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第15話:ライバル

「やはり、エレン君はすごいな。初めてだよ、同年代で僕よりも優れた人に出会えたのは。……やはり、この学院に入って良かった」


 リヒトが驚嘆した様子でパチパチパチと俺に拍手を送ってきた。


 や、やめてくれ……。


 ここで変に実力を認められてしまうと、退学しにくくなってしまう。


 っていうか、オスカ先生もオスカ先生だぞ⁉︎


 そういう大事なことは始める前に言ってくれ!


 ……まあ、事前に説明があろうがなかろうが、本来は関係ないのも確かなのだが。


 なお、他のクラスメイトたちは、俺が普通の平民である認識だからか、ユリアとシーシャ以外は驚きこそすれ賞賛を送ってくることはなかった。


 ユリウスなんて、リヒトの時よりも苦々しい表情で俺を睨んでいた。


 やれやれ。また面倒なことになってしまった。


 先が思いやられる。


「エレン君、どうして浮かない顔をしてるんだい?」


 俺の近くにきたリヒトが声をかけてきた。


「い、いや……別に。自分でも驚いただけだ」


 本当のことなんて言えるはずもない。


 笑顔を作り、適当にお茶を濁した返事をしておく。


「なるほど。僕は、切磋琢磨できるライバルができて嬉しく思っている。……いや、もしかすると僕がライバル視するには実力が離れすぎてるかもしれないけど」


「いやいや、別にそんなことは……」


 謙遜でもなんでもない。


 俺はずっと気ままに田舎に引きこもって、誰に命令されるわけでもなく修業をしていただけで、たまに指導をつけてくれる英雄がいた以外にはほとんど特別なことは何もしていない。


 リヒトは才能がありそうだし、真面目にやればすぐ俺程度は追い越せるだろう。


「ふむ、エレン君は謙虚なんだな。まるで英雄様たちのような余裕を感じるよ」


 ……。


 ノーコメントでいいよな?


「それはそれとして、さっきから気持ち悪いぞ? エレン〝君〟って」


「ん? 何か気に触ることを言ってしまったか……? これは失礼をしてしまった」


「いや、そうじゃなくて。呼び方。歳上の人に言われるみたいだなって。エレンでいいよ」


「なっ……エレンと呼んでいいのか⁉︎」


「え? うん」


 逆に、なぜダメだと思うのか?


 同年代だし、そちらの方が自然だと思うのが……この反応を見ると、これは田舎出身故に常識がないからそう思うだけなのかもしれない。


「僕は王子だから……僕が呼び捨てにすると偉そうに感じさせるかと思っていたんだ。距離が縮まった感じがして嬉しいよ」


 え、そんなこと気にしていたのか。


 ユリウスのような態度を取る王族はシンプルにムカつくが、リヒトの感じだとこれはこれで大変そうだ。


 二人を足して二で割るとちょうど良さそうだが……まあ、そう上手くはいかないか。


 こほん。


 俺とリヒトの話が終わったところで、オスカ先生が咳払い。


「で、では……続きを始めよう。次、ユリア・シルヴァーネだ」


「は、はい!」


 こうして、魔力検査は進んでいき、今日は解散になった。

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― 新着の感想 ―
[一言] でも、こういうタイプってけっこう好かれやすいよなぁ。 王族としてはまともだと思うけど、裏の顔がない方がいいとは思う。 ましてや、ユリウスでウンザリしている訳だし…。
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