人口減少阻止計画
「準備完了」
私は マンションの屋上 冷たいコンクリートの上に うつ伏せで ライフルを構えた。
司令部:「ターゲットは 2時の方向から徒歩で進入」
「了解」
司令部:「入って 2分過ぎている」
「ターゲットを 確認した」
私は スコープ越しに ターゲットの胸部を見定めた。一息吐いて ライフルの引き金を引く。
スコープ越しに ターゲットの胸部から大量に血が噴いたのが 見える。
『・・・』
「あなた?」 「お父さん?」「お父さん うわー」と子供の泣き声が響く。
司令部:「死亡を確認。もう直ぐ5分になる。 回収作業急げ」
私は 急ぎ ライフルを片付けて 立ち上がった。
私を中心として球状電磁場が形成されていく。瞬間 周囲景色が暗転して 見慣れた司令室に戻って来た。
次元カプセルの扉が 左右に開く。ステップを降りると 司令官から声をかけられた。
「相変わらず いい腕だな!」 司令官は サムズアップである。
司令部:「ワールドモディファイ 特に問題ありません。被害者の生存に成功。全員無事です。」
司令官「よろしい。今日も この国の未来を救った。誰にも知られていないが 君は英雄だ。任務は終了。帰室して 構わない。」
「ありがとうございます。では 失礼致します。」
そう言うと 私は 自分の部屋へと向かって 司令室を出た。
この国は 100年前 人口が1億2000万人 世界を牽引する先進国の一つであった。
しかし 現在 全人口が3000万人を切っている。これ程の急激な人口減少はこの国だけだ というのに 少子高齢化で 70歳以上が50%を占めており 人口増加率は著しいマイナス 働く世代の減少に伴い GDPもマイナス30数%を繰り返している。
地球温暖化による海面上昇のせいで 国土も縮小している。
もう既に 国としての生産力の低下 国際的な立場 国際社会での発言力の低下 など様々な問題が発生している。
下手をすると そう遠くない未来 国の消滅すらもあり得る話である。
対応を迫られた政府は ある施策を打ち出した。『人口増加計画』である。
ところが いざ打ち出してみると 憲法・法律 倫理観から 多夫多妻の制度を認める訳にもいかない。ましてや 一夫多妻など論外。クローン製作も国際社会から反感をかう。多種多様な愛の形があり 出産を強要する事も出来ない。
結果 実質的に『人口増加計画』は頓挫してしまったのである。
そこで その2年後に 公には出来ない 密かに打ち出した第二計画。それが『人口減少阻止計画』である。