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第28話:遅刻寸前

 翌日。


 今日から授業が始まるということで、俺は仕方なく教室へ向かっていた。


 いつものようにユリアとシーシャも一緒である。


 ユリアとはわざわざ待ち合わせをしたのではなく、部屋を出て教室へ向かおうとした時に遭遇したので一緒に向かっている。俺たちのことを待っていてくれたのだろう。


 シーシャに関しても、俺のことは待たずに先に出発してくれても良かったのだが、シーシャも俺と同じタイプで時間ギリギリを攻めるらしく偶然同じ時間になった。


「エレン、あと三分しかありませんよ! 急がないと!」


 ユリアは講義日初日から遅れるわけにはいかないと考えているのだろう。焦った様子で急かしてくる。ううむ、真面目だな。


「大丈夫だ。あと三分もある」


「それに、朝のホームルームが先にあるわ。全然余裕よ」


「確かに」


「……もう!」


 やれやれ、少々遅れたからどうだというのだ。


 社会人なら遅刻は厳禁。だからこそ、裏を返せば、学生の間くらい時間に支配されないゆとりを持った生活を送りたいものだ。


 さて、そんな会話をしながらも、教室へ到着した。


「一年S組……ここだな」


 俺はガラッと扉を開け、中に入る。


「む……」


 教室の中は既にほぼ全員の学院生が着席していた。


 教室の中は、日本の一般的な高校のような感じではなく、大学の大講義室のような印象を受けた。


 三十人制のクラスなので、大講義室のようなバカでかい広さを持つわけではない。しかし、黒板の前が低くなっており、学院生が座る座席が後ろへ行くにつれて高くなっていた。


 加えて、椅子や机は移動可能なものではなく教室に備え付けて固定されているらしく、本当に講義をするためだけの部屋なのだという印象を受ける。


 座席の配置は、三つのブロックに別れており、向かって左から三人掛けの座席が五列、五人掛けの座席が五列、三人掛けの座席が五列である。


 しかし、問題だな。


 時間ギリギリで来てしまったせいで、大半の学院生が既に座席を確保しており、誰かの隣りがポツポツと一人分だけ空いている以外には、前の方の座席しか空いてない。


 前の方の座席は、講師との距離が近く妙な緊張感があるので、俺はあまり好きではない。


 しかし、できればユリアとシーシャとはなるべく近くに座りたい。こうなったら、前の座席に座るしかないか……と諦めかけたその時だった。


「エレン、こっちだ」


 窓際の後ろの席から手を挙げて声を掛けてくる男の姿が目に入った。


 ——セントリア王国の王太子であり、入学試験成績一位の学院生、リヒト・セントリアだった。

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