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恋物語  作者: ゆうこ
秋の頃
34/77

捕獲1

「ねえ、朝霧さん。」


声をかけられて振り向くと、同じクラスの背の高い女の子が立っていた。

一年でも同じクラスだった、バスケ部の名前は・・・。


「・・・志村よ。志村悦子。」


名前を思い出そうとしていると彼女から教えてくれた。

そんなに私の顔は分かりやすいのだろうか・・・。


「もう、一年半一緒なんだけど・・・。ま、いいか。あのね、ちょっと聞いていい?朝霧さんって貴島先輩と付き合ってるの?」

「!!!」


とうとう来た。

私は一気に青褪めた。

先輩が私にまとわりつきだして一週間。

いつかそんな噂が流れるのではと危惧していたのだが。


「朝もさ、私朝練で食堂早いでしょ。貴島先輩が一緒にいるのよく見るし、お昼もだし、放課後もお迎えだし。結構噂になってるよ。」

「そ、そうなんだ・・・。」

「でも朝霧さん、あんまり嬉しそうじゃないし。どっちかっていうと困ってるっぽい?だからほんとのところどうなのかなと思って。」

「付き合ってません。」


即答する。

志村さんは、ふーんやっぱり、と言って納得してくれた。

こうやって直接聞いてくれる人はいい。

でも噂は勝手な憶測と共に流れていく。

う~。どうしよう。


「でも貴島先輩は朝霧さんの事、好きなんでしょ?」

「うっ!!」


いや。それは。どうなんだろう。

確かに夏休みの間、私は晴可先輩の彼女の立ち位置にいたのかも知れない。

最後の日にはプロポーズまがいの事も言われたような気がする。

でも。

学園に戻って互いの立場を考えてみれば、それは夢だったんじゃないかと思えてくるのだ。

学園のアイドルスターの先輩とただの女子生徒の私。

ないない。

絶対ない。

晴可先輩はきっと夏マジックにかかっていただけ。

学園に戻ったらいつもの日常が待っている、そう思っていたのに・・・。


「朝霧さん、急に可愛くなったから恋してるんだと思ったんだけど、貴島先輩のせいじゃなかったのか。」


志村さんがつぶやいた途端、急に背後に強烈な冷気を感じた。


「それってどういう意味かな~?」


すぐ後ろで聞こえた声にぎょっと振り向くと笑顔の晴可先輩が立っていた。

いつの間に!?

っていうか先輩、目が笑ってませんよ。

すっごく怖いんですけど・・・。


「雅ちゃん、まさかだれか好きな人できたとか言わんよな?」


ぶるり。

悪寒が走る。

私はぶんぶん頭を横に振った。


「・・・ならいいんやけど?じゃあ行こか。」

「ど、どこへ!?もうすぐ次の授業が・・・。」

「えっと、志村さんやったっけ。雅ちゃん、気分が悪いみたいなんで保健室連れてくわ。先生に言っといて。」

「・・・はい。」


志村さんはぽかんと口をあけたまま頷いた。


「いやいやいや、先輩!?なに言ってるん・・・。」


肩を抱かれて連れていかれそうになるのを足を踏ん張ってこらえていると、晴可先輩がすっと私の耳元に口を寄せた。


「素直についてくる?それとも抱っこされたい?」

「!!!?」


私は晴可先輩を凝視した。

涼しげな顔をしている先輩。

でも背後に真っ黒な何かが見えるのはなぜだろう。

する。

絶対、この人はするつもりだ。


「・・・行きます。」


諦めてうなだれる。

こうして今日もまた私は晴可先輩に捕獲されてしまったのだった。


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