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第21話:睡眠薬

「いやあ、新入生はいいね」


「二人とも可愛いね。シードよくやったな」


「今年は当たりだな!」


「こりゃ今日は楽しくなるぜ」


 研究会室に到着して、二人は少し違和感を覚えた。


 研究会室には、シードの他に四人の研究会員がいるのだが、その全員が男子学生なのだ。


 シードは女性の学院生もたくさんいると言っていたはず。


「あ、あの! 女性の研究会員っていうのは……?」


 ユリアが不安になって尋ねる。


 すると、お茶菓子と飲み物を持ってきたシードが答えた。


「ああ……今は勧誘でみんな出てるんだ。もう少ししたら戻ってくるはずさ」


「そうなんですか……」


 たくさんいると言っていたのに、一人もいない?


 暇そうな男子学生は四人もいたのに……?


 疑念は増えてしまったが、そう言われてしまっては一旦納得するしかない。


「ねえ、ユリア。なんかおかしくない?」


 シーシャが、隣のユリアに小声で耳打ちする。


「ですよね……」


「早く出たほうがいいかもしれないわね」


「私もそう思います」


 二人とも、なんとも言えない胸騒ぎを感じていた。


 本能が長くここに留まってはいけないことを告げている。


 とはいえ、何かされたわけではないのに、歓迎ムードの中で早々には帰りづらい。


 ちょうど良いタイミングがやってくることを待つことにした。


「ジャンジャン飲んでよ!」


 と言いながら、二人に振る舞われたのはアルコール度数の高い蒸留酒や、それをジュースで割ったカクテル。


 二人はまったく飲めないわけではないが、アルコールが思考力を下げることは知っている。


 周りが初対面の男子学生しかいない中で無防備になろうとは思えなかった。


「私、アルコールはちょっと苦手で……」



「ごめんなさい、私も」


「そうなの? じゃあしょうがないね」


 二人が申し訳なさそうに断ると、シードたちは気を悪くすることなく代わりにジュースを用意してくれた。


「じゃ、二人はジュースで乾杯!」


「俺はハイボールで」


「ウェーイ」


「乾杯〜!」


 こうして、飲み会が始まった。


 三十分ほど経過しても、シードが言ったように多数の女子学生が戻ってくることはなかった。


 そんな中、ジュースを飲んでいただけのはずの二人の身に変化が現れた。


「な、なんだか眠たくなってきました……」


「私も……疲れたのかしら」


 昨晩はしっかり寝たはずなのだが、どういうことか、急に眠気が襲ってきた。


 せめて眠るなら部屋に戻ってから……と思いつつも、身体が上手く動かない。


 二人の意思に反して、瞼はどんどん重くなっていった。


 そして、プツリと意識は途絶えてしまった。


「ようやく薬が効いたようだな」


 二人が眠ったことを確認したシードは、安堵した様子で呟いた。

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