花姫のハロウィン祭
これはどこの時期か不明だけど多分秋の頃合いである。
ドレス注文の為に買い物をと特別に外出したアリーシャとドロシー。
宮へ呼び寄せるのも良いが、街中を歩くのもよい気晴らしになる。
街の様子は普段と少し異なる。愛らしい衣装を着ている子供たちがみかけられた。
「トリックオアトリート!」
目の前に現れた子供たちにアリーシャは動揺した。
後ろに控えていたドロシーがアリーシャにお菓子をさずける。
「アリーシャ様! お菓子を渡すのです」
わけがわからないまま子供たちにお菓子を渡すと、子供たちは嬉しそうにありがとうといい立ち去った。
ハロウィンというイベントが行われる時期らしい。
ロマ神のイベントであろうかと首をかしげるとドロシーが説明してくれた。
ここより北の方の異国の文化らしく、死者の霊を迎える儀式のようである。お菓子やおいしいものを与えないと機嫌を損ねてしまうらしい。また、死者から身を守るために子供には死者と同じ化け物の恰好をするとか。
それが可愛らしいモンスターをモチーフにしたドレスや、仮装を着てお菓子をもらう行事に変化してしまった。
「ハロウィン……へぇ、そんなものがあるのね」
メデア村にも死者を迎える行事はあるにはあったが、あのような愛らしい衣装を着ることはなかった。
元々村の行事に参加してもできる環境ではなかったが。
「あ」
アリーシャのつぶやきを聞きドロシーはうーんと考えた。
カメリア宮へ戻った後、ドロシーはアリーシャに新しいドレスをみせた。
少し暗めの衣装であるが生地がよい。変わった帽子とフード付きの外套がついてある。
鏡の前に立つアリーシャは絵本に出てくる魔女の姿となっていた。
「きゃー、かわいい。やっぱりお似合いです。実はこれ、前の職場で作った没作品なのです。経費は問題ありませんよ」
ドロシーは大興奮してアリーシャのまわりをぐるぐると周り彼女の姿を堪能した。
なぜ自分が着ることになったかわからない。てっきり次のお茶会のドレスだと思っていた。
「さぁ、アリーシャ様。トリックオアトリートというのです。お菓子がもらえなかったらいたずらできますよ!」
「トリックオアトリート……」
少し恥ずかし気につぶやくアリーシャ、その恥じらいがさらにかわいさが炸裂である。
ドロシーは頭の中で叫んだ。
この子、私の顔がそんなに好きなのかしら。
アリーシャは少し心配してしまう。
ドロシーはふにゃふにゃな笑顔になりながらアリーシャの持つバスケットに可愛らしい飴玉を入れた。
こんこんとノックがしてドロシーが応対する。他の宮の花姫からの使いのようだ。
手紙は着替えてから読むとしよう。
「はぁ、ハロウィンの雰囲気はだいたいわかったからそろそろ脱ぎましょ」
「あいや、お待ちください!」
ドロシーはびしっと静止した。
手紙の中身は読んでいないが、どうやらローズマリーがハロウィンにあやかったお茶会を開いているという。
本当は朝方に届けたかったが、アリーシャが留守で今招待の手紙が届けられたそうだ。
「何という偶然! アリーシャ様の可愛さをローズマリー様にも御覧いただきましょう。そしておいしいお菓子をがっぽりせしめるのです」
ドロシーは目をきらきらとしてアリーシャを引きずるようにローズマリーのお茶会へと連れて行った。
その後、ドロシーのいう通り、珍しいお菓子をバスケットにいっぱい詰め込んでもらえてアリーシャはしばらく休憩のお茶のお菓子に困ることがなかった。




