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【完結】笑わない悪女は最後に笑う  作者: ariya


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50 ダイヤモンドリリーのお茶会

 主のいないダイヤモンドリリー宮を利用したお茶会には王宮外からも招待客が訪れていた。

 アリーシャは頭を抱えた。エスコートする相手がいないのである。


「アルバート様………何で今日に限って倒れるの」


 むろん彼が忙しい身であるのはアリーシャも理解している。狩猟祭の脇腹の傷の件もあるので、心配である。

 ちゃんと医者にみせているのだろうか。

 手紙ではうるさい医者がいるので休むとだけ書かれている。

 エヴァのことを今だに知らないアリーシャはシオンのことだろうと考えた。


「はー、こんなことなら私も休んでお見舞いに行けばよかった」


 さすがに不参加だと後でクリスに何を言われるかわからない。だが、エスコートがいないことで何を言われるかと思うとしんどい。


「アリーシャ、何を一人で廊下で棒立ちになっているんだ」


 エレン王子が声をかけてくれた。


「エレン王子、その………」


 確かエレン王子も参加予定だったと思う。


「王子は誰かエスコートする相手いるのですか?」


 一人でいるエレン王子をみて考えてしまう。でもどういえばいいのか悩む。


「いないけど………ああ、エスコートしてくださいって言ったらしなくもないよ」


 意地悪気に笑う少年王子にアリーシャはむっとした。


「別に私一人で十分です」


 むきになって答えてしまい、エレン王子はさっさと先へ進んでしまう。

 アリーシャははぁっと深くため息をついた。

 こうなったら不参加より参加してさっさと退場してしまおう。


 そう思っていると目の前い手が差し伸べられる。


「ほら、さすがに今の意地悪だった。許してくれ」


 しばらく考えて戻ってきてくれたようだ。


「ありがとうございます」

「シオンに言われているし」


 シオンについては恩を感じているので彼の約束は果たそうと言っているのだ。

 既にお茶会にはほかの花姫と王太子が参加していた。

 和やかな雰囲気で会話を楽しんでいて、人々は王太子と三人の花姫をほめそやした。


「ローズマリー様は美しいが、コレット様も、本日主役のクリス様も負けていないな」

「そういえば花姫は他にもいましたわね」


 ああ、とくすくすと笑う声がする。泥姫という言葉を使う者もいた。

 そんな中でアリーシャは登場した。

 泥姫という単語を聞いたのは久々だ。


「クリス様、お招きいただきありがとうございます。そして皆様、アリーシャ・クロックベルと申します。他の花姫と比べて未熟者ですが、どうかご教授の程をお願いいたします」


 だいぶ形になった礼儀作法に人々は動揺した。


「礼儀のなっていない無礼な泥姫と聞いていたが」


 フローエ夫人と、アルバートの姿勢矯正の成果である。アルバートにはダンスの練習にも付き合ってもらっていた。


「エレンです。父と兄の元で政治の勉強をさせていただいております」


 エレンも続いて自己紹介をする。

 葬儀の時にも驚かれたが、それも知らない者たちはエレン王子の美しい容姿に驚いた。エリザベスが見捨てる程の醜い容姿をしていたと聞いていたからだ。


「病気が治っているとは………エリザベス様もさぞかし喜ばれるでしょう」


 人々はそう挨拶をつづけた。

 ヴィクター王太子が二人に声をかける。アリーシャは頭を下げた。


「エレン、お前がアリーシャのエスコートをするのか。クロックベル子爵はどうした」

「どうやら子爵は体調を崩してしまい、僕が代わりを務めました。さすがに困っている令嬢を放っておくわけにはいきませんので」


 にこりと微笑む姿は天使のそれである。はじめて彼をみた令嬢たちはきゃーっと声をあげた。


「うふふ、すっかりエレン王子も紳士なのね。まだ成人していないのにご立派だわ」


 その言葉にアリーシャはぞくりとした。この声に恐怖を覚えた。

 誰の声だと見上げてみると、ヴィクター王太子の傍らに控えている花姫たちがいた。

 口調がずいぶん違ったからすぐに気づけなかった。彼女の声である。


 花姫たちが座るお茶会のテーブルに案内された。そこにヴィクター王太子、エレンも加わる。

 しばらくは花の美しさについて話題になっていた。アリーシャは何とかして自分の聞きたい情報を引き出そうと考えた。


「皆さま、王宮についてとてもお詳しいのね。私はまだまだ不勉強と実感しました」


 不自然じゃないように導入してみる。各庭園については美しい景色についての話題で、ローズマリーも、コレットも、クリスも過去に訪れた時の思い出を語っていた。


「私は幼い頃、よくお茶会に招待されましたから」


 ローズマリーは照れたように笑った。アリーシャより詳しいのは大したことではないと言ったのだ。


「私は侯爵家の養女になるまで、王宮の縁はありませんでした。もしかして皆様のお茶会以外で王宮に出入りすることはあったのでしょうか。血縁の女性で王宮に勤めていた方がいたとか?」


 無理やりだったかな。ぶしつけだったかな。

 そう思ったがローズマリーが優しく見守るので、多分この導入で大丈夫と思う。馬鹿にされてもいつものことだと諦めよう。


「私は祖母が血縁者だったから、よく招かれていました」


 ローズマリーの言葉を皮切りにクリスもふむと唇に手をあてて考えた。


「そうねぇ。私の伯母が女官だった時があるわ。兄が王宮を見学することがあったけど、私はまだ幼いからと見学させてもらえなかったの」


 それが少し不満だったわと笑った。


「コレット様は………」


 アリーシャはちらりとコレットの方をみた。


「コレット様はどうでしょう。例えばコレット様に似た親族の方が勤めていた時期があったとか」


 その言葉にヴィクター王太子はぴくりと反応した。飲もうとしたお茶が揺れて少しだけ零れる。


「まぁ、殿下。大丈夫ですか。熱くないですか?」


 クリスは急いでハンカチを出してヴィクター王太子の手に渡した。


「ああ、大丈夫だ。だいぶぬるくなっている」


 もっと熱いお茶だったらよかったと考える自分は少し意地が悪いかもしれない。

 まだ熱湯をかけられたことを根に持っていた。


 折角の情報引き出しはうまくいかなかった。一番聞きたかったのはコレットからの情報であった。


 コレットの声はあの時アリアに呪いを提案した侍女と同じ声だったから。あの日差しの中うまくみえなかった彼女の容貌が今はコレットに似ていたのではないかと考えてしまう。

 声が似ているだけで容姿が異なる可能性の方が高いのだが。


 ただの偶然だろう。


 そう思うが、彼女の声を聞いた時胸騒ぎがしたのを今でも覚えている。


 アリーシャはお茶会を早々に引き払って退出することにした。理由はアルバートのことが心配でならないという感じだ。朝方に外出許可をドロシーに頼んでいたので馬車の手配は終わっているだろう。


「アリーシャ様」


 廊下の先から声がした。前を向くとこちらに微笑みかけるシオンの姿あり、自然とアリーシャの胸が高鳴った。

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