反撃
「今回、私のした事は不本意ではありますが、親衛隊の方々の誤解を受けるようなものでした。これについての制裁は甘んじて受けます。でも。」
私は目の前で硬直する加納さんをじっと見つめた。
「あなたのしたことは制裁ではありません。いじめです。」
私の言葉に一同は凍りついた。
「意図的ではないにしろ、私の今回の行為は確かに制裁に値するものだと思います。しかしそれに対する釈明の機会も与えず、一方的に悪だと決めつけ、その上身体的な危害を加えるなんて絶対に許されることではありません。」
「・・・。」
「次に親衛隊の存在意義についてお聞きします。親衛隊は何から何を守るためにあるのですか?」
「そっそれはあなたのように身の程もわきまえず晴可さまに近づこうとする不届き者から晴可さまをお守りするためよ。」
「・・・そうでしょうか。」
私は加納さんの後ろをぐるりと見渡す。
ボスは誰だ。
下っ端と話していてもらちがあかない。
「私から言わせれば、貴島先輩を独り占めしたい集団が、互いが互いを牽制するために存在しているように思えますが。」
「なんですって!?」
今まで傍観していた後ろの方々も顔色を変える。
加納さんの後ろにいた格上と思われる女子生徒が一歩前へ出てきた。
「私たち親衛隊は晴可さまが平穏に学園生活を送ることができるよう、困った行動をする人たちから晴可さまをお守りしているのよ!?」
「じゃあ、親衛隊は晴可さまのために存在しているということですよね?」
しまった。
晴可さまがうつった。
私はこほんと咳払いをした。
「もちろんよ!!」
「では、貴島先輩が本人の意思で特定の人物を好きになったら、皆さんはそれを排除しますか?貴島先輩の意思を無視して。それが例え自分自身だったとしても。」
「・・・。」
誰も反論しなかった。
誰もが先輩の隣に立つことを心から望んでいる集団。
反論できるはずもないだろう。
突然、悔しそうな顔で黙る親衛隊の後ろの方から楽しそうな笑い声が響いた。
「玉紀隊長。」
誰かが茫然とつぶやく。
さあっと分かれた人の間から豊かな栗色の髪をなびかせた美女が悠然と現れた。
これがボスか。
「晴可の親衛隊長をしている3年の花園玉紀よ。」
彼女は魅惑的な笑みを浮かべて私に美しいハンカチを差し出した。
「あなたの言う通りよ。悪かったわね。」
私は彼女の美しい目をじっと見つめた。
「今後、誰に対してもこのような事がないよう、徹底すると約束していただけますか?」
「もちろん。」
「ではこれで失礼します。ハンカチは不要です。汚してしまうだけですから。」
私は軽く頭を下げ、寮に戻った。
後ろでざわめく声が聞こえたが、もうどうでもよかった。
疲れた・・・。