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能力者の日常  作者: 相上唯月
2新たな当主
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5無謀な宣言

その時、話に夢中になっていた三人は気がついていなかったのだが、中庭の入り口には、中学と高校の境であるこの空間に、中高関係なく大勢の学生が集まっていた。


「あれって守光神さんだよね、なんでこんなところに? 告白?」

「いや、違うでしょ。だって、あの男の子の他に、女の子もいるよ。」


滅多に人が訪れない中庭に、三名もの人がいることにまず驚いた学生たちは、その生徒三名をじっと見つめた。そうすると、そのうちの一人がかの有名な光姫であることに気づく。これだけで、数十名はその姿に釘付けになる。ただでさえ休み時間は勉強をしていて教室から出ることは滅多にないのに、なぜ今日はこのような場所にいるのか。それが気になって仕方のなくなった光姫ファンは少なくなかったのだ。さらに、


「てか、あの男子イケメンっ。」

「わ、守光神さんに気ぃ取られててたけど、本当だ。爽やか美少年って感じ。」

「あれ、樹護宮じゃね?」


杏哉のクラスメート二人組が中庭の前を通り過ぎようとした時、彼らは目ざとく杏哉を見つけた。


「本当だ。なんで守光神さんと一緒にいるんだ? まさか告白? いやまさかな。だってあいつ、最近転校してきたばっかなんだぜ? 守光神さんは小中高関係なくこの学園で知られてるとはいえ、親しくもない相手に告白だなんて…。一目惚れ系? 確かに二人とも顔いいし、バランスはいいかも…。…というか、女子いるし。」


その高校生男子の言葉をはじめとして、今度はメイサについて騒がれる。


「あの、背低めの女の子だれ? 中学生だよね。」

「そうだね、待った。あの子、かわいくない?」

「私もそう思った。」


横からメイサの顔を見た女子たちが可愛い、と騒ぎ出す。

そして、ある中学生女子がぼそっとつぶやいた。


「もしかしてあれ、この学園の顔面偏差値高い集団じゃない?」

「何それ、あり得ないって。…でも、そうだったらすごい。私絶対推す。」


初めは〝そんなことあり得ない〟という常識的な考えから始まり、波紋状に噂が広まっていくと、次第に〝そうであってほしい〟という願望に変わる。そして、最終的には〝顔面偏差値が高い集団〟という根も葉もない噂で伝播されてしまった。全く、流言とは怖いものだ。

これら全ての出来事は無論、顔面偏差値の高い集団だと噂された当事者たち、三人の耳には届いていない。




その日の夜。光姫は自室でベッドに寄りかかると、今度は光姫から照光へとテレパシーを送った。


「友人達に意見を聞き、私、当主になることを決意いたしました。」


光姫は心を決めたのだ。何がなんでも、立派にやり遂げてみせると、光姫は意志を固めた。


『…心から感謝する。お前には色々と苦労をかけた。これから、能力者皆をよろしく頼む。私はもう二度と、そちらに戻れぬかもしれぬ。仲間を置き去りにして一人逃げ帰ることはもってのほか。私にはもう、捕まる未来しか見えないのだ。』


光姫は父の重々しい口調に胸が締め付けられるようだった。テレパシーの向こう側がどのような状況なのか、光姫には想像することすらできない。もう屋敷に戻って来られないかもしれない、だなんて。光姫は言葉が出なかった。さっき固めた意志は一体何だったのだろうか。


「お父様…私が、いつかお父様、そして捕まった能力者たちを解放することを約束いたします。」


しばらくして、光姫は突拍子もなくそう宣言した。そして、父の返事を聞かずにテレパシーを中断した。父は危険を冒してそんな約束なんてしなくていい、と言うに違いないから。

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