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能力者の日常  作者: 相上唯月
3ハンター出現
14/81

5心当たり

(…五、六人ほど…。)


光姫は女子更衣室の陰に隠れ、校舎の前の入り口に屯する数人のハンターの姿を確認した。白いシャツにミッドナイトブルーのネクタイとズボンを着用、その上から白いロングコートを羽織り、茶色いベルトで締めてあるのは能力者ハンターの軍服だ。


水の能力者を女子更衣室に隠れさせた後、光姫は自教室へ避難しようと思ったのだが、時はすでに遅し、ハンターが能力の発生地を感知し、こちらへ足を運んで来ていた。


しかし、彼らは能力を発せられた場所がどこなのか、はっきりとは察知できていないようだった。もしできているなら、真っ先にこの先の花壇の元へ行くだろう。彼らの持つ探知機というのは、そこまで性能がいい訳ではないようだ。大体ここらへん、と見立てを立てたのだろう。


光姫は鋭く目を光らせながら、周囲を観察している。見渡す限り、光姫の周りには誰もいない。光姫は、いざという時はいつでも校舎の裏側を回り、ハンターから逃げることができるよう、警戒態勢をとったまま、頭の中ではある疑問に直面していた。


(機械の誤作動なら、少ししか反応はないはず…。つまりそれは弱い能力者を意味する…。)


能力者は能力を使う際、発せられるエネルギーをコントロールできるということ、それを無能力者は知らない。無能力者はこの事実を信じて疑わないのだ。それは能力者と対立するにあたって、かなり致命的である。それなのに、父は捕まった。いや、正確には追いやられている。父一人なら逃げられたろうに、彼は責任感が強く絶対に仲間を見捨てない。能力の弱い仲間、能力者たちを見捨てなかった。


(もし誤作動なら、弱い能力者がいると仮定してここへ来ているはずなのに…そう考えると、少し人数が多くないかしら…? 一つの階だけにまとまっているとは考えにくいし、おそらく他の階にも数名いる。やっぱり、多すぎる。)


実は光姫には心当たりがあった。




一ヶ月ほど前、つまり十月下旬頃だろうか。


クラス委員を務める光姫が、放課後居残り、仕事の一つで、クラス内の様子を担任教師に話していた時。クラスで起こる内職、学校から貸し出されているiPadの不正使用に日常的に目を光らせている光姫。日々溜め込めた、不真面目なクラスメートたちに対する不満を発散するように、光姫はその全てを逐一報告した。


このチクリの仕事は月一で行われるのだが、光姫が毎度一つも漏らさずチクっているため、三年生に入った頃に比べると、不正はかなり減った。それでも何度叱られてもやめようとしない愚か者がいるもので、光姫のチクリはとてつもなく長い。学校がクラス委員にやらせている仕事なのだが、教師は光姫の報告を受けた後、雑巾切れのようにクタクタになって帰っている。


その日も、そんな月一のありふれた日常だった。いつものように、時刻は下校時刻である五時半ギリギリ。早く出なければ、と気持ちを急かしていた時のこと。


突然、何かがピンと張るような感覚がした。炎がメラメラと燃え、辺り一面を焼き尽くすような凄まじい光景が頭の中に浮かぶ。

光姫は火の能力を感じ取った。一瞬のことだが、空気を揺るがすような強い力を感じた。


(…今のは一体…。)


誰が使ったのか、それは考えるまでもない、この学園の小学生だ。それは知っている。だが、何のために自分の身の危険を晒すような強い力を…。ハンターがある程度近くにいれば、すぐに駆けつけて捕まるレベルだ。


(この能力者、かなり強い…。)


緑属性本家の杏哉、ましてや能力者の女王である光姫には程遠いが、先ほどの力は相当強い部類に入るだろう。メイサや悠の能力など簡単に超える。


(けれど、どこか違和感があるような…。この能力者の使う能力、純粋じゃないというか…。)


自分でも何を感じ取ったのかわからない。だが、どことなく違和感を覚えるのだ。


その日は、何事もなく終えた。それから一週間ほど、光姫は気を引き締めていたが、特に変化はなく、ハンターの気配を感じることもなかった。

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