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バグ検証実況者、VRMMOのバグを検証していたら隠し職業《システムブレイカー》になりました  作者: もりのなか


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第17話:主人公の宣言

 1.凍結された時間のなかで


 『北限の霊峰』の頂上。空中で静止した雪の一片一片が、運営の「強制介入」による緊迫感を物語っていた。カイトの目の前には、視界を埋め尽くさんばかりの真っ赤なシステムウィンドウが浮かび、無機質な警告音が鳴り響き続けている。


【最終警告:ただちに検証行為を停止し、安全なエリアへ移動してください】

【拒否した場合、アカウントの一時停止を含むペナルティを科す可能性があります】


「停止、か。……ずいぶん一方的なお願いだね」


 カイトは、静止した世界の中で、ただ一人自由を許されたアバターをゆっくりと動かした。配信画面の同接数は、運営の介入という歴史的瞬間を前にして、ついに4,800人を突破。SNSからの流入は止まることを知らず、コメント欄は運営への抗議とカイトへの期待で沸騰していた。


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【検証】最新VRMMO『EFO』にバグがあるか調べてみた【1日目・深夜】 同接数:4,852人


[名無しさん1]: 運営マジでビビりすぎwww

[名無しさん2]: 「検証をやめろ」って、それ攻略するなって言ってるのと同じだろ。

[名無しさん3]: カイト、アカウント消されるぞ! ここは引け!

[名無しさん1]: いや、カイトなら何か言ってくれるはずだ。

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 2.ロジカルな「反論」


 カイトは視界の端にある配信カメラ――すなわち、その向こう側で自分を監視しているネクサスゲームズの面々を見据えるように、不敵な笑みを浮かべた。


「ネクサスゲームズの皆さん。そして、アーク・コードを愛するプレイヤーの皆さん。……僕は一つ、皆さんに問いかけたい」


 カイトの声は、静寂に包まれた雪山に澄み渡るように響いた。


「このゲーム『アーク・コード』は、開発者の神代ディレクター自らが『完全な世界』だと宣言したゲームだ。……そうだよね?」


 彼は左手首の『アーク・コア(エラー品)』を掲げて見せた。


「僕が今、ここでやっていることは、外部のチートツールを使った改ざんじゃない。メモリを不正に書き換えたわけでもない。……ただ、ゲーム内に用意された『ジャンプ』や『ダッシュ』、そして『メニューの開閉』を、AIが処理しきれない速度で組み合わせただけだ」


 カイトの言葉は、配信を見ていたプロの解説勢やシステムエンジニアたちの視聴者を唸らせた。


「AI管理システム『コードオメガ』は、僕の行動をすべて『物理演算の結果』として受理している。……もし、僕のダメージが京を超えたのが悪いというなら、それはその計算を許容した物理エンジンの不備だ。もし、僕が壁を抜けたのが悪いというなら、それはそこに判定を作らなかったAIの怠慢だ」



 3.「検証だからセーフ」


 カイトは、目の前の警告ウィンドウを、まるで邪魔なゴミを払うかのように無造作にスワイプして消し飛ばした。


「僕は不正をしているんじゃない。……僕は、君たちが作った『完璧な世界』がどれほど頑丈なのかを、プレイヤーとして全力で叩いて確かめているだけなんだ。……これのどこが、規約違反なのかな?」


 そして、彼は配信画面に向かって、断言した。


「これは『破壊』じゃない。……検証なんだよ。検証だから、セーフ。……でしょ?」


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[名無しさん1]: wwwwwwwwwwwwwww

[名無しさん2]: 言ったああああああああ!!

[名無しさん3]: 「検証だからセーフ」www 屁理屈が神がかってるwww

[名無しさん4]: 運営仕事しろwww 直せないお前らが悪いって言いきったぞ!

[名無しさん1]: これ完全に論破だろ。運営、ぐうの音も出ないな。

[名無しさん2]: 同接5000突破! カイト、お前最高だ!

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 コメント欄は爆笑の渦に包まれた。カイトの主張は、あまりにも身勝手で、それでいてぐうの音も出ないほどロジカルだった。



 4.「仕様の王」の幕開け


 現実世界の監視ルーム。チーフプログラマーの黒崎シュンは、カイトの「検証だからセーフ」という言葉を聞いて、椅子から転げ落ちそうになっていた。


「あ……あいつ、何てことを……! 『物理エンジンが許容したから仕様だ』なんて、そんなの屁理屈だぞ!」


「でも……」

 コミュニティマネージャーの白石ミユが、笑いを堪えながら口を開いた。「SNSでは、今の言葉が大ウケしてます。『#検証だからセーフ』がトレンド1位です。みんな、カイトさんの屁理屈を『正論』として支持し始めてますよ」


 神代レイジは、モニターの中のカイトをじっと見つめていた。その瞳には、怒りではなく、一種の敗北感と、それを上回るほどの「知的興奮」が混じり始めていた。


「……面白いプレイヤーだ。彼は、僕たちがAIに依存しすぎて忘れていた『ゲームという名の戦い』を、仕様そのものを武器にして挑んできている」


 一方、雪山。運営の介入を実力(屁理屈)で黙らせたカイトの目の前に、再び黄金色のウィンドウが現れた。


【通知:あなたの『仕様への挑戦』が世界の根幹に認められました】

【メッセージ:職業『ノービス』の定義を破棄します】


「……おや。運営の許可より先に、システムの方が僕を認めてくれたみたいだね」


 カイトのアバターが、眩い光とどす黒いノイズに包まれていく。それは、世界に一人しか存在しないユニーク職業、『システム・ブレイカー』が産声を上げる予兆だった。

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