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恋物語  作者: ゆうこ
夏の頃
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浴衣マジック

誕生会が終わった途端、祥子さんと花園先輩に拉致されるように衣裳部屋へ連れてこられた。

問答無用で浴衣に着替えさせられ、化粧まで施される。

夜なのに化粧に意味があるのかと聞こうとしたが、異様にテンションの上がっている花園先輩を見て、諦めた。

そう、人間は諦めが肝心である。


鏡に映る私を取り囲んで、星宮さん、花園先輩、祥子さんは満足そうだ。

淡いクリーム色に赤いトンボ柄の浴衣に紅色の帯。

肩につくくらいの髪は巻かれて緩く結い上げてある。

顔には薄化粧。

確かにいつもの私ではない私がそこに立っていた。


「やっぱりこの柄、似合う~。」

「うん。まあまあね。・・・でももうちょっと色気があってもいいんじゃない?あの白地に黒のなんて良かったのに~。」

「だめですよ。玉紀ちゃん。浴衣だけでも刺激が強いのに、色気なんか出しちゃったら雅ちゃん、食べられちゃいますよ?」

「ああ。まあ、そうね~。」


花園先輩と星宮さんがなにやら盛り上がっている。

一体何の会話だろうか。

そう言う花園先輩は、黒地に紅色の花が大胆に咲く大人っぽい浴衣。

星宮さんの浴衣は白地にパステルカラーの小花が散って可憐だ。

二人ともいつもの何割増しかの超絶ぶりだ。

隣に立てば確実に霞む。

後ろを歩けば完全に消えられるかも。

そう思ったのに二人は私の両腕に腕をからめた。

なんの拷問だ、これ。


部屋を出て、エントランスに向かう。

男子たちはすっかり用意ができているようだ。


おおっとざわめきが起こったのは私の両側にいる二人のせいだ。

逃げないから両脇を固めるのはやめてほしい。

二人なら引き立て役なしでも充分すばらしいのに~。


「見事ですね。」


会長、副会長コンビが爽やかな笑顔でやってきた。

彼らも渋い柄の浴衣に身を包んでいる。


「二人ともかっこいいね~。」


星宮さんが返し、さらに増した美形オーラにくらくらする。

やっと二人が手を離してくれたのでふう、と一息ついて周りを見る余裕ができた。

男子たちもほとんどが浴衣すがただ。

ぽやんとした顔でみんなこちらを見ている。

私は関係ないのに、なんだか非常に居心地が悪い。

それもこれも余裕の笑顔を浮かべる超絶大美少女ふたりのせいだ。


むくれていると、ふと晴可先輩と話す幸田くんの声が耳に入った。


「はい、晴可。これサプライズプレゼント。」


その声に顔を向けると、幸田くんがカードのような物を晴可先輩に渡していた。

彼らももちろん浴衣だ。

なんにしろイケメンはどんな格好でもイケメンです。はい。


「これ!!いいの!?」


それを見た晴可先輩の顔がみるみる崩れていく。

せっかくイケメンだって褒めたのに、その顔はないだろう。

そんなにいいものだったのか。


「うん。晴可が一番欲しいものだと思って。」

「ほんまありがとう!!」


一瞬こちらを見た幸田くんと目が合う。

「?」

が、幸田くんはすぐに目をそらしてみんなに掛け声をかけた。


「さ~みんな揃った~?行くよ~。」


その声を合図にみんながぞろぞろと玄関を出ていく。

私もその波に付いていこうとした時、雅ちゃん、と祥子さんに呼ばれて振り返る。

手招きする祥子さんのところへ行くと、ニコニコ笑顔でかんざしを直してくれた。


「楽しんできてね。」

「雅ちゃーん。行くで~。」


晴可先輩の声に振り向くと、みんな外に出ていったようだ。

道もなにも知らないのだから置いていかれると困る。


「じゃ、行ってきます。」


祥子さんに手を振り、晴可先輩の元に走る。

おっと。

慣れない下駄に足元がとられる。

と思ったら、すいっとごく自然に晴可先輩に手をとられていた。


「こけたらいかんで。」


にこっと笑う先輩に手をひかれ歩き出す。

私、子供か・・・。



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