表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋物語  作者: ゆうこ
秋の頃
36/77

木田先輩

ここからは雅視点です。

「雅ちゃ―ん。」

「あれ?雅ちゃん、おらへんの?」

「あ、晴可先輩。それが逃げられちゃったみたいで~。」

「なんでやろ~。」


なんでって、あなたたちといると目立って仕方ないからです。

今日は危機一髪、お昼ごはんのお誘いを回避できたようだ。

私は周りを気にしながら、人気のない裏庭へと移動する。

夏休み以降、私の周りに出没する晴可先輩。

いつの頃からか、私が晴可先輩の彼女だという噂が流れた。

その噂を打ち消すべく、なるべく距離を置こうとしているのに・・・。

星宮さんの協力の元、なぜかあのメンバーに拉致られ、晴可先輩たちと昼食をとる羽目になる日が続いていた。


なんか、やたらとみんな過保護なんだなぁ。

まるで何かから私を守るみたいに・・・。


今日はなんとか彼らの網をかい潜り、私は一人になれる場所へたどり着いた。

はぁ。

静かな日々が懐かしい。

私はチョコクロワッサンにかぶりついた。

うん、美味しい。

朝と夜は寮の栄養バランス満点の食事だから、お昼くらいジャンクなものが食べたい。

一気に食べて、紙パックの飲み物をズズッと飲みほして、私は気がついた。

ここに私以外の人がいることに。


「お前、大口開けすぎだろう。」


なんだか皮肉をちりばめた視線に嫌味な口調。

この人、見たことがある?


「どうもすみません。ご迷惑だったでしょうか。」


特に相手にするつもりもないので、ぺこりと頭を下げて立ち去ろうとした。


「ちょっと待てよ。お前、貴島の彼女だろ。」


貴島の彼女・・・。

瞬間、私の頭に交流会でのワンシーンが鮮やかに甦った。


『貴島によろしくな。』

3-2木田祐真。


「彼女ではありませんが。」


私が答えると木田先輩は口を歪めて笑った。


「なに言ってる?奴の匂いをぷんぷんさせて。」

「匂い?」


不意に祥子さんの言った、マーキングという言葉が甦る。


「お前、知らないのかよ。自分が奴のエサだって。」

「エサ?」

「知らないみたいだな。じゃあ、俺たちの正体は知ってるのか?」


私は首をかしげる。

そういえば祥子さんも言ってたな。

人とはちがう能力とか。


「俺たちは人じゃねえ。人外だ。」


私はぼんやりと目の前の先輩を見ていた。

じんがい。なんだそれ。


「なんとか言ったらどうだ?お前、とろいのか?」


この木田先輩、いちいち言う事がきつい。

ちょっとくらい驚いてもいいでしょうが。


「それで、人外ってなんですか?」


私の質問に木田先輩が一瞬、毒気を抜かれたような顔をした。


「俺たちの祖先は人ではないものと交わった。それによって人以上の能力を持つようになった。この学園は基本的に人外のためのものだ。貴島も生徒会も、学園の男はほぼ全員が人外だ。」

「人ではない・・。」

「俺たち人外は気に入った人間にしるしをつける。」

「しるし?マーキング?」

「そう。知ってるじゃねえか。お前が貴島専用のエサだってしるしだ。」

「エサ!?食べるんですか!?」

「そうだ。人間なんて、しょせん俺たちのエサでしかない。」

「・・・。」


ショックだった。

私は拳を口につけて考える。

つまりクラス委員のみんなもってことだよね?

晴可先輩も真田くんも、私の事をエサだって思ってた?

いやいやいや。

ちがう。

私は彼らとひと夏過ごしたけれど、彼らはそんな素振り、ちらりとも見せなかった。

友達だって、仲間だって、そういう風に私を受け入れてくれた。


「エサだなんて、信じません。」


私は目の前の先輩を睨みつけた。

確かに人ではない、と言うのは本当かも知れない。

それはなんとなく、納得できた。

でもそれとこれとは別だ。


「真田くんは私の友達第一号だし、晴可先輩は・・・・・。」


あれ?なんだ?言葉が出てこない。

晴可先輩は私の・・・なんだろう。

出会った頃からの晴可先輩の顔が脳内でリプレイされた。

軽薄な笑顔、私をからかう顔、心配そうな顔、穏やかな笑顔、そして私の指にくちづける顔・・・。

うわっ!!!

最後のは、なし!!!

なしだから!!!


「・・・なに赤くなってんだ?」

「ととととにかく!!彼らは私をエサ扱いなんてした事ありませんから!!!!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ