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第8話:平民差別

 緊張しつつ、俺は少女の後ろをついていく。


 さっきは焦っていてあまりよく見られなかったが、白基調のなかなか綺麗な部屋だった。


 十畳ほどのワンルームの三分の一は二段ベッドが占めており、空いたスペースには机と二脚の椅子が用意されている。


 生活用魔道具——現代日本でいう生活家電——も、冷蔵庫、洗濯機、マイクロ波振動式加熱器と一通り揃っている。


 マイクロ波振動式加熱器はいわゆる異世界版電子レンジだ。この世界には魔法があるが、科学が進んでいないというわけではなく、この二つは両立している。


 最後に壁際を見ると、壁に埋め込まれた形のクローゼット。蛇口付きのシンク。そして、トイレとシャワールームに繋がる扉があった。


 学院寮内には食堂があるためか、キッチンスペースは用意されていないようだ。


「そこに座って」


「ああ」


 俺と少女は向かい合う形で椅子に腰を下ろした。


「私はシーシャ・ローゼンベルク。あなたと同じ平民よ」


「俺はエレンだ」


「知ってる。私以外だと上位三十名の中に平民はあなた一人しかいなかったから」


 そういえば、合格掲示板には+表記があったな。


 平民の場合は+0になるので、一発で分かるというわけか。


「それで、寮の部屋割だけど……普通は男女別だけど、平民は別なんだって」


「な、なんで⁉︎」


「そりゃ少ないからじゃない? 上位三十名中、女子は私だけで、男子はエレンだけ。必然的にこうなるわ。貴族なら余った学院生には一人部屋を与えるんでしょうけど、私たちは平民だしね」


「な、なるほど……」


 なんという平民差別だ……。


 入学試験で厳しく見られるだけじゃなく、まさか入学してからも平等じゃないとは……。


 俺としては構わないが、シーシャは嫌だろう。


「そういえば、上位三十名って何か意味があるのか?」


 シーシャがこのフレーズを出すのは二回目だ。


 何かこの数字に意味があるのか気になって尋ねたのだが、シーシャは怪訝な表情を向けてきた。


「え、入学試験の上位三十名がSクラスに振り分けられるって知らないの……?」


「あっ、クラス分けってそんな感じなのか」


 シーシャの反応的におそらくこれも常識らしいのだが、俺はまさか入学することになるとは思っていなかったので、例の如く調べていなかった。


「エレンって大分変わってるわね……」


「……ハハ」


「まあ、それで平民の入学者は他にもいるみたいだけど、寮の同居人は同じクラスの人から選ばれる決まりになってるんだって。だから私はエレンが同じ部屋だってことを知ってたってわけ」


 なるほど。


 シーシャが学院のミスではないと言った意味がやっと分かった。


「今度から部屋に入るときは気をつけるよ」


「そうしてくれるとありがたいわ。これからは立札とか用意しようかしら」


 ふう……事故の件はシーシャが気にしていないようで良かった。


 アニメとか漫画だとこういう場合は男の側はタダじゃ済まない場合が多いからな……。


「じゃあ、俺も制服に着替えるから……その、部屋を出てもらってもいいか?」


「え? 何で?」


「だから、これから着替えるって……」


「どうして私は着替えを見られたのに、エレンは着替えを見られずに済むと思ってるの?」


 ……んん?


 シーシャは何を言ってるんだ……?

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