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第12話:リヒト

 担任のオスカは唐突にそのようなことを言い出した。


 魔力検査ってなんだ……?


 と思っていると、ユリアが小声で説明してくれた。


「魔力量を測定するんです。魔法師を目指す学院生以外にとっても魔力量は重要な指標ですし。この結果を基に指導の方針を決めるのかなと」


「なるほど」


 確かに、魔力は魔法においては素となるものだし、魔法以外でも剣や弓、あるいは己の肉体を武器とする拳闘術も魔力を消費する。


 魔力量に応じて向き不向きがあるし、あまりに少なければ増やすための指導が必要になる。


「じゃあ、俺の後をついてきてくれ」


 オスカに続く形でSクラス全員で検査室へと向かうことになった。


 Sクラスは入学成績の上から三十番目までが機械的に振り分けられる形になっている。


 そのため、既に見知った顔もあった。


 ユリウス・ストウン。


 入学試験でユリアに絡んでいた場面で、俺はうっかり首を突っ込んでしまった。


 向こうも意識しているようで、俺と目が合うとチッと舌打ちし、睨んでくる。


 ……めんどくせえ。


 どうせ不合格になるだろうという想定で首を突っ込んだので、まさかこうなるとは思わなかった。


 まあ、やらなきゃやらなかったで後悔していた気もするが……まあ、仕方がない。


 ◇


 検査室は五階にあるらしく、俺たちはゾロゾロと階段を上っていく。


 ——その時だった。


「あっ……!」


 俺の後ろを歩くシーシャの声が聞こえたので振り向く。


「シ、シーシャ⁉︎」


 シーシャは、足が滑ったのか階段を踏み外してしまったらしく、背中から転落してしまいそうになってしまっていた。


 現在の位置から踊り場までは約二メートル。


 もし受け身を取れずに落ちればタダでは済まない。


 急いで手を伸ばすが——


「クソ!」


 ギリギリで届かなかった。


 こうなったら、シーシャより早い速度で飛び降りるしかないか。途中でシーシャを抱えて、踊り場まで降りられれば大丈夫なはずだ。


 いざ実行に移そうとしたその時。


「おっと、大丈夫?」


 シーシャの後ろを上っていたリヒトが身体を支え、事なきを得たのだった。


「あ、ありがとう……」


「どういたしまして。掃除したばかりで滑りやすいみたいだから、気をつけてね」


 リヒトは笑顔を向け、安全が確保されたシーシャの体から手を離した。


 こうして、俺の出る幕はなく決着したのだった。


 全ての動作に落ち着きがあり、まったく焦った様子がなかった。


 なんだこいつは……さすがに格好良すぎないか?


「さすがはリヒト様!」


「かっこいい♡」


「庶民のくせにリヒト様に……生意気ね」


 リヒトに対する女子生徒の黄色い声が上がる。


 中には、シーシャに向けて嫉妬が篭ったような言葉も散見された。


 対して男子生徒を見ると、苦々しい表情をしている者が多い。


 ユリウスは特に……という感じだな。


 俺はべつに嫉妬の感情は湧いてこないのだが、年頃の男もこれはこれで大変だな。

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