エヴァとイブ
呪いの事件が解決してシオンの館で厄介になっているときのこと。
アリーシャはエヴァと一緒にお茶を楽しんでいた。
エヴァはレディー・モナの新作ケーキにうきうきとなっていた。
村にいたときはあんなに遠く離れた存在の祭祀・巫女が目の前でケーキを頬張っている。
8歳のどこにでもいる少女なのだと感じいっていた。
エヴァは3つの頃に双子の姉と共に祭場に入った。卒乳が終わる頃合いである。
メデアの祭祀・巫女に相応しい能力があると認められれば、すぐに祭場に招かれる。
二人はローランの後継、弟子として大事に育てられていた。
村では祭祀・巫女になることは素晴らしいことで誉れであった。
双子の子を手放すことに悲しんでいた両親は、村の為になると信じ二人を祭場へと見送った。1年に数回面会ができるのだが、はじめは寂しいと感じていた。
「お二人にはちゃんとご両親がいるのですね。ということはお名前はローラン様がつけた訳じゃないのですね」
そうだぞとエヴァは応えた。エヴァとしてはアリーシャを祭場に招き入れる気満々だったので自分に興味を持ってくれて嬉しかった。
「あれは私が生まれた時のことだ」
双子の母・イレインはたいそう大きなお腹をしていた。
産婆からは双子であると教えられて、不安があるものの楽しみであった。
辛い出産を乗り越えて、イレインと夫のジョーは愛らしい双子の赤子に恵まれた。
「はぁ、かわいい。双子なんて、かわいいが2つじゃないか」
すでにめろめろのジョーは双子の傍につきっきりである。
産後の休憩所でイレインはベッドに横たわり夫と双子の様子を眺めていた。
「名前を決めないといけないわね」
「ああ、名前はもう決めてあるぞ」
ジョーはえへんと胸を張った。
「エヴァ、イヴだ」
「どちらも同じ意味ね」
神話の世界のはじめの女性の名前である。イヴと呼ばれることがあるが、地域によってはエヴァと呼ばれることがある。
「そうだよ。どちらも俺にとって可愛いはじめの娘なんだ。どちらかなんて決められないよ」
無理やりな台詞にイレインは仕方ないなぁと笑った。
「じゃあ、どちらがエヴァで、どちらがイヴなの?」
「うーんと」
そこまでは考えていなかったようでジョーは悩んだ。
やはり文字の順番で決めるのが悩まずにすむか。
EvaとEveだから、Evaの方が最初かなと考えた。
「姉がエヴァで妹がイヴで」
ジョーはじぃっと双子を見つめた。
「そういえば、どっちが姉でどっちが姉だっけ」
今まで気にしていなかったことをジョーが口にする。
「もー、どちらがどっちで間違えたらレディに失礼でしょう」
ここは生みの母親としての貫禄をみせてやろうとイレインは起き上がって、双子を見つめた。
どちらも同じ顔の愛らしい姿だ。
「どっちだっけ?」
どっちも可愛いというのはわかるが、どちらが先に生まれたかわからない。
二人ともしばらく沈黙した。
「こっちの子の方がちょっとおててが大きいような気がする。うん、この子がエヴァだ」
「じゃあ、この子がイヴね」
二人でしばらく話し合い、ようやく名前が決まった。
祝福のお祈りを授け終わったところで産婆がやってきて、姉はイヴと名付けられた方で、妹がエヴァと名付けられた方だと判明してしまう。
また沈黙する夫婦、ちらっと双子の赤子をみてすぐににこにこ笑った。
「どっちも可愛い天使だから問題ないよねー」
「そうよねー」
「もちろん俺の美しい天使はイレインだよ」
「やだもー」
楽観的な夫婦に愛情注がれて双子はすくすくと元気に育ち、3つの頃に祭場へ預けられる時は夫婦はうろたえた。
3つの双子が慰めるくらいに。
「というのが私の名づけの由来である」
困った両親であろうとエヴァは笑った。
アリーシャはその夫婦の楽観的な姿勢に不安を覚えた。
人のことは言えないが、騙されずに無事に過ごせているか心配になってしまった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
これで、本作は筆を置かせていただきます。
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