Star
二学期が始まり、クラスに転校生が来た。
先「夏休みに、栃木県から転校してきた転校生です」
久しぶりの興味深い内容に、星野想は顔を上げた。
前に立っていた少年は、少し間を空けたあとに自己紹介をした。
峻「……藤野峻一です。よろしくおねがいします」
言い終わると同時に拍手が響き渡る。
先「峻一君の席は、4号車の後ろです」
先生が指した席は、想の後ろの席だ。
先生の話が終わった後、少年は席に着く。
想「……よろしく」
想が声をかけると、少年は少し間を開けた後、笑って頷いた。
ある日の放課後、いつも通り公園で二人で遊んでいると、ある男性が近づいてきた。
男「君たち、ちょっと来てみない? 面白いものいっぱいあるよ」
何とも典型的な誘拐犯である。そう思った想は、あるものを目で捉える。
男が乗ってきたと思われる車の中に、誰かいる。そして暴れている。
もしかして、と思った想は、峻一にだけ聞こえるように伝える。
峻一は車を見て、しばらく考え込んだ後、言葉を発した。
峻「ついていくもんか」
そう言うと、峻一は想の手を引っ張って滑り台の上に向かって逃げだした。
男「おい、ガキども、何様のつもりだ!」
勿論のこと、男は追いかけてくる。
男が滑り台の上に上ってきたところで、上にあった砂バケツを二人で豪快に男の顔面に向けてぶちまけた。
……だいぶ無茶苦茶な話だが、今の彼らには一番最適な方法であった。
男「う、何をするんだ!」
男の目に砂が入ったところでバケツを投げつけ、即座に車に向かう。
男「おい、まて!」
車のところまで来たが、案の定鍵がかかっている。
峻「どうしよう……」
想「あれならガラスを割れるかも」
想が指さした先にあったのは、先端が尖った石。
峻「よし、やってみよう」
そう言うと、峻一はガラスの端を力いっぱい突いた。
パリンッという音が響き、ガラスが割れる。割れた部分から想が器用にドアのロックを解除する。
ドアを開けると、中にいたのは一人の少女だった。
男「そこまでだ」
いつの間にか追いついた男が二人を車に押し込もうとする。しかし、男はバランスを崩して倒れた。
先「お前こそ、そこまでだ!」
聞こえてきた声の主は、担任の先生だった。こういう時に、公園の目の前が学校で良かったと実感する。
その後男は先生たちに押さえつけられ、後から来た警察によって連れていかれた。
先「よく頑張ったな。だけど、あぶないときは自分たちだけでいくなよ」
先生は、想と峻一にそう言った後、学校に連れていき、親が来るまで待たせてくれた。
峻「なあ、さっきのどうだった?」
峻一は図書室の床に寝転がりながら想に言った。
想「作戦通りにほとんど進んだけど、こわかったな」
峻「オレも」
二人はしばらく無言のまま、天井を眺めていた。
峻「ねえ、想って何になるのが夢なの?」
想「オレは天文学者になることが夢」
峻「何で?」
想「オレのお父さんが天文学者なんだ。いつもお父さんが帰ってきた日は、星について面白い話をしてくれるんだ」
峻「へ~。いいな~」
想「峻一の夢は何なの?」
峻「オレ? オレは……まだ決まってない」
想「そっか~」
峻「じゃあさ、むかえが来るまで、星について面白い話聞かせて」
想「いいよ」
そうして迎えが来るまで二人は話し続けた。
こんにちは、神原夏吉です。
今作は、後に(多分)公開する作品「Stargazer」に関する短編小説です。
主な登場人物は、星野想と、藤野峻一です。
これからも神原夏吉をよろしくお願いします。