壊れる
俺と司令官は ひとまず 赤岩を自室へ運んでいる。歩くたびに 床に血が流れていく。
「内木田 これが 本当に タイムアネステシアなら これから ワールドモディファイが発生する。時間経過と共に 私達の記憶に 夢として 情報が流れてくる筈だ。私は ひとまず 赤岩を寝かせたら 上に報告に行く。後を任せられるか?」
「はい。了解です」
赤岩の自室の扉は 本人認証システムだ。動かない赤岩の右手を 扉にかざす。
扉が開いて 入室する。赤岩らしい スポーツジムの様な部屋だ。
『そう言いえば これだけ一緒に居たのに 赤岩の部屋に入るのは 初めてだったな』
そう思った瞬間 涙が溢れてきた。
ぐっと堪えて 赤岩をベットに寝かせる。両手を胸部に組ませる。もう 随分冷たい。
「私は 直ぐに出る」そう言うと 司令官は部屋を出た。
俺は赤岩を 見つめる。
「なぁ お前何したんだよ。なんで 俺なんだよ。。赤岩。赤岩。」涙が止まらない。
しばらく 答える筈の無い赤岩に 問い掛け続ける。3人での楽しかった記憶が 呼び起こされる。
2度と無くなったのだと 実感する。余計に涙が溢れて来る。
どのくらい居ただろうか?
神尾の事も 気掛かりだ。あいつは 純粋過ぎた。この『人口減少阻止計画』の闇は深い。後髪を引かれるが 立ち上がり 食堂へと向かう。
神尾が椅子に 生気の無い顔で 座っている。机の上は 赤岩の血が 広がっている。
「神尾 大丈夫か?」俺は 駆け寄る。
神尾の目が 俺へ向く。
「あなたは だーれ? なんで 私 ここに居るの? っていうか 私は だーれ?」
「????? ふざけるのは やめてくれ。俺だって 何がなんだか!」
「うん?」
明らかに 様子がおかしい。両手を神尾の肩に置き 少し揺すって 再度目を見る。
「うん? 綺麗な顔。私 お手手 血だらけ? うふっ」神尾が言う。
!!!! 神尾の心が壊れた。記憶が壊れた。そう思った。
「ふざけるな」俺は そう叫び 力無く 膝から崩れ落ちた。身体の力が 入らない。
そんな状況の中 ワールドモディファイによる情報が 脳内に流れ込んできた。




