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能力者の日常  作者: 相上唯月
6サプライズ
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14二つの悪い未来予知

それからというもの、四人は起床してから就寝するまで、必要最低限の食事や入浴等以外は、ずっと訓練場にこもっていた。光姫が彼らを向上させる能力も、どんどん上手くなっていった。それらが奏を功して、始業式の前日には、悠もメイサも、飛躍的に能力が強まった。


悠は上の中くらい、メイサは未来予知のみなので一概には決めつけられないが、其の能力だけなら日本で上位に入る、というところまで上り詰めた。初めの課題は数日でなんとかこなし、次の課題に進んだ二人。


悠は最終的には、光姫に能力を隠してもらい、庭の後ろに続く森林を含め、屋敷の敷地内全てに土砂降りを一日中降らせることに成功した。勿論、生物がいるところは空けて。外にいる人や動物達も避けるので、目で見ずとも気配を感じなければならない。それもクリアしたのだ。悠は、自然と自身の意思のままに雨を降らせることに成功したのである。さらに、完全な球体の、輝かしい完璧なフォームで水鞠も数百は作った。


そしてメイサ。彼女も感覚を掴み、近いうちに起こる良し悪しを読み取れるようになっていた。そんな新たに手にした彼女の能力により、問題が発覚した。


「お姉様! 大変! あのね、とてつもなく悪いことが二つも起こるわ! いえ、どんどん能力者が捕まっていくから、悪いことって言ったら他にもたくさん起こるんだけど…。身近の話でね。まず一つ目は、花ちゃんと炎先輩が捕まることよ! さっき、なんとなく悪い予感がして、詳しく未来予知してみてわかったのよ!」





現在の訓練場の風景が完全に消え去り、初めにメイサの瞳に映ったのは、メイサの部屋内に取り付けてある壁掛けカレンダーだった。


(…一月、二十一日。)


始業式、つまり明日の日付だ。洗いたてのような、灰青色おぼめく朝日が差し込んでいることから、その日の朝にメイサがカレンダーを見ている光景だと想定する。


風景が切り替わり、今度は、光姫たちと平生のように黒塗りリムジンで登校し、車内から降り立つ様子が映し出される。自然に前列:メイサ&悠、後列:光姫&杏哉の並び方になり、四人で話しながら校門に向かうと、校門前には人だかりができていた。


未来のメイサが小柄な体格を利用して人混みをかき分けて移動し、背伸びして中を覗くと、そこには――


「能力者ハンター⁉︎」


思わずそう叫んでしまった。すぐに人混みに埋もれ、一瞬しか見えなかったが、彼らは確かに、白いシャツにミッドナイトブルーのネクタイとズボンを着用、その上から白いロングコートを羽織り、茶色いベルトで締めていた。それは確かに、能力者ハンターの軍服である。


戦慄を覚えて体が震えるメイサだが、未来予知をそこで終わらせるわけにはいかない。


突然周りの生徒がざわつき始め、今度は何事かと警戒していたら、能力者ハンターが帰っていくようだった。


(まだ朝の八時よ? いくらなんでも、軍事基地に戻るには早すぎるんじゃ…? まさか、もう課された任務が終わった…? …っ⁉︎)


最悪の事態を妄想したメイサは、一瞬頭をよぎった考えを否定しようと首をブンブンと振り、正面を向き直った。


すると、メイサの瞳はこれ以上ないほどに見開かれ、その場に硬直した。正しくは、現在のメイサの生身ではなく、明日のメイサの身体が硬直し、ある情景に釘付けになった。


「…炎…先輩に、……花ちゃんっ…‼︎」


未来予知中のメイサの視界の中に、明日の自分の右手が映る。そのまま、メイサは人と人の間を潜り抜け、雑踏の中を全速力で走り、メイサは人混みの先頭に到達した。そして、花火と炎の姿を捉え、彼らの元へ急ぐ。


「め、メイサちゃん…!」


花火が近づいてくるメイサに気付き、双眸を大きく見張った。その両眼には、大粒の涙が溜まっており、メイサと出会したことへの驚きが所以だろう、瞬きをして地面に落ちた。





それ以上の光景を視たくなくて、メイサは未来予知を終えた。今メイサが未来を知ったので、この二人を助けられるだろう。そんな未来は起こらないのだから、知る必要もないのだ。そしてメイサが視た内容を、その場にいた三人に伝える。


「明日、ハンターがやってくると…!」


三人は声も出せずに瞠目していて、初めに声を発したのは光姫だった。


「確かに時間の問題かと思っていましたが…こんなに早くにやってくるとは…。」

「でも大丈夫よ、お姉様。今未来がわかったんだから、二人を助けられるわ。」


声を震わす光姫を瞳に写し、メイサは微笑みながら、不安の様子を微塵も見せずに自信を持ってそう言った。しかし、


「駄目ですよ、メイサさん。ハンターは、私たちの通う学園に、少なくとも二人は能力者がいることを知っています。それで花ちゃんと炎先輩を捕まえたのでしょう。この二人を救出すると、また別の…この四人の中の二人が確保されます。」


と、戦慄く自身の肩を抱きながら、光姫は重い声でそう言い切った。その場に戦慄が走る。


「そんな…じゃあ、一体どうすれば…。」

「…ところで、メイサさん。もう一つの悪いこととは、一体なんだったのです?」


すると、突然話を遮り、光姫はメイサにもう一つの悪い出来事を尋ねた。


「規模が大きすぎるし、まだ先の話なんだけど、実は…三月二日の午前七時に、南海トラフ地震が起こるわ。」


「「「は⁉︎」」」


三人の声が重なる。流石にこの情報には、いつも冷静沈着の光姫も目を見開いている。


「えっと…それは、あの、世間が騒いでる地震?」

「そうよ。」


メイサの発した言葉を俄かには信じられず、悠は自身の考えている自然現象と一致しているか、彼女に確認をとった。そしてあっさりと頷かれ、悠は再び衝撃を受ける。しばらく重々しい沈黙が続いていたが、光姫が其の静寂を破った。

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