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恋物語  作者: ゆうこ
夏の頃
30/77

サプライズの正体

「先輩~。一体何人分買ってきたんですか?」


アツアツのたこ焼きを頬張りながら尋ねる。


「いや~。なんかお店の人が色々おまけしてくれて・・・。」


お店の人は女性ですね?


「みんながいたら喜ぶのに。」


バーベキューの時のみんなの食欲を思い出してつぶやくと、なぜか晴可先輩は目をそらせた。


「・・・雅ちゃん、俺と二人はいや?」

「?そういう訳じゃありませんが、この量、二人で食べられます?」

「・・・。」


黙ってしまった先輩は放っておいてたこ焼きを食べていると、横からお茶を差し出された。


「お茶、いる?」

「ありがとうございます。」


いたれりつくせりだ。

お茶を受け取った時、たもとに入れた物の重みに気がつく。

射的でとった微妙な顔のぬいぐるみ。


「これ、あげます。」


そういえば今日は晴可先輩の誕生日なのにもらってばかりだったな。

そう思って先輩にぬいぐるみを差し出した。


「えっ!?なに!?俺に!?」


ぬいぐるみを受け取った先輩は一人で盛り上がっている。


「誕生日プレゼントです。」

「いや~。うれしいなあ。雅ちゃんからプレゼントもらえるとは思てへんだ。ありがとう~。」


そんなにそれが気に入ったんだろうか?


その時、なんの拍子か、誰かの視線を感じた。

ぱっと振り向くが誰もいない。

自分の世界で盛り上がる晴可先輩は何も感じてないようだった。


「・・・?」


何度かそれを繰り返し、私は不意に閃いた。


「晴可先輩?幸田くんから何かもらってましたね?」

「!!なんで・・・!?」


私は食べ物で両手がふさがっている晴可先輩の懐に手を突っ込んだ。


「えっ!!ちょっ・・!!なに!?雅ちゃん!?あかんて・・・!!」


もがく先輩を無視して体ごと先輩の胸元に潜り込む。


「!!あった!」


カードを見て私はため息をつく。

そこにはでかでかと『朝霧 雅を独占できる券』と書いてあった。


「・・・。」

「なんでこんなので喜んじゃったんですか~?」


星宮さんならともかく、私を独り占めして何が楽しいんだろうか。


「こんなのって、雅ちゃん・・・。」

「大体、私の面倒なんて、晴可先輩くらいしか見てくれないでしょう?」

「え?あれ?それって・・・。」


晴可先輩の顔がみるみる赤くなる。


「?」

「雅ちゃん?俺は雅ちゃんの面倒を見とるつもりはないんやけど。」

「?」

「俺はただ雅ちゃんとおるのが楽しい。」

「はあ。私も楽しかったです。」


露店に屋台の食べ物、夜の空気に開く花火。

小さい頃から水泳一色だった私には初めてのことばかりだった。


「雅ちゃん、あのな・・・。」


晴可先輩が私の左手に触れた。


「俺は・・・。」

「あ~!!雅先輩、見っけ!!」

「晴可先輩もいた~!!」

「!?」


どこから湧いてきたのか男子たちがわらわらと集まってきた。


「わ~。晴可先輩~。旨そうですね~!!」


食べ物を奪い嬉しそうに分け合う後輩たちを茫然と眺める晴可先輩。


「なんで・・・。」

「あ~。晴可~。ごめんね~。」


幸田くんがにこにこと近づいてきた。


「睦月・・・。」

「でも、これ。ちゃんと見てよ。」


幸田くんが私の手からカードを取り上げ、晴可先輩に見せた。


「ほらここ。」


良く見るとカードの隅に小さい字で

『有効期限 本日午後8時まで』

と書いてあった。


「・・・詐欺やん~~~!!!」


花火会場に晴可先輩の声が響き渡った。



それからも毎日のようにイベントがあり、それを過ごすうちに晴可先輩の隣が私の定位置になっていた。

それはとても自然で、不思議に居心地のよい場所だった。

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