あのときすこし期待した
夏のお土産は
ムーミンの何かを希望した
秋のかおりに
さつまいもの何かを所望してみる
積んである本から
一冊引き抜く
しばしの戸惑い
文庫本の大きさの
あのすこしのちがいが
わたしを強く悩ませる
あの微妙なちがいは
個性か
それとも
たんなる誤差か
今日は何かの用事で
おかあさんが家にいない
さて
晩ごはん
と思ったら
おとうさんが
なに食べたい?
聞いてきた
え
もしかして
思いきって
からあげ
と言ってみる
よし
わかった
すぐに返ってきた
期待してしまう
なんだか
期待してしまう
いくらか時間がたって
おとうさんが帰ってくる
買ってきたぞ
からあげ弁当が二つ
わたしのと
おとうさんのと
ああ
そっか
あのとき
すこし
期待した
ちがう
たくさん
たくさん
期待した
おとうさんのごはん
期待した
からあげ弁当は
おいしかった
けど
なんかちがう
どこがどうとは
うまく言えないけれど
なんかちがう
わたしが求めていたのは
これじゃあない
わたしが期待していたのは
これじゃあない