エピソード2 ピンクの部屋
「ん…まじで?」
「まじ」
3秒くらい間を開けて僕は聞いた
「へー!いやそれ冗談でしょ?」
「本当だよ」
もう頭がシャットダウンしている
しかし嘘だと思っている自分もいる
会ってもいないし、顔も見てない
信用する義務もない
たかがメッセージだけの関係、僕を騙してお金を取るつもりならブロックしても良い関係。
ブロックしても良い関係…
いやそれは寂しい
何しろ僕には女友達はこの子しかいない
友達なのかも分からないが…
「何でそれを僕に言ったの?」
「ター君は優しいから」
「他の人はホテル行こうとか写真送ってとか」
「変な人しかいなくて」
「あー…出会い系ってそんなんばっかだよね」
自分も下心があった事は墓場まで持っていこう
彼女に対してはあくまで紳士を演じてきた
優しい男性を精一杯演じてきた
「…他にainしてる女の子いる?」
「いないよミクちゃんだけだよ」
正確には他の女の子からは返信が来なかっただけだが
「そっかー…なんか普通に話したくて」
「芸能人なら知り合いとか沢山いるじゃん?」
「んーみんなライバルみたいな感じ」
「結局は仕事ありきになっちゃうの」
「そうなんだ。」
「なんか相談したいって言ってたけど」
「あっそうそう相談!」
僕は彼女を信じてなかった
アーティストAZUMIなわけない
AZUMIが僕と話をするわけない
なぜならあまりにも遠い存在すぎる
岐阜の山ん中の僕と東京の芸能人が繋がるわけがない
そう思うと何だか強気に話せた
「今度朝の番組に出るんだけど」
「スッキリんテレビって見てる?」
「知ってるよバラエティでしょ?」
「私服のコーナーがあってさ、それに出るけど私あんまりセンス無いからどっちの服が良いか選んで欲しくて」
ん?なんだその相談は?本当に番組出るのか?
女の子の友達に聞けば良いのでは?
何故僕に?友達いないのか?
「ビデ通にするね!」
「おけ」
いや、待て待て、僕の顔出るやん向こうに
ブサイクがバレるやん
バレないようにちょっと部屋暗くするか
「もしもしー?見える?メイクしてないから、ちょっとブサイクかもだけど笑」
「あー見える見える」
AZUMIだった
僕のスマホに写ったのは本当にAZUMIだった
ノーメイク?自分の部屋かな?
歌はカッコイイけど、ピンクの可愛い部屋
ぬいぐるみ?ベッドの上にいる?
イメージと違う、でもめっちゃ可愛かった
いつもテレビで見る顔がそこに居た
可愛いかった
僕はビックリして電話を切っていた