夜中の密談
はっと目を覚ます。
頭に響き渡るような心臓の音がうるさい。
そっと目をやると時計は12時を指していた。
星宮さんは隣のベッドで静かに寝息を立てている。
すぐには眠れそうにないので私はベッドを抜け出した。
水でも飲みに行こうと談話室に向かう。
柔らかい灯りの下、誰かが話をしていた。
「あれ?朝霧さん?どしたの?」
そこにいたのは真田くんと幸田くんだった。
「えっと、のどが渇いて。」
と言うと、幸田くんが冷蔵庫からミネラルウォーターを出してくれた。
「ありがとう。」
彼らも昼間の話を聞いていたはずなのに、ちらりともそんな雰囲気が感じられない。
真田くんが穏やかな顔で話しかけてきた。
「日焼け、大丈夫?体が火照ると眠りにくいよね。」
「真田くんが一番焼けてるね。」
「うーん。すぐに真っ赤になっちゃうんだよね~。今日は布団も痛いかも。」
なんでもない会話。
それに心底ほっとする。
私はペットボトルの蓋を開けて水を飲んだ。
ところでこんな夜更けに何をやってるんだろう。
私の視線に気づいた真田くんが困ったような笑みを浮かべた。
「えーとね。内緒にしといてもらえるとうれしいんだけど、明後日、晴可先輩の誕生日なんだ。」
「ふうん。」
「でね、何かサプライズを考えてるんだけど、なかなかいい案が出なくて。」
「そうそう。去年は蝶野会長が仕切って、全員女装してハーレム作ったんだよね。」
先代の会長の名を出して幸田くんが渋い顔で言う。
苦い思い出なんだね。
「晴可が喜ぶものか~。」
幸田くんがつぶやく。
晴可先輩って18才になるのか~。
私はぼんやり考えながら水を飲む。
「あっ!!」
突然、幸田くんが叫んだ。
「なに?いい案浮かんだ?」
真田くんが尋ねると幸田くんがこちらを見てニンマリと笑った。
「内緒。」
なんだ?
この笑顔。
悪寒が走った。
私は思わず眉を寄せた。