表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

嵐の中

作者: もっちょ
掲載日:2012/08/26

  いったいぜんたいどうしてこうなった。


 人間には絶対に失敗できないときというものがある。例えば、告白とか。当事者の記憶にこれでもかと印象づけてしまうものにはできるだけのことをして臨むべきだと思う。綺麗な女の子と二人っきりになって言いたいことを全く言えなかったなんて悔やんでも悔やみきれないものになることうけあいだ。


 そうして私の状況なのだが。順を追って整理したいと思う。私はごく普通のちょっと無口な女子高生Aである。混乱しやすい性質なのか、よく考えないと言いたいことに自信がもてないのだ。私のペースがあるってだけ。そう、朝なのよ始まりは。


 

 その日は朝から台風が近づいてきていて風が生温かかった。風が強くなるんだったら傘なんて持っても意味がないし、タオルを持っていけば濡れても乾くだろうと思って手ぶらでドアを開けたのよね。そしたら思いのほか台風接近が早くて帰宅命令が出ちゃったのだ。ぼんやりしていたら窓ガラスの向こうは重たい色の雲がどんよりと覆っていた。教室にいても風は強くなるばかりだと、諦めて立ち上がる。ビニールで巻いた本を抱えていざ出発というところで足音が聞こえた。しかも二組の。


 ぼんやり立っていると彼らは気づかずに通り過ぎていった、靴箱の方向へ。彼らに見つからないようについていく。ぬれて帰るのがはずかしいので彼らが出て行くまで待機である。階段の踊り場で彼らの後姿を確認する。不意に片方がもう一方に近寄っていく。彼らの顔が近づいて近づいて、ゼロになった。・・・キスした。私は目を疑った。驚きすぎて声が全く出なかったが普段無口なことでこんなにありがたかったことはない。とっさに口を押さえる。何が何でも彼らに気づかれてはいけない。男同士で、男と男が人目につく場所でやらかしたことしくさっていても、私が関わらなければいい話である。そうだ、目をそらすんだ。気配よ無くなれ!背中に汗を感じながら短い人生これまでにないほど慎重に後ずさった。何かに耐えるように蹲っていたら腕時計の長針がきっちり90度動いていた。立ちくらみを感じながらも階段を下りる。がらんとした靴箱、校舎の向こうは非日常の荒れ模様。私は回らない頭を抱えてふらふらと外に向かって歩みだした。


 

 案の定家についた私は熱を出し3日間も寝込んだ。共働きの両親は看病できないと申し訳なさそうにしていたが、自業自得なので全然構わなかった。むしろ風邪さまさまである。あの日のことは思い出すとちょっと腹が立ってくる。男同士のキスシーンなんて、はっきり言って見たくなかった。よりにもよって片方が片思いの相手だったのだ。失恋しているのにショックの度合いが許容量を振り切っているせいかどう収めていいか分からない。誰かに相談することもできず(だって好きになった男が他の男とキスしてたって言えるか!)休みの間中途方にくれたのだった。


 

 窓の外はくっきりと青い空と目に痛いような白い雲が広がっている。授業に身が入らないのは私だけではないようだが、心の台風はまだ温帯低気圧になってくれないみたい。困ったなぁ。

 どうやら嵐に巻き込まれてから今まで気づかなかったところに目が行くようになり、いろいろ発見してしまったのだ。前の席の女性徒と化学の男性教師が目で会話していたり、保健室にやたら通う野球部部員がいたり(養護教諭は男である)、本校初の女生徒会長が女帝だったり(これも罵倒している女帝と目を潤ませて喜悦な表情の男性生徒会役員という図を目撃)など。



現状:嵐の中・・・どうしよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ