球技大会

球技大会は全校トーナメント戦で行われる。

下剋上ありの戦いは毎年かなりの盛り上がりを見せる。

エアコン完備のはずの体育館は白熱した試合と、それを応援する熱気で満たされていた。


「姫ちゃん、朝霧ちゃん、調子どう?」


星宮さんと二人で二階の観覧席にいると、幸田くんがやってきた。

星宮さんがにこやかに応対する。


「両方ともまだ残ってるよ~。睦月くんは?」

「うちもまだ健在だよ。真田は?」

「さっきまで一緒にいたけど、試合中。」

「ふーん。あ、彬と晴可も今、下で対決してるよ。」


知ってます。

二つ向こうのコートから黄色い悲鳴が上がってますから。

会長がボールを持つと、晴可先輩がガードに走る。


「うわ~。あの二人マジだね。」


幸田くんがつぶやく。

晴可先輩が会長のボールを弾いて、走り出した。

キャーとギャーが混じった悲鳴の中、晴可先輩がそのままシュートを決めた。

すごい運動神経だな。

応援の女の子たちに笑顔を振りまき、晴可先輩は持ち場に戻る。

あんなに人気のある人が私の事を好きだと言った。

それに対してどういう答えを出すか、正直わからない。

晴可先輩の隣は最高に居心地が悪く、また最高に居心地の良い場所だから。

放っておいてほしいと思う反面、いてほしいと思う自分もいて、自分の感情にかなり混乱している状態なんだと思う。

なんで私なんだろう。

花園先輩は理由なんてないと言った。

でも思いは繰り返す。

なんで、なんで、と。


ぼんやりと考えているうちに知らず知らず、晴可先輩を目で追っていたんだろう。

不意に先輩と目が合った。


「!?」


なぜこの距離で、しかもこっちは大勢の観客に埋もれているはずなのに・・・。

私の狼狽をよそに晴可先輩は機嫌よく手を振った。


「さすが、晴可。この人数の中からよく見分けたな。」


隣で幸田くんがのんびりとつぶやいた。


「愛の力でしょ。」

「な、なんてこと・・・!」

「あ、雅ちゃん、そろそろ試合じゃない?」


星宮さんが私の抗議を軽くスルーして、電光掲示板を指差した。

私は補欠だけど一応近くで応援くらいはしないと。

仕方なく抗議を中断して腰を上げる。


「うん。じゃ、行くね。」

「僕も行くからそこまで一緒に行こう?」


一緒に立ちあがった幸田くんと肩を並べて、一階フロアに下りる。

これも私を一人で行動させないためなんだろうか。

なんだか申し訳ない。


「朝霧ちゃん、晴可と進展あった?」

「!?」


隣を歩く幸田くんに、何気に問われぎょっと目をむく。

幸田くんはいつも通り涼しい顔だ。


「いや。晴可は何も言ってないよ。けど朝霧ちゃん、露骨に晴可避けてるから。」

「・・・。」


絶対私、顔が赤い。

くすくすと幸田くんが笑った。

幸田くんが分かるって事は他の人たちにも気づかれてるんだろうか。

そうだろうな、きっと。


「大丈夫だよ?晴可は気が長いから。例え朝霧ちゃんが逃げても、捕まえるまで諦めないと思うし。」


どういう意味だ?

結局私に拒否権がないように聞こえるんだけど・・・。


「じゃ、がんばってね。」


幸田くんはひらひらと手を振って、歩いて行った。

がんばってって、試合の事なのかな。

それとも・・・。


私ははあっと大きなため息をついた。


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