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能力者の日常  作者: 相上唯月
6サプライズ

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11二面性

其の後、二人は中庭から杏哉の部屋に戻った。すると二人とも起床しており、何やら楽しげに話している所に出くわしてしまった。慌ててドアを閉めようとするが、それを光姫が止めた。悠はチラと杏哉の顔を伺うが、この二人の空間を邪魔された事を、微塵も気にしていない様子だった。


「どうして閉めちゃうんですか。ちょうど今、二人に話したいことがあったんですよ。」

「え? アタシたちに?」


きょとんとするメイサに、光姫はパッチリとした大きな目を見開いてこう言う。何故か、メイサに続いて部屋に入り、扉を閉めていた悠の肩が、ビクッと震えた。


「ええ。今日の朝食は、ダイニングルームではなく、宴会場でいただきます。使用人方達と共に、新年の始まりを祝うのです。クリスマスの時も大勢でいただきましたが、今日はさらに人数が多いです。屋敷中の人間全員ですからね。」


光姫の言葉を聞いて、悠は上がっていた肩を下ろし、あからさまに胸を撫で下ろした。


「へぇ、そうなんですね。いいですね、大人数で食べるお食事。楽しみです。」

「お節料理もさぞかし豪華なんでしょうね。」


メイサは脳内に絢爛な色とりどりのお節料理を思い浮かべた。其の後、先ほどの悠の行動を不審に思っていたメイサは、彼の耳元でこっそりと尋ねた。すると、


「二人の話って言われたからてっきり…さっきキスしてたとこ、見られてたんじゃないかって心配になっただけ。あれ見られてたら相当恥ずかしいし…。でも、杞憂だったよ。」


悠はそう小声で囁いた。メイサは生暖かい風が耳に当たり、こそばゆく、また同時に恥ずかしさを覚えながら、今度は悠の耳元で囁き返した。


「そういうことだったのね。まぁ確かに…。もし見られていたら、アタシ、すぐに何処かの穴に潜るわ。」


メイサは苦笑しながら、そう断言する。耳元で囁き合う、付き合いたてのバカップルをまじまじと、又楽しそうに眺めていた光姫は、そこで声を発した。


「そういえば先ほど、お二人の様子を眺めてましたよ。良いですね、熱々で。恋愛ドラマを見ているようでした。」

「「は⁉︎」」


もじもじと体をくねらせる光姫の衝撃発言に、メイサと悠の声が重なる。


「えと…もしかして杏哉も?」

「いいえ、杏哉さんは一度、自室へ戻られていましたから。杏哉さんの部屋からは、中央庭は見えません。」


恐る恐るといった口調で、メイサがそう尋ねると、光姫は首を横に振った。年少組は露骨に安堵し、そういえば年長組も着替えが済んでいる事に今更ながら気づいた。


「今度は私の前でしてくださいよ。」


光姫の無理難題に、悠とメイサはぶんぶんと首を横に振った。


「何? お前らヤったの?」


其の様子を横から伺っていた杏哉は、にやにやしながら女性陣に聞こえぬよう、悠にそう耳打ちした。冗談だと理解した上で、たちまち悠の瞳が細くなる。


「おい杏哉。それ、一文字カタカナやつだろ。」

「悠の男モードかっけ〜。ギャップに萌える。」

「茶化すなっ。」


悠は冷めた瞳をニヤつく杏哉に向けていたが、次第におかしくなって、二人して声に出して笑い出した。二人からしたら日常茶飯事の戯れだが、悠の乱暴な言葉遣い、そして二人のふざけ合いを初めて目にした女性陣は、瞠目して二人の様子を伺っている。


「あの二人って…あんな風にふざけあったりするんですね。」

「あ、わかる。二人とも真面目で大人っぽいと思ってたけど…。所詮は男なのね。クラスの男子と行動が同じだわ。」

「悠さんに少し幻滅しました?」


答えは分かりきっているが、揶揄うように片方の口元をあげた光姫は、彼女にそう尋ねた。


「まさか。むしろ好感度アップよ。年下なのに、アタシより賢いし気がきくし。顔はともかく、中身はアタシよりよっぽど大人だと思ってたのよね。それが格好良かったのは勿論だけど、一方で虚しい気持ちもあって。だから悠の意外な一面が知れて嬉しいわ。」


光姫はそう語るメイサの顔を覗き込むと、彼女は甘く、とても優しい表情をしていた。


(恋する乙女の顔だわ。)


光姫は内心で呟いた。


「確かに、二面性があるのって良いですよね。」


そして光姫自身も、素直に男子陣にギャップ萌えしていた。


「あ、すいません。置いてきぼりにしてしまって。どうかしました?」


其の時、光姫達がその場にいた事をたった今思い出したように、杏哉は隣の悠から、正面にいる光姫とメイサに視線を移した。そして、二人の様子がなんだか先ほどと異なっている――具体的にいうと、纏う雰囲気が柔らかくなった気がして、首を傾げる。


「大した事じゃないわ。けど…ねぇ悠、今度アタシの前でも、さっきみたいな言葉遣いしてくれる?」

「…え? …まぁ、機会があったら。」


瞳を星屑のようにキラキラと輝かせるメイサに、悠は苦笑いをしながら、そう返した。

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