貴島晴可とプレゼント
いつも読んでくださってありがとうございます。
今回は晴可先輩視点のお話です。
花火は何も遮るもののないプライベートビーチからでもよく見えるが、花火会場に続く道に出る露店目当てで会場まで歩く。
カラコロと軽やかな下駄の音を響かせ、俺と雅ちゃんは最後尾を歩いていた。
手の中には彼女の小さな手。
嫌がるかと思ったが、一番後ろということで誰にも見られる心配がないせいか、雅ちゃんは大人しく俺に手をひかれている。
それもこれも雅ちゃんを呼びとめてくれた祥子のおかげだ。
いい姉を持って俺は幸せ者だ。
それにしても隣を歩く雅ちゃんの変貌ぶりには驚いた。
きのう、玉紀が誕生日プレゼントを楽しみにしてて~と言っていたが、これははっきり言ってやりすぎやろ。
玉紀と姫ちゃんに挟まれて玄関まで出てきた雅ちゃんを見て、一体何人の野郎どもが魂を抜かれてたか。
思い出すだけで胸のあたりがもやもやする。
大体、交流会あたりから雅ちゃんは秘かな人気があった。
実行委員の連中が揃って花を渡していたというのは後から聞いた。
それなのに当の雅ちゃんは全く自覚というものに乏しい。
この別荘でも、水着の上に羽織ったパーカーは脱いだらあかんと言ったのに、さらっと忘れて野郎どもの前で水着になるし。
そのまま姫ちゃんと無邪気に砂遊びしてるし。
あいつらがどんな目で自分を見てるのか、ほんと自覚してほしい。
まあ、水着になってと頼んだのは俺なんやけど・・・。
まあいい。
今日の俺はそんな小さい事はどうでもいいくらいご機嫌だ。
さっき、野郎どもの視線から雅ちゃんを隠すために無意識に動こうとした時、睦月に呼び止められサプライズプレゼントをもらった。
これがあれば今夜の俺は最強だ。
しかし・・・。
俺は隣を歩く彼女をちらりと見下ろす。
いつになく華やかな彼女は増えていく露店に興味津々という感じできょろきょろしている。
その目はキラキラ輝き、頬は少し赤みを帯びている。
玉紀~やりすぎやん~。
いつもすとんと下ろされている髪はゆるくまとめられ、細いうなじに落ちるおくれ毛が、その白さを際立たせている。
玉紀のにやにや笑いが頭に浮かぶ。
俺、理性、試されてんの?
俺は思わず片手で口元を覆った。
「なんか食べたい?でもこの人出やと食べながら歩くのは無理かなあ。あ、あれしやへん?」
俺は雅ちゃんの手を引いて、射的の店に入った。
一通り説明して見本を見せる。
雅ちゃんは頷くと真剣な顔をしてライフル型のおもちゃの銃を構えた。
ぽん、と軽い音と共にぬいぐるみような物が倒れ、雅ちゃんは嬉しそうに笑った。
可愛い!!
この笑顔を俺ひとりが見れたことに至上の喜びをかみしめる。
「?行きましょうか?」
はっと気がつくと雅ちゃんが不思議そうな顔で俺を見上げていた。
あんまりにやけていると冷たい目で見られそうなので、慌てて顔を引き締める。
「みんな、見えなくなっちゃいましたね。」
「うん。まあ、基本自由行動やしな。行先は一緒やから向こうで会えると思うよ。」
迷子になるといかんで、と言う俺の言葉に雅ちゃんは素直に右手を出した。
あ~。幸せすぎて怖い。
ありがとう!!誕生日!!
本当は雅ちゃん目線でさらっとしたものを用意していたのですが、感想で晴可先輩視点を、というのをいただいたら、突然晴可先輩がしゃべりだしました。
いかがだったでしょうか(*^_^*)