第29話 ガダルカナルへの道
ーーーー皇紀2601年8月
太平洋戦線で押されっぱなしだったアメリカ軍が初めて本格的反攻作戦としてウォッチタワー作戦を発動し、日本軍が当時進出していたガダルカナル島への反攻上陸を企図していた。
第八艦隊 司令長官:三川軍一中将(外南洋部隊指揮官)
直属 重巡洋艦:『鳥海』
第六戦隊 重巡洋艦:『青葉』、『衣笠』、『加古』、『古鷹』
第十八戦隊 軽巡洋艦:『天龍』
第二海上護衛隊 軽巡洋艦:『夕張』
第二九駆逐隊 駆逐艦:『夕凪』
連合軍の標的がガダルカナル島に向けられたことを踏まえ、高天原の元帥府でも対応が議論された。
「諸君、いよいよ連合国が本格的反攻に転じてきた。8月7日にガダルカナル島に上陸してくるようだ。兵力は一九〇〇〇名余、対する日本軍は飛行場設営隊三〇〇〇名でまったく相手にならない。しかし、水上部隊に関して言えば我が方重巡五、軽巡二、駆逐一の八隻に対して、重巡六、軽巡二、駆逐八、輸送船十五じゃ。生起する夜戦での予想損失は重巡一、予想戦果は重巡四隻撃沈、一隻中破。残念ながら輸送船を撃ち漏らす結果となってしまう」
伏見宮首席水師の視線は一人ひとりに注がれ、最後に島村次席水師のところで止まる。
「どうじゃ、これより旗艦『鳥海』に降臨して一隻残らず敵輸送船を葬ってこようという者はおらぬか」
議場を埋める水師はざわめくが、誰一人として名乗り出るものはいない。場の空気を察知して島村実継が声を上げる。
「伏見宮様、聞くならく夜戦で重巡四隻撃沈一隻撃破の戦果は十分過ぎるほどではありますまいか」
「否、このガダルカナル島での戦い、補給線が鍵を握っている。重巡四隻より輸送船四隻のほうが価値が高いと言っても過言ではない」




