制裁
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今回から雅ちゃん視点のお話に戻ります。
会場の外に出た私は大きく息を吐いた。
なんだかどっと疲れたような気がする。
私は重い体を引きずるような気分で寮を目指した。
寮の玄関がようやく目に入る。
ほっと息を吐いた瞬間、本日最大の危機が訪れた。
「朝霧 雅。待ちなさい。」
振り返ると10人ほどの女子集団が腕組みをして立っていた。
ああ、来た。制裁だ。
それにしても早い。
もう少しこの衝撃から立ち直る時間が欲しかったのに・・・。
先頭に立つのは同じクラスの加納さん。
交流会実行委員の座を奪われ、色々と言いたいことも溜まっていたんだろう。
口々に放たれる罵倒を浴びながら私は考えていた。
久しぶりに面と向かって投げつけられる酷い言葉は私の心を地味に傷つけていく。
正直きつい。
「聞いてるの!?」
聞いてますよ~。
でも私が地味顔なのはともかく、星宮さんをそそのかして実行委員になったとか、私が晴可先輩を誘惑したって決め付けるのは勘弁してほしいなあ~。
体も重いが心も重い。
反論したいけど、したらもっと長くなるんだろうなあ~。
なんだか考えるのも面倒になってきた。
「馬鹿にするのもいい加減にしなさい!!」
怒声とともに体に衝撃を受け、私の思考は停止した。
なんだ、これ?
ぽたぽたと頬を伝う冷たい感触。
目の前に空のバケツを構えた加納さん。
これが制裁?
私の中で何かが切れる音が盛大に鳴り響いた。
「な、何よ!?あなたのいい加減な態度がいけないんでしょう!?」
ずっと下に向けていた視線を上げ、加納さんをまっすぐに見る。
「言いたいことはそれだけですか?」
彼女の顔は若干青ざめていた。
周りの親衛隊の様子から見ても彼女の行為が行き過ぎているのは明白だ。
「と、とにかく!!晴可さまに近づくなんて身の程知らずもいいところよ!!今後一切晴可さまの周りをうろつくのは禁止よ!!」
「・・・。」
私はゆっくりと親衛隊の面々を見渡した。
他に口を開こうとする者はいないようだ。
「皆さんの意見はわかりました。」
「!!やけに素直ね。最初からそう言えば・・。」
「では私の意見を述べさせていただきます。」
目の前の加納さんはじめ親衛隊の面々が目をむいた。
「まず、皆さんの誤解を訂正したいと思います。は・・貴島先輩には私から近づいた訳ではありません。ましてや星宮さんを利用して実行委員になったという事実はありません。」
「そんな言い訳・・・。」
「次に先程の紙花の交換ですが、あれはペナルティを課せられただけであって恋愛感情は一切ありませんのでご心配なく。」
「ペナルティ?」
「誤解を与えたことについては謝罪します。・・・それから。」
私は額に貼りついた髪を無造作にかきあげた。
「親衛隊の在り方について一言、意見させていただきます。」
目の前の少女たちが一歩後退りしたのは気のせいだろうか。